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第 1話 迷宮を探索

 拝啓 


 父さん 母さん 元気にしてますか。


 突然ですが自分の店を持ちたいので、迷宮を探索しながら店で売るための装備品を収集して来ます。 


 なので、しばらく家には帰りません。 



~追伸~


 今はヌーブ地方の迷宮を探索している最中です。



§ § § 


 ゴブリンが奇声を上げて棍棒で殴り掛かってくるのを後ろに下がって斬り払う。


 ゴブリンが腹から血を流しながらその場にうずくまると、その後ろから大ネズミが飛び掛かってきた。


 一般的なネズミは手に乗るくらいの大きさだが、迷宮に出没するこの大ネズミは大人の腰くらいの高さにまで成長する。なので図体がやたらデカい。にもかかわらず、動きは機敏なのでなかなか厄介な魔物だったりもする。


 大ネズミを横に躱して体当たりを回避すると、大ネズミが方向転換してまた飛び掛かってきた。


 今度は躱さず剣で受け止め力いっぱい斬り下ろす。


 胴体を斬り裂かれた大ネズミが血しぶきをまき散らしながら床に叩きつけられる。


 すぐさま、ショートソードを持ったゴブリンが襲い掛かってきた。


 ゴブリンは背丈が子供くらいで武器を力任せに振り回すだけなので、複数体に囲まれなければ倒しやすい魔物だ。


 剣の切っ先をゴブリンに向けて一歩踏み込む。


 勢いよく近づいてきたゴブリンの胸に剣が突き刺さった。


 ゴブリンが刺さった剣を引き抜こうとするがさらに剣を突き刺す。


 ゴブリンが口から血を垂らしながら必死になって剣を引き抜こうとする。


 そうはさせまいと、体重を乗せて一気に剣を押し込む。すると、ゴブリンが目を見開き悲鳴をあげる。


 肉を裂き骨を断つ感触が剣から伝わると、剣がゴブリンの背中を突き抜けた。



 『魔物を倒すと強くなれる』そんな事は誰もがみんな知っている。


 ただ、普通に生活していれば魔物と戦うことはないし戦おうだなんて思わない。


 何故なら兵士や迷宮探索者が魔物を退治してくれるからだ。


 今は、昔みたいに種族間での戦争や領土を拡げるための侵略行為、あるいは地位や権力を掌握するための覇権争いといった、物騒なことに躍起になっていた時代ではなく、色んな種族が同じ村や街で共に生活し、違う種族同士でも結婚ができる世の中だ。


 それに、国の内外問わず多少のいざこざが勃発したとしても、武力行使などは行わず、話し合いで解決しているので、大きな戦争が起きることもなく、それなりに社会秩序が保たれた平和な時代が永く続いていたりもする。


 なので、争いごとのない平和な時代に育った者達は、昔の物騒だった時代の人達と違って、強さを求めていないので戦いとは縁の無い生活を送っている。


 だが、そんな戦いとは無縁な生活を送っていた者達でも魔物と戦えば手っ取り早く強くなれる。


 ただし、自分よりも強い魔物を倒した場合に限るので常に命懸けの戦いが必要となる。



 今から三ヶ月前、俺は初めて迷宮を探索してみた。

 常日頃から魔物と戦っている兵士や迷宮探索者からは雑魚だと言われているゴブリンと大ネズミに追い掛け回されながらも、なんとかゴブリンを二体、大ネズミを一体倒して初日の探索は終了した。


 二日目の朝。目が覚めると物凄く体が軽くて力がみなぎっていた。

 実際に魔物と戦ってみると身体能力が上がっていて、午前中には五体も魔物を倒すことが出来た。そして、魔物と戦いながら、どうすれば効率よく魔物を倒す事が出来るのか、自分なりに色々と試しながら剣を振っていると、魔物に致命傷を与えた時の剣から伝わる感触で、何となく剣の使い方が分かるようになっていった。


 三日目の朝も目覚めると体は軽く力がみなぎっていた。

 ゴブリンとの戦いを繰り返していくうちに、ナイフや剣、あるいは棍棒を使った攻撃で、俺の体のどの部分を狙っているのかが予測出来るようになってきたので、だいぶラクに戦闘をこなせるようになっていた。


 四日目の朝も目覚めると体は軽く力がみなぎっていた。

 ゴブリンとも戦いはするが、大ネズミとの戦闘を多めにこなしていこうと思い始めた。なぜなら、獣は人とは全く違う動きをするので、攻撃の予測がしにくく何度も危ない思いをしたからだ。


 そして、単体で行動している大ネズミを狙って戦闘を繰り返すこと三日。何とか大ネズミもゴブリンと同じように、ある程度は攻撃を予測出来るようになっていった。


 さらに、迷宮探索を始めて二週間が経過する頃には、二、三体で行動している魔物でも上手く対処が出来るようになり「意外と俺でも迷宮探索って出来ちゃうのかも?」って思えるくらい魔物との戦闘が余裕になっていた。



 ちなみに、魔物を倒すと強くなる事に関しは色々と諸説がある。


 戦闘で身体を動かし肉体を酷使ししたことで、体力や筋力が強化されるから。あるいは、戦闘を繰り返す事で魔物がどんな攻撃を仕掛けようとしているのかを予測出来るようになり、無駄に動き回る事が無くなるので、疲れにくくなるから。


 要は経験の積み重ねによって戦闘をラクにこなせるようになり、肉体的にも精神的にも疲れにくくなるからだ。って言われてたりもする。


 他には、全ての生き物には生命力なるものが存在していて、事故や病気、あるいは寿命によって生き物の生命活動が停止すると、その生命力なるものは肉体から離れて自然界に溶け込んでゆく。


 ただし、戦闘などによる特殊な状況で生命活動が停止した場合だと、生命力は自然界には溶け込まず、戦闘を行っていた者達に吸収される。

 

 例えば、自分よりも体力や筋力が勝っていた生き物を倒した場合は、体力と筋力が増加する。つまり、倒した生き物と自分を比較して劣っている能力があると、倒した生き物の生命力が自分の劣っていた能力を補填するので、さらに強くなるんだそうだ。


 他にも色々と諸説はあるが、俺自身が魔物と戦って強くなっているので、強くなる理由が何なのかだなんて、今となってはどうでも良い事だったりもする。


 

 迷宮探索を始めてそろそろ三ヶ月が経過するが、最下層に出没する魔物とも危なげなく戦えるようになり、改めて自分が強くなった事を実感する。


 なので、今日俺は『迷宮主(めいきゅうぬし)』に挑んでみるつもりだ。


 なのに、なるべく戦闘を避け、体力を温存した状態で移動したいのに、チョコチョコ魔物と遭遇してしまい、なかなか自分の思い通りに物事は進んでくれないもだなあ。って事も改めて実感している。

 


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