第40話 お茶休憩②
ターニャがケーキを食べ終え「ごちそうさまでした!」と言うと、急にウトウトし始めた。
しっかりと覚えていないが、ターニャはサンドウィッチを三個くらい食べてから、ケーキを四個食べたんじゃなかったかな? そりゃあ、満腹になって眠くもなるわなあ。などと思っていると、リッカが眠たそうにしているターニャに気づき
「ねえ、ターニャ。無理しなくて良いから少し横になる?」
ターニャが一瞬体をビクッとさせて目を見開くと
「だいじょうぶです!」
と言って、グラスに入った紅茶を一口飲むと目をパチパチし始めた。
しばらくの間パチパチと瞬きを繰り返していたが、徐々に瞬きの速度が遅くなりだし、だんだんと目を閉じている時間が長くなってくると、またウトウトし始めた。
こりゃあ、リッカの言う通り少し寝かした方が良さそうだなあ。でも、床の上で横になれるような柔らかい敷物なんて持ってきてないんだよなあ。
どうするか考えていると、食べ終わった皿を下げていたセバスにリッカが目配せをした。
すると、セバスが頷き少し離れた場所に移動して、寝心地の良さそうなベッドを用意し始めた。
お茶休憩で使っている椅子やテーブルと同じように、【収納】の宝玉が埋め込まれた指輪かブレスレットのどちらかのレア装備から取り出したんだろうが、まさかベッドまで収納していたとは……。
手際よくベッドメイクを終わらせたセバスがリッカに頭を下げる。それを見てリッカがターニャの肩をゆすり
「ターニャ。無理しなくて良いから、ベッドで少し休んでなさい」
目をこすりながらベッドを見たターニャが
「ししょう~、ありがとうございます。ケビ~ン、あたしはチョット寝てくるぞ~」
ターニャがセバスに手を引かれベッドに横になると、すぐに寝息を立て始めた。
セバスがターニャに布団をそっとかけると途中だったテーブルの片付けを始める。
ローズがターニャが眠るベッドを見ながら
「ねえ、リッカ。本当にターニャを引き取るつもりなの?」
「そのつもりなんだけど、ターニャの村に生存者はいなかったの?」
「ターニャ以外に逃げ延びた人がいたって報告は上がってきてないわ」
リッカがセバスに目配せすると、皆のティーカップを下げていたセバスが頷いた。
「出来ることならターニャには村の人達と一緒に生活してもらいたかったけど、生存者がいないなら、やっぱりターニャはうちで引き取ることにするわ。それに、ターニャの見た目はローズの家では目立ちすぎるでしょ」
「確かに、うちの家だと私やセバスに対していまだに種族的な偏見を抱く人は多いわ。だけど、うちらが保護した魔獣族の村で生活するって選択肢もあるのよ?」
「そうなんだけど、復讐のために強くなろうとしてる今のターニャと別れたら、将来的に良い影響を与えないって判断したの。だから復讐とは違う動機で強くなろうってターニャが思えるようになるまでは、ずっと寄り添っていくつもりよ」
「そう、ならターニャのことはリッカに任せる」
なんとなくそんな気はしていたが、やはりターニャの村には生存者はいなかったか。その事をターニャに伝えなきゃいけないと思うとツライな。どのタイミングで伝えるかは後でリッカと相談しないとだな。
それと、二人の会話の中で色々と気になることがあったが、それも後でリッカに聞いてみよう。
セバスが新たに淹れた紅茶をリッカ、ローズ、俺の順に注ぎ終え後ろに下がる。すると、ローズが
「ここからリッカの家まで移動するのに必要な魔石は用意できるけど、久しぶりだから今晩うちに泊まってく? それともすぐに家に帰るの?」
「え? ウエストレイクビレッジの迷宮に行くつもりだからまだ家には帰らないよ?」
「なんで人族領の最西端に行くのよ? そもそも、ここには家に帰るための魔石集めに来てたんじゃないの?」
「魔石集めはしてるけど、先月もらったローズの手紙に色々と立て込んでて予定していたグリーンキャニオンの迷宮調査が進んでないって書いてたじゃない、だからここには調査しに来たのよ。それと、ここ以外にどこの迷宮をローズが調査する予定だったのか覚えてなかったから、パラスに連絡したらウエストレイクビレッジも調査対象だって教えてくれたの」
「え? うそでしょ! あのおっかないメイドが教えてくれたの? あの人だったら絶対に、寄り道なんてしないですぐに帰って来なさい!! って感じですっごく怒ってそうなイメージなんだけど? 本当に大丈夫なの?」
「ん~。厳しい人だからローズには怖い人って感じちゃったのかな~。でも、とても優しくて尊敬できる人よ。でね、手紙に『良い機会だからすぐに帰らないで色んな場所に行って見聞を広めたい』って書いたら、『家のことは心配しなくて良いから新たな知識を得たり、色んな経験を積んで来なさい』って了承してくれたの」
なるほど、パラスって人はリッカが前に話してた、教育熱心で躾が厳しいラミアのことだな。ただ、ローズの驚き具合からして相当おっかない人みたいだな……。いや、それそりも、迷宮調査って何の話しだ?
ローズが眉を上げながら
「へえ、そうなんだ~。パラスがねえ、何か意外だな~」
と言い、紅茶を飲むとリッカがティーカップを持ち
「私もすぐに帰って来いって言われると思ってたから、正直ちょっと驚いた」
と言って、紅茶を飲むとローズが
「ちなみに、リッカが急に家からいなくなったって話しは公にはされてなくて、一般的にはお爺様みたいに病で床に臥せてるって事にしたみたいよ」
リッカが静かにティーカップを置くと
「そっかあ、だからパラスが家のことは心配しなくて良いって言ってくれたのね」
「そうかもね~。あっ、それと、ウエストレイクビレッジの調査は既に終わってるよ」
「えっ? 終わってるの!」
ローズが一度頷き
「先週行ってきたんだけど、今回も大量の装備品が放置されてたから、魔物の装備が良くなって迷宮の難易度が上がってたわ。だから、いつも通り放置された装備品は回収して魔物を間引きしつつ装備してた武器や防具も回収してきたよ」
「そうだったんだ、おつかれさま。ちなみに、ここの迷宮では装備品の放置はされてなかったし、魔物の装備品に特別な変化も見られなかったわ」
「えー! わざわざ武器屋で装備品の鑑定をしてくれたの! ありがとね」
リッカが首を左右に振り
「ん~ん、違うの。鑑定はケビンにしてもらってたのよ」
ローズが俺を見ると
「えっ? あんた鑑定が出来るの?」
「今は迷宮探索をしてるが、元々武器屋で働いてたからな」
ローズが何やら疑いの目で俺を見ている。なので、ローズが着ている【清潔】【快適】【修復】【伸縮】の宝玉が埋め込まれているドレスを鑑定する。
「汚れても綺麗になるし多少の破れも勝手に修繕されるそのドレスは、洗濯いらずで手入れも不要な良いドレスだな。それと、体型に合わせて寸法は変化するし常に過ごしやすい気温に調整されて快適だろうから着心地は抜群だろうな」
ローズが驚きの表情を浮かべながら
「へ~、ちゃんと鑑定は出来るみたいね。なら、ウエストレイクビレッジで回収した装備品を見てもらえるかしら?」
セバスが【収納】のレア装備からテーブルを取り出すと装備品を並べ始めた。




