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第33話 装備を新調する①


 ターニャがリッカから文字の読み書きだったり一般常識やマナーを教わっていた五日間、俺はターニャから譲ってもらった骸骨迷宮のレア装備の一覧をずっと作成していた。


 出来たばかりのレア装備の一覧にリッカが目を通しながら


「多いとは思っていたけど……。こうして一覧にすると改めて数の多さに驚かされるわね」


「だな。ざっくりと装備品を大きく四つの種類で分類してまとめたんだが、武器は三十点で防具は二十着。盾は七枚でアクセサリーは十個だった。全部で合計六十七品あったぞ」


「凄い量ね……。確かここの迷宮主って日に一度一体だけで出現するのよね?」


「あぁ、あと倒すと一日経過しないと出現しないとも迷宮掲示板には書いてあったからターニャは六十七回迷宮主を倒してたってことになるな」


 ターニャを見ると自慢げな表情を浮かべ


「始めは苦戦したけど何回か挑戦するうちに部屋の隅で隠れながら魔法を当ててたら倒せた!」


 気配を消す事に長けた種族であるラミアだからこそのせる業なんだろうな。


「それと、ボスの魔石は美味しかった!」


 ラミアの特殊能力である吸血は噛みついて相手の血を吸っているのではなく、実は生命力や魔力を吸収し生きる為に必要な養分に変えているって話しはリッカから既に聞いていた。そして、魔物の魔石に蓄えられている魔力も生きる為の養分に変える事が可能な種族であるとも聞いている。


 だが、魔石が美味しいとはどういう事なんだ? リッカに目配せすると


「質の良い魔石は美味しいってうちのメイドが言ってたわ。魔力の含有量の高い魔石は強い魔物が生成してるでしょ。だから、弱い魔物よりも強い魔物の魔石の方が美味しいんですって。それと、魔物の種類によっては魔石が酸っぱかったり甘かったりもるんですって」


 魔石によって味が違うとは驚きだな……


「なぁターニャ。ちなみに、迷宮主の魔石はどんな味がしたんだ?」


「焼いた肉の味がした!」


「おうっ。そっそっか、それは良かったな……」


「うん! 動物のボスは肉だったけど他のボスは野菜だったから倒してもあまり嬉しくなかったなぁ」


「おうっ。だが野菜もちゃんと食べないとダメだぞ」


「ちょっとケビン。勘違いしないで、今のは魔石の味の話しよ。それにターニャはしっかり野菜も食べてるわ」


「あたしは野菜もちゃんと食べてるぞ!」


 そうだった、ターニャはこの宿の店主のブラットが丹精込めて育てた自慢の野菜を食べまくっていた。そして、そんなモリモリ食べるターニャを見てジョリーが喜んで頼んでもいないのにどんどん追加の野菜を持って来ていたな。


 などと食事の時の事を思い出しているとリッカが床に並べられたレア装備を見ながら


「ねえ、何か珍しい効果のある宝玉が埋め込まれたレア装備ってあったの?」


「骸骨迷宮はあまり難易度の高くない迷宮だから珍しいレア装備は見当たらなかった。だが、こいつはターニャにとって良い装備だと思うぞ」


 緑色の丸い宝玉が埋め込まれたブレスレットを見てリッカが首を傾げると


「そのブレスレットにはどんな効果があるの?」


「身体能力が上がるといった効果はないが戸外や室内の気温を装備者にとって快適な温度に調整する宝玉だから、俺達のように体温の調節が上手く出来ないラミアのターニャには良い装備だろ?」


「もしかしてそれって私のワンピースに埋め込まれた【快適】の宝玉と同じモノなの?」


「同じではあるが効果的にはリッカの宝玉の方が上だな。ただ、このブレスレットに埋め込まれた【快適】の宝玉もそれなりに効果は期待出来る。だからターニャ、今つけてるブレスレットとこいつを交換しないか?」


「えっ? これと交換したいの?」


 今でもターニャの右手首には魔法の扱いに長けているはずのリッカのサーチにも反応を示さない程の高い効果を有した【気配遮断】のブレスレットが装備されている。


 なので、もしターニャとはぐれてしまうような不測の事態が発生した場合に探し出せないのは不味い。それに、リッカからはターニャのブレスレットを出来れば外させたいと相談されていたので


「あぁ、こいつとそいつを交換してくれ。ちなみにそのブレスレットって何か思い入れのある大切なモノなのか?」


「特に何もない! ボスを倒した時の戦利品! ただ、ちょっとピンク色のこの宝石がカワイイかなって思ったから着けてるだけだよ」


「そっか、それな宝石じゃなくて宝玉っていうんだがまあそれは良いとして。こっちの緑色の宝玉が埋め込まれたブレスレットじゃダメか? ちなみにリッカのワンピースにもこの宝玉が着いてるんだぞ」


「えっ! 師匠と同じなの! じゃあそれと交換する!」


 ふっ、この五日間で難しい言葉を沢山覚え始めたターニャだがまだまだ中身はお子様だな。すんなりと交換する事が出来て助かった。


「じゃあ、早速こっちのブレスレットを装備してみろ」


「うん、分かった!」


 ターニャが音もたてずにスルスルと近づいて来る。


 移動する時に物音が全くしないのは下半身が蛇だからなのか? 


 ここ最近、音もなく背後から近づくターニャに抱き着かれては毎回驚かされている。俺の『ビクッ!』と驚く姿が面白いらしくターニャは毎回腹を抱えて目に涙を浮かべながらゲラゲラと笑っていた。


 いつか音もなく近づくターニャを察知して逆に驚かせたいもんだ。などと考えていると、ターニャが【気配遮断】の宝玉が埋め込まれたブレスレットを手渡して来たので【快適】の宝玉が埋め込まれたブレスレットをターニャに装備させてやる。


「あれ? 寒くなくなった?」


「はっ? もしかしてずっと寒かったのか?」


「うん、修行してる時は少し暑いんだけど、勉強してる時はいつも寒かった」


「おいおい、そういうことは早く言え。風邪ひいたら困るだろ」


 すると、ターニャが肩の露出したノースリーブのワンピースの生地を引っ張りながら


「だってこの服は師匠が直してくれたし師匠の服と似てるからお揃いみたいでカッコイイんだもん!」


 迷宮でターニャを保護した時に着用していた服は肩口の生地は引き千切られたかのように破れ、背中から腹部にかけては刃物で斬れてたように大きく裂けていた。なので、迷宮から出て直ぐにターニャには店で売っていた長袖のシャツを着せていたのだが、リッカがその日のうちにボロボロだったターニャの服をノースリーブのワンピースに仕立ててからはずっとそれをターニャは着用していた。


 なるほど、師匠が直してくれた服だし憧れの師匠と同じ様な格好なので尚更ノースリーブのワンピースに愛着が湧いていたのか。


 何気にカワイイやっちゃなぁ。などと思っているとリッカが


「ねえ、ターニャ。交換したブレスレットを装備していればもう寒いと感じる事はなくなるけど、私は日焼け防止の為にも長袖のシャツを着る事をお勧めするわ。それに、長袖のシャツの上から今着てるノースリーブのワンピースを重ね着してもカワイイと思うわよ」


 確かに【快適】の宝玉の効果によってターニャが風邪をひくような心配はなくなりはしたが日焼けに関してはノーガードだ。なので、リッカの指摘は的を得ているように思える。だが、全身毛だらけのゴリラが日焼け防止について語っても何だか説得力に欠けるような気がするのは俺だけだろうか……。などと思っていると


「はい! わかりました!」


 ターニャが元気よく返事をした。全身毛だらけで日焼けによる心配などないように思えるゴリラからのアドバイスだったがターニャは素直に聞き入れたようだった。


 すると、ターニャが目の前に出現させた空間魔法のポケットに手を突っ込んで何やら唸り始めた。


「むむむ~ん。シャツをどこにしまったっけかなぁ……」


 父親が魔族だからなのかターニャもリッカと同じで空間魔法を使って色んな物を収納して持ち歩いているので長袖のシャツもポケットにしまっているのだろう。ちなみに、俺がターニャから譲り受けたレア装備も全てポケットに収納しながら迷宮内で生活していたんだそうだ。


「あっ! ケビン! これ良くない? 一個あげようっか?」


 ターニャが勢い良くポケットから手を抜くと異様に丸い石を俺に見せてきた


「……それは何か特別な石なのか?」


「すっごく丸いから持って帰ってきただけだよ?」


「そっか、ありがとな。でも、いらないからしまって良いぞ」


「えー! いらないの? 丸くてカワイイのになぁ……」


 少し残念そうな表情を浮かべ丸っこい石を空間魔法のポケットにしまうターニャ。すると直ぐに目を見開き


「あっ! じゃあ、これは?」


 今度は蝉の幼虫の抜け殻を俺に見せてきた


「いらん。しまってくれて大丈夫だ」


「えー! いらないの? 透き通っててカッコイイのになぁ……。む~ん、シャツはどこだぁ」


 抜け殻を壊さぬようにそっとポケットにしまい長袖のシャツを探し始めるターニャ。


 思い返せば俺も子供の頃は異様に丸い石だったり他とは違う珍しい色や形の石を見つけては集めていた時期もあったなぁ。それと、蝉の幼虫の抜け殻も確かに一時期集めてたりもしたな。そういえば、何故か蛇の抜け殻を見つけたヤツはみんなから称賛されていたな。


 なんで子供の頃ってどうでも良いような物を探して見つけて来てはドキドキワクワクしていられたんだろうなぁ。などと幼少期の頃の思い出にひたっていると


「あっ! ケビン! これ良くない? あげようっか?」


 白くて半透明で薄い紙のような細長い物体をヒラヒラと動かすターニャ。子供の頃に見た蛇の抜け殻に似ているが、蛇にしてはやけにサイズがデカい。


「……それは何なんだ?」


「あたしの古い皮だよ」


 つまりターニャの下半身の抜け殻だ。


「いらんっ! 何でそんな物を大事に取ってるんだ?」


 ターニャが腹部に自身の抜け殻を巻きつけながら


「う~ん。念のため?」


 リッカを見ると口をへの字にして渋い顔を浮かべながら


「うちのメイドも抜け殻を大事にクローゼットにしまっていたわ。それをたまたま見つけた時は流石に私も驚かされたわよ」


「つまり、抜け殻を取っておくのって種族的な事が要因だったりもするのか?」


「そうみたいね。子供の頃の抜け殻は加工して御守りにしたりもするって言ってたし、成人してからの抜け殻には多少魔力が残ってるから加工して防具にしたりもするって言ってたわよ」


 革の鎧や盾のようにラミアの皮を加工して鎧やローブを作ったら面白いかもだな。それに、魔力が残っているのなら魔法防御の高い防具が作れそうだ。もし機会があったらリッカのメイドが保管している皮を見せてもらいたいもんだ。


 とりあえず、お腹に抜け殻を巻いてニコニコしているターニャに


「皮はそのうち貰うかもしれんが今は長袖のシャツを早く見つけろ」


「む~ん。身体に巻くと温かいのになぁ。いらないのかぁ……」


 ブツブツと言いながらもポケットに抜け殻をしまいシャツを探し始めるターニャだった。


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