第51話 魔法をぶった斬る②
両手で抱えるくらい大きな火球が迫って来る。
リッカから大丈夫だと言われているが、やはり不安なので正面からではなく横に躱して斬り払う。
両断された火球が地面に落ちると消滅した。
「ケビーン! カッコイイー!!」
ターニャがピョンピョン飛び跳ねながら大声で叫ぶと、今度は氷の槍を飛ばしてきた。
まだ自信がないので、正面からではなく横に躱して剣を振る。
斬られた氷の槍が地面に刺さって消滅した。
これなら意外といけんじゃね? などと思っていると
「よ~し! ケビーン! どんどんいくぞー!」
ターニャが今度は火球を飛ばしてきた。
すると、後ろで見守ってたリッカが
「どう? 今のターニャはマイナス装備の影響で魔力が半減してるから、ちゃんと斬れるでしょ?」
「ああ! 正直不安だったが」
火球との間合いを調整し今度は正面から両断する。
火球が左右に分かれて消滅した。
「これなら問題なさそうだ」
「おお! カッコイイーー!」
またターニャが叫ぶと岩塊を放ってきた。
すると、リッカが
「そう、じゃあ私はターニャのアドバイスに行くけど大丈夫?」
飛んで来た岩塊を正面から両断。
すると、見るからに硬そうな岩の塊もちゃんと斬れたので
「おう! こっちは大丈夫だからターニャのとこに行ってくれ」
ターニャが更に火球を放ってきたので、間合いを調整していると
「じゃあ、その調子で頑張ってね。もし負傷したとしても私がしっかり治すから、ケガの事は心配しなくて良いからね」
と言い、ターニャの方に滑走して行く。
「そん時はよろしくな!」
と言い、飛来してきた火球を斬り払う。
すると、ターニャが近づくリッカに気づいて魔法を放つのを止めたので、ちょっと呼吸を整える。
ん~、既にちょっと息が上がり始めてるな……。
【体力半減】の宝玉が埋め込まれた鎧を装備してるから疲れるのが早いのか?
あるいは、魔法を斬るのに慣れてないから変に力んでたのか?
そもそも飛んでくる魔法を避けずに斬るとか普通はやらないもんなあ。
そりゃあ、疲れて息も切れるか?
などと考えていると、リッカがターニャの元に辿り着き、何か話し始めた。
しばらく呼吸を整えながら歩いていると、ターニャが火球と氷の槍を連続で放った。
リッカは積極的にターニャの放つ魔法を斬れって言ってたが、どっちか片方だけでも良いんだよな?
とりあえず、氷の槍は無視して火球だけを斬り払う。
すると、リッカが
「アイスランスもちゃんと斬りなさーい!」
え!? 両方斬らなきゃダメだったの?
「後ろに人がいたら、守れないでしょー!」
はっ? そんな厳しい状況を想定しながら剣なんか振ってねーよ!
と思っていたら、今度は岩塊が二つ連続で飛んで来た。
う~ん、とにかくゴリラは魔法を二つ同時に斬らせたいみたいだなあ。
じゃあ、言われた通りに二つとも斬ってやろうじゃないの。
駆けながら迫って来る岩塊との間合いを調整しつつ、一つ目の岩塊をすれ違いざまに斬り払い、即座に二つ目の岩塊に剣を振り下ろす。
鈍い金属音を発して剣が弾かれると、岩塊をもろに体に喰らって派手に吹っ飛ばされた。
「あああーー! ケビン! 大丈夫かーー!」
「なーにやってのーー! ちゃんと刃を立てて振らないと斬れるわけないでしょーー!」
確かに今のは自分でも分かるくらい残念な剣の振り方だったな……。
などと、地面に寝っ転がってさっきの動きを振り返っていると
「ケビーン! 大丈夫なのかーー?」
とりあえずターニャが心配しているみたいなので
「大丈夫だからドンドン続けてくれー!」
立ち上がって手を振ると
「おおー! 大丈夫だったか!」
と言い、すぐに火球と氷の槍を放ってきた。
飛来してくる火球は両断して、氷の槍を下から勢いよく斬り上げる。
槍がボキッとへし折れ消滅した。
「なにやってんのーー! 折らないで、斬りなさーーい! 剣は鈍器じゃないのよーー!」
うん、分かってる。分かってるんだが上手く剣が振れなくて、結果的にぶったたく感じになっちまった。
う~ん、最近は余裕で魔物を倒せるようになってたんで、ちょっと調子に乗ってたのかもな。
自分ではもう既に、意識せずともちゃんと剣は振れてると思ってたんだが、まさか動きながら連続して剣を振るのがこんなに難しかったとはなあ。
改めて剣術の未熟さが露呈したって感じだな。
「よっし! ターニャ! その調子でドンドン続けてくれー!」
「はーい!」
連続で放たれる二つ目の魔法がどうしても上手く斬る事が出来ず、何度か被弾しながらも頑張って斬りまくっていたが、気づけばリッカとターニャが待機している場所まで辿り着いてしまった。
「ケビン! カッコよかったぞ!」
「おっおう! ありがとな」
「何度か魔法が当たってたのに、全然大丈夫そうね?」
「ああ、被弾した時の衝撃はそれなりにあったが、鎧のお陰なのか全く痛くなかったな」
「へ~、意外ね。人って経験したことのない痛みとか衝撃を受けると、本能的に身を守るために体が硬直したりするものなのよ?」
「岩塊をもろに喰らった時の衝撃はちょっと驚いたが、『名もなき迷宮』の迷宮主にボコスカ殴られた時の衝撃に比べたら、全然だったからな」
リッカが少し考えるような素振りをすると
「じゃあ、もう少し魔法を増やしても大丈夫そうね」
「いやいや、せめて二つともちゃんと斬れるようになってからにしてくれ」
「うふふ、冗談よ」
リッカが笑顔で答えると、ターニャが口をへの字にして
「ししょう~、何かさっきっから魔力の操作が上手く出来いんですう」
「それはね、さっき渡した指輪が魔力操作を妨害してるからよ」
「えっ?」
驚き指輪を見つめるターニャにリッカが
「でもね、その状態で魔法の稽古を続けていると、今までよりも更に魔力の操作が上手くなって、魔力も底上げされるの。だから頑張ってね」
ターニャが表情をパッと明るくすると
「おー! 強くなるために頑張ります!」
やる気を漲らせるターニャを見て、リッカが頷くが、ちょっと気になったので
「なあ、今って中級程度の魔法だから俺でも斬れるんだよな? ターニャの魔力が上がって指輪をしてても上級魔法を放てるようになったら、流石に斬れなくなるんじゃないのか?」
「そんな事はないわよ。中級魔法がある程度斬れるようになれば、上級魔法も斬れるようになるから大丈夫よ」
「ん~、どう言う理屈でそうなるのかがよく分からんが、もしかしてゴライアスの剣術が特別なのか?」
「うちの剣術がって事でもないんだけど……。まあ、そこら辺の話しはまた今度ね」
「ああ、わかった」
「とりあえず、しばらくはさっきみたいな感じで二人には魔法と剣術の稽古をしてもらうから、頑張ってね」
「はーい!」
「ああ、了解した」
すると、ターニャが早速左右に行ったり来たり滑走しながら
「師匠、次はどこまで行けば良いですか?」
「う~ん、そうねえ」
顎に手をあて遠くに見える険しい山々を見ると
「日時は特に指定されてないとは言え、あまりカケさんを待たせ過ぎるのも良くないからなあ……」
ターニャが俺とリッカの周りをグルグル滑走し遊び始めると、リッカが
「今日はこのまま夕方くらいまで二人の稽古にして、明日からは午前中を移動に費やして、午後から二人の稽古の時間にしましょ」
「はい! わかりました!」
「ああ、そんな感じで良いんじゃないか? ただ、明日は俺にもウインドバッシュを使ってくれな」
「ええ、もちろんよ」
「おお! ケビンも一緒にビュンビュンか!」
「ああ、走るのはもうコリゴリだからな」
などと、話しているとリッカが氷柱にスタスタと近づき右拳を振りかぶると
「ふん!」
思いっ切り氷柱をぶん殴った。
ズシンと腹の底に響く音がして放射線状にヒビが広がると、一気に氷柱が砕け散った。
「おお! 師匠カッコイイーー!」
おいおい……。
ターニャが上級魔法を何発当ててもビクともしなかった氷柱なのに、このゴリラはぶん殴って破壊しやがった……。
どんな鍛え方をすれば素手で氷柱を破壊出来るんだ? などと、ゴリラの身体能力の高さに改めて驚いていると
「さすがに氷柱をそのままには出来ないからね」
と言い、目をキラキラさせているヘビ娘に
「じゃあ、ターニャ。とりあえず思いっきり向こうに氷結魔法を放ってみて」
「はい! むむむ~、むん!」
ターニャの放った氷の槍が遠くの地面に突き刺さると、リッカが
「じゃあ、ターニャ。あの槍まで先に行って、到着したらまたケビンに向かってドンドン魔法を当てるのよ」
「はい! わかりました! じゃあケビンまたあとでな」
と言いい、地面に刺さった氷の槍に向かってターニャが滑走して行った。




