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第41話 装備品の鑑定


まだセバスが装備品を並べてる途中だが、とりあえず目についた装備品を鑑定していく。


「手入れ不足でかなり傷んでいる武器もあるが、一度も使用されてない武器も幾つかあるな。鎧に関しては使用済みの物が多くて、盾は新品の物が多いな。ほとんどの装備品が大戦中に造られた物ばかりだが、一度も使用されていない武器の方は大戦後に作製された物が多いみたいだな」


 ローズを見ると何度か頷き、無言でテーブルに並べられた装備品に向かって顎を向けた。


 なるほど、そのまま鑑定を続けろってか。さすが執事を召し抱えているお嬢様だけあって、指示を出すときの仕草がさまになってるな。


 ちょっと見下されてるような気がして癪に障るが、ご要望通り鑑定を続けるか。


「この二つの斧は見た目は同じだが、こっちの斧の方が耐久性もあって切れ味も抜群だ。理由は素材が良いのと腕の良い鍛冶職人が作製した斧だからだ。それと、傷んでる装備品のほとんどが、人族領かドワーフ国で作製された物がほとんどで、中には獣人領や魔族領で作製された物も紛れてるな、探索者が破棄した装備品なんじゃないか? ただ、一度も使用されてない装備品の方は作製地域と作製された時期がバラバラで、俺には大陸中の武器屋から売れ残りをかき集めたのか? って感じに思えるな」


 ローズが何やら難しい表情を浮かべながら俺の話しを聞いている横で、リッカがなぜか目をキラキラさせて話しを聞いていた。

 

 セバスがレア装備品も並べていたので、とりあえず一般的な装備品の鑑定はここまでにして、今度はレア装備品の鑑定を始める。


「これは迷宮産のレア装備で、こっちは大戦中に造られたレア装備だな。そんで、この剣と盾は大戦後に造られた違法なレア装備だ」


 ローズがセバスに目配せすると


「彼の言う通り、こちらのレア装備は大戦後に作製された物だと鑑定士からは伺っております。それと、他の装備品の鑑定内容も鑑定士と一致しております」


「そう、ありがと。装備品はもう片付けて良いわ」


 セバスがローズに頭を下げ、大量に並べた装備品を片付け始める。すると、ローズが姿勢を正すと俺に体を向けて


「ケビン、あなたの鑑定能力は確かなようね。疑って悪かったわ、ごめんなさい」


 ゆっくりとローズが頭を下げた。


 確かにちょっと癪に障ってムキになっていたかもしれないが、ローズから見た俺はただの迷宮探索者だ。素行が悪くその日暮らしの生活を送る迷宮探索者の評判は世の中的にもあまりよろしくない。なので、ローズが俺の鑑定能力に対して疑いを感じるのもうなずけるので


「大丈夫だから顔を上げてくれ。武器屋で働いていた頃の俺だったら疑ったりはしなかったんだろうが、今の俺は探索者だから仕方がないと思う。だから気にしないでくれ」


 ゆっくりと顔を上げ、表情を柔らかくしたローズが


「ありがと。そう言ってもらえると助かるわ。ちなみに、ここの迷宮の装備品についての見解を聞かせてもらえる?」


 どういう意図があってローズが迷宮の調査をしているのかは分からんが、リッカからは何度か「気になる装備品があったら教えて欲しい」って言われてたな。


 リッカを見ると、申し訳なさそうな表情を浮かべてポリポリと頭をかいていた。


「ここの迷宮はそこそこ難易度が高いからなのか、魔物が所持してる装備品はそれなりに質の良い物になってたなあ。って感じたのと、何となく損傷の少ない装備品が多いような気はしたな」


「そう、たぶん損傷の少ない装備品が多いと感じたのは、前回私たちが訪れた時に取りこぼした装備品かもしれないわね。放置されていた装備品を迷宮内全ての魔物から回収したわけじゃないからね」


 なるほど、だからか。迷宮内の魔物が所持する装備品は探索者が壊れて破棄した物ばかりだって話しだし、実際に今まで探索していた『名もなき迷宮』の魔物は破損の激しい装備品を所持していたもんな。てっきり難易度が高い迷宮だから装備品の質が上がってたのかと思ってたが、どうやらそうじゃなかったらしい。などと思っているとローズが


「それと、迷宮主以外でレア装備を所持してた魔物はいなかった?」


「約二週間ほどここの迷宮を探索をしているが、主以外でレア装備を所持した魔物には遭遇しなかったな」


「そう、なら迷宮の難易度に変化は見られないから問題はなさそうね」


 と言い、セバスを見ると


「予定通り魔物の間引きを許可しましょう」


「かしこまりました。組合にはそのように伝えておきます」


 そう言えば、ジョリーとブラットがそろそろ迷宮内の魔物を間引く時期だって話しをしてたな。


「素朴な疑問なんだが、魔物を間引くのに許可とかって必要なのか?」


「今までは許可とかって特に必要なかったんだけど、過去に装備品の放置に気づかないまま間引きに向かった街の兵士が対応出来なくて、魔物が迷宮から溢れ出てしまった事があるのよ」


 えっ! 魔物が溢れるって結構大ごとなんじゃないのか? ん? いや、ちょっとまてよ……。


「今までそんな話しを聞いたことがないんだが、それっていつ頃の話しなんだ?」


「王都から遠く離れた地域に存在している迷宮の話しだし、皆が不安にならないように情報は伏せていたからね。それで知らなかったんじゃないかしら? ちなみに、装備品が放置され始めたのは四、五年くらい前からよ」


 ん~、何の目的で装備品を放置してるのかは分からんがスゲー迷惑な話しだなあ。ん? 四、五年くらい前てけっこう最近の出来事だな。


「俺の住んでるツギア地方ではそんな話しは聞いたことがなかったぞ?」


「たぶんだけど、ツギア地方って迷宮が存在してない地域じゃない、だから迷宮に関係する情報が入りにくいんじゃないのかしら? うちらが必死になって魔物が溢れた情報を伏せてても、必ずって言っていいほど探索者を通して情報は洩れ出してたからね。でも、ケビンも探索者なんだから、どこかで魔物が溢れた迷宮の話しって聞いたことがあったんじゃないの?」


「いや、俺は迷宮を探索し始めてまだ三ヶ月くらいしか経ってないし、探索したことのある迷宮はヌーブ地方の『名もなき迷宮』とここの『骸骨迷宮』だけだからな」


 ローズが少し驚いた表情を浮かべると、俺の身なりを見て


「あ~、そう言われてみると、ケビンってベテラン探索者って感じではないかもね~」


「ローズがどう思っていたかは知らないが、俺は見た目通りの駆け出しの迷宮探索だぞ」


 ローズが眉を上げ笑みを浮かべると静かに紅茶を飲み始めた。


 なるほど、つまりローズは村や街の安全を守るために領内の迷宮に装備品が放置されていないか見回り調査を行っていたってことか……。


 紅茶を飲みながらリッカを見ると、目を合わせようとせずによそ見をした。


 グリーンキャニオンには、リッカから見聞を広めるついでに行きたいと言われ来たんだが、ここは人族領の最南端に位置するし、次の目的地であるウエストレイクビレッジは人族領の最西端で、どちらも王都から遠く離れた地域に存在してるな……。


 そんで、俺は知らなかったが長く迷宮探索している者だったら、それらの地域の迷宮で過去に装備品が放置されてたって話しくらいは知ってると……。


 よそ見をしていたリッカが今度は俯き始めた。


 あ~、こりゃあ、まんまとリッカにしてやられたな。本当の目的を話さずに俺を同行させてたんで、リッカとしては多少なりとも後ろめたい気持ちがあるんだろうな。


「なあ、リッカ」


「はい」


 俯いたまま返事をするゴリラが心なしか小さく見える。そんなゴリラを見たローズが首を傾げてる。


「怒ってないから聞いてくれ、本当のことを伏せたままリッカは俺をグリーンキャニオンに同行させてたけど、結果としてここの迷宮には問題がないってことが分かってローズの負担は軽減されたんだよな?」


「うん」


 ゴリラが俯いたまま返事をした。


 そして、話についてこれず目をパチパチさせるローズに


「俺の鑑定能力が役に立ったことでローズはここの迷宮の調査はせずに、他の地域の調査に行けるようになったってことだよな?」


「ええ、そうよ。おかげさまで、明日からは他の地域の調査に取り掛かれるわ」


 いまだ俯き小さくなっているゴリラに


「リッカの家の『力は人々の安寧あんねいの為に』みたいな壮大な話しじゃないが、俺の鑑定能力が役に立ってローズの負担が軽減されたことで、他の地域の調査にすぐに行けるようになった。つまり、そこに住む人達の危険を未然に防ぐ事にも繋がったってわけだ」


 ゴリラは俯いたままだったがローズは笑顔で頷いた。


「俺は今まで装備品の良し悪しや特性とかを知るのが楽しくて鑑定をしてたんだが、今回みたいに間接的だとしても、俺の能力が色んな人達の役に立てたってことに充実感すら覚えたぞ」


 俯いたままのゴリラがチラチラと上目遣いで俺を見ている。


「だから、リッカが本当の事を話さなかったことに対して俺は怒ってないから気にしないでくれ。それに、リッカからは色々と詮索して欲しくないって言われてたしな」


「うん。ごめんね」


 ゴリラが上目遣いで謝った。


 たぶん、ゴリラじゃなかったらそれなりに可愛く見えたのかもしれないな……。


 などと思っていると、俺たちのやり取りを見ていたローズが


「意外とケビンってしっかりしてたのね。手紙だとそんなふうには感じなかったな~」


「ん? 手紙って何のことだ?」


 ローズが少し驚きながら


「私に送った手紙よ。あれもっと書き方を考えないと、ケビンを知らない人が読んだら勘違いするわよ」


「いや、ローズに手紙なんて送ってないぞ?」


 何だかゴリラが急にソワソワし始めた。すると、ローズがセバスに目配せすると


「こちらでございます」


 セバスが手紙を差し出してきたので、ローズに


「読んでも良いのか?」


「ええ、どうぞ」


 ゴリラが今度はアワアワしながら何か言おうとしているが、気にせず手紙を受け取り読み始める。


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