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第52話 修行の成果


 飛来してきた火球を両断すると、その後ろには氷の槍が隠れてた。


 間近に迫る氷の槍を即座に躱して斬りつける。


「あー! 斬られたー!」


 ふっふっふ、もうその戦法は通用しないぞ。


 ターニャの魔法攻撃を危なげなく対処すると


「こんにゃろめ~!」


 今度は岩塊を放ってきた。


 ん~、ぱっとみは単発の魔法攻撃に見えるんだが……



 リッカがターニャに『ビックリ戦法』なる戦い方を教えたことので、単調だったターニャの戦い方が複雑になって、今までみたいにラクに魔法攻撃を対処するのが難しくなったんだよなあ。


 このビックリ戦法、単純に魔法を連続で素早く放っているだけなのだが、困った事にこっちからだと最初に放った魔法の陰に隠れてしまって後で放った二発目の魔法が見えないんだよねえ。


 なもんで、単発で放たれた攻撃だと思って魔法を斬って油断していると、直ぐに次の魔法が目の前に現れるもんだからビックリしてしまい、二発目の魔法をもろに喰らいまくってたんだよなあ。


 まあ、そのお陰で俺は、警戒心ってやつが芽生え戦闘中は常に油断せずに戦えるようになったんだけどな。



 岩塊の陰に隠れているかもしれない二発目の魔法を警戒しながら走っていると、突然肩に衝撃を受けて転びそうになる。


 うっ、ウインドバッシュ!


 岩塊の方が二発目で初弾はウインドバッシュだったのか!


 よろけながらも体勢を立て直して飛んで来た岩塊を斬り払う。


 すると、前方で待機しているターニャが


「今のは小手調べだ! 次は本気で行くぞー!」


「おー! わかったから続けてくれー」


 とは言ってみたものの、そろそろ日が暮れ始めているので、だんだんと辺りが暗くなって来ている。


 後一回か二回くらいしか出来ないかもな。



 ビエナの街を出発してから八日を費やし、ようやく目的地であるダノハ地方の山岳地帯の山のふもとが見え始めたのだが、俺が魔法を剣で斬る稽古に手応えを感じ始めていたのと、ターニャも【魔力半減】の指輪を装備したままでの稽古を続けたがっていたので、ダノハの山岳地帯には明日の朝から行くことにし、今日はいつも通り午後は俺とターニャで稽古を行っていた。



 今度は狙いを定め難くするために、右へ左へ移動しながら走り続ける。


「む~~、ウロチョロするなーーー!」


 ターニャが魔法を放つために伸ばした両手を、俺の動きに合わせて右へ左へ動かす。


 稽古初日は【体力半減】の鎧のせいで、走り続けていると直ぐに疲れてバテてしまっていたが、最近はマイナス装備のお陰なのか体力が底上げされたらしく、走り続けてても疲れにくくなっていた。


 左右にウロチョロするのはやめて、今度は真っ直ぐターニャに向かって走っていく。


 すると、目の前の地面が盛り上がって砂の槍が突き出てきた。


 前回、突き出た槍を飛び越えようとしたら足が引っかかって思いっきり転倒したので、今回はその場に止まり砂の槍を薙ぎ払う。


 するとまた槍が突き出てきたので後ろに下がって薙ぎ払う。


 間髪入れずに次々と槍が突き出て来るので、その都度後ろに下がりながら槍を薙ぎ払っていると、突然正面から見えない壁に押されて勢いよく後ろに倒れそうになる。


 くっ、やっぱ風魔法は見えないから厄介だ……


 などと思いながら体勢を立て直そうとすると、人の背丈くらいはありそうな氷の槍がもうすぐ目の前に迫っていた。


 素早く身をひるがえして直撃を回避しつながら氷の槍をぶった斬る。



 この八日間の稽古で俺の体力が底上げされたとのと同様に、ターニャの魔力も底上げされたので、放つ魔法が稽古を始めた時よりも確実にデカくなっていた。


 しかも、リッカが色々とターニャにアドバイスをしているので、ただ魔法を放って攻撃するだけではなく、全ての属性魔法を巧みに交えて様々な攻撃を仕掛けてくるようにもなっていた。


 なので、ターニャの魔法を喰らって派手に吹っ飛ばされたり、かなり際どい攻撃とかも喰らってしまい、何度かリッカに本気の治療をしてもらったりもした。


 ただ、そのお陰で俺は強力な魔法を喰らっても痛みや衝撃でたじろぎその場にとどまるような事はなくなったし、魔法による色んな攻撃手段をそれこそ身をもって体験したお陰でそれなりに魔法攻撃に対して上手く対処が出来るようにもなっていた。



 氷の槍をぶった斬ると、すぐさまターニャに向かって走り出す。


 急に足元が冷たくなったので急いで飛び跳ねると、地面から氷の槍が突き出てきた。


 地面から伸びてくる槍を蹴って遠くに着地すると、また走り出す。


 だいぶターニャに近づいてきたが、次は何を仕掛けて来るんだ? ビックリ戦法か? 足止めからの魔法攻撃か?


「むむむむ、む~~ん!」


 ターニャが俺に向かって両手を突き出すと、地面が盛り上がり勢いよく土壁が出現した。


 おっ!? これは今までにない戦法だが……


 壁の右側と左側のどっち側から行く? 壁を飛び越えるか? いや、さすがに高くて飛び越せないか。ん? 待てよ、俺でも壊せるか? 


 よし、ちょっと試してみるか……


 走りながら対処の仕方を瞬時に考え、走る勢いそのままに思いっきり壁に飛び蹴りを喰らわせる。


 ズシンと足に衝撃を受け壁を突き抜けると、ターニャが


「ええええーーー!」


 俺を見て驚いてはいるが、左右の手には既に火球が出現していた。


 即座に剣を構えて着地すると、ターニャが両手の火球を消し去り


「壁を壊すなんてズルい!」


 怒りだした


「いや、なんか壊せそうな気がしたんで思いっきり蹴ってみた」


「む~ん」


 口を尖らせ不貞腐れるターニャに


「でも、あれだろ? 俺が壁から出てきたら狙い撃ちしようとしてたんだろ?」


「うん、右と左のどっち側から出て来るのかが分からなかったから、両手に魔法を準備してた」


「あっぶね~、やっぱ壁を壊して正解だったわ」


「む~」


 ターニャが納得いっていないようなので


「でも、さっきみたいに壁を突き破ってくる魔物もいるかもしれないんだから、ある意味良い経験になったんじゃね?」


 ターニャが目を見開き


「おお! そうだな! ふっふっふ、あたしはこの経験を活かしてまた強くなってしまう!」


 腰に手を当てニヤニヤしていたターニャだったが、急に肩を落としてションボリしたので


「ん? どうした?」


「ケビンごときにあたしの造った壁を破壊されたんだって思ったら、急に屈辱的な気分になってしまった……」


「おいー! 俺だって頑張って稽古してるんだからそれなりに強くなってるし! てか、屈辱的とかそんな言葉いつ覚えたんだ!?」


「ふっふっふ、あたしは師匠みたいな()()()()()()()()なカッコイイ大人になるべく、毎日沢山勉強してるからだ!」


 確かにターニャはリッカと毎晩寝る前に色々と勉強しているが、仮に朝昼晩の三食芋けんぴを食べてたとしても、容姿が美しく、優れた才能と高い知性を兼ね備えた人物にはなれないと思うんだが……


「なあ、ターニャ。カッコイイ大人ってので察したが、()()()()()()()()じゃなくて才色兼備だからな」


「ん? さんしょくけんぴじゃなかったっけ?」


 軽く首を傾げて目をパチパチさせてたヘビ娘が、言い間違いに気づいたのかハッとした表情をすると、顔を真っ赤にし


「あ~~~でも、ほらケビン! あたしたちって絶対強くなってるよな! にゃはははは~」


 なるほど、間違いをなかった事にして、無理やり話題を変えて来たか……


 俺は相手の話しに合わせる事が出来る良い大人だ。


 なので、これ以上言い間違いには触れず


「だな、それは俺も実感してるぞ。だから稽古してると楽しいよな」


 ターニャがホッとしたような表情を浮かべ


「うんうん! 楽しい!」


 ニコニコしながら頷くと、野営の準備を終えたリッカが


「おつかれさま~」


 と言いながらこっちに来ると


「そろそろ日が暮れるから今日の稽古は終わりにしましょ」


「はい!」


「あいよ~」


 二人一緒に返事をすると


「ターニャは指輪を装備した状態でも安定して上級魔法を放てるようになってきたわね」


「はい!」


 リッカがいつものように稽古後の締めの総括を始めた。


「でも、これからも魔力操作の修練と魔力の底上げは続けて欲しいから、引き続き指輪はつけたままで稽古は続けてね」


「はい! 分かりました!」


 ターニャが元気よく返事をすると、リッカがこっちを見て


「ケビンは危なげなく上級魔法を斬れるようになったわね」


「ああ、だが疲れると動きが雑になるから上手く斬れなくなるし、驚いたりすると焦って上手く斬れなかったりするから、まだまだだぞ?」


「ふふふ。ビックリ戦法にはだいぶやられていたもんね」


「ああ、あの戦法はホント良い稽古になるな」


「でしょでしょ」


「お陰で警戒心がかなり鍛えられた気がするぞ」


 ゴリラが嬉しそうにウンウン頷くと


「慢心しないで常に謙虚な気持ちで稽古に取り組む姿勢は大事だけど、ケビンはもっと自分に自信を持つべきよ?」


「そうなのか? ん~でもなあ……、どんな時でも剣術の動きが出来るようになれれば、もう少し自分に自信が持てるんだが……。あっ! この【体力半減】の鎧のお陰でだいぶ体力が底上げされてるから、それに関しては自信が持てるかもな」


 するとヘビ娘が


「だな! 始めの頃はすぐにヘロヘロになってたもんな!」


 横でゴリラが


「ふふふ。そうね、直ぐに息を切らしてフラフラになってたわね」


 と言い、何か思い出したのか一瞬目を見開くと


「そだ、さっきターニャの土壁を蹴り崩してたでしょ、あの時の感覚って覚えてる?」


「ん~、壁を見てたら何となく壊せそう気がしたから蹴ってみたんだが、感覚って言われても良く分からんなあ」


「そう、あの時ケビンは闘気とうきを足に這わせて壁を蹴ってたんだけど……。無意識だったみたいね?」


 ちょっと良く分からなかったのでヘビ娘に


「なあ、トウキって知ってるか?」


「ん? しらにゃ~い」


「だよなあ」


 すると、ゴリラが


「そうね、ちゃんと説明しないとダメよね。良い機会だからターニャも一緒に聞いててね」


「はい! わかりました!」


 ヘビ娘が背筋を伸ばして返事をすると


「ゴライアスの剣術で使ってる言葉で、闘う気と書いて『闘気』って言うんだけど」


 ゴリラが土魔法で長い棒を出現させると地面に『闘気』と書く。


 すると、ヘビ娘も土魔法で長い棒を出現させて


「とうき……」


 早速書き取りを始めた。


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