主人公の決意
俺の名前は真斗。瀬臼真斗だ。
二次元に嫁を作り、二次元に命を掛ける
誇り高きヲタクという存在だ。
だが、決してクラスでの溢れ者とか、陰キャとかいう訳でも無い。
どっちかというと陽キャに分類されるのだろう。
それは何故か。
答えは単純明快。
顔だ。俺の顔だ。
俺は中学時代、ヲタクというだけで疎まれていた人を見て考えた。
ヲタクが完璧な奴なら、そいつがカーストの上のほうにいたら、肩身の狭い思いをするヲタクが減るんじゃ無いかと。
そこからは苦労の日々だった。
まずはファッション。これは幸いにも姉がそっち方面で活躍する人だったので簡単に解決した。見た目の整え方も教えてもらった。
次に勉強。頭はそれほど悪かった訳では無いので、日々の復習さえ欠かさなければテストでも満足のいく点数を取れるようになっていた。
そして運動。これは昔から兄の影響で武道の類に関わってきていたからか、基礎体力もあり、やれば大体できた。水泳以外は。
それ以外にも色々やった。
それが悪かったのだろうか。
当初の、カーストの上のほうに行くという目標はいつの間にか塗り替えられ、ただただ人気者の陽キャ。という立ち位置になってしまった。
これは自意識過剰という訳でも自信過剰という訳でも無い。周りが俺にそう思わせるを得ない状況を作り出した所為でもある。
告白も沢山された。見知らぬ女子に。
もちろん全部断った。
「俺には嫁がいる。(次元が)一つ下の子が。」と言って。
俺は二次元こそ全てなんだ。
リアルでイチャコラする相手など望んでいない。
とまあ、長々と一人自分語りにふけっていた訳だが、俺はだいたいこういう奴だ。
イケメン、陽キャ、人気者のヲタク。
最後のがなければ世間一般的には完全な勝者だったのだろう。
だがアニメに漫画にゲームは俺のアイデンティティであり日本の宝だ。譲れん。
けど、敵を作るまいと人当たりも良くしたし、相手が誰であれ丁寧な対応を忘れた事はなかった。
そう、周りに自分の趣味を打ち明けた時に距離を取られないように。
なんて考えながら手に取った本を見る。
「『主人公の親友ポジションの俺がモテるわけないだろ!』……か。」
学校の帰り道。いつもの書店に新刊のチェックをしに来る。
狙い通りあった。最近ハマっている親友ポジションものだ。
ハマっているというのも、これには俺の憧れ的なものが絡んでくるわけだが。
俺の憧れ。それは、
『主人公の親友ポジションのちょっと冴えない感じのモブのラブコメを応援する』ことだ。
長い。まず長い。
要は、この類の作品のイケメンキャラと同じことをしてみたい、という思いからなるものだ。
幸いにも、自分の今の立ち位置はそのイケメンキャラとだいたい一緒。(俺主観)
親友もいる。付き合いこそ長くはないが関係性は一番良いと思っている。
女子からは"瀬臼狙い殺し"とか呼ばれているらしいが俺関連で何をしたんだろうか。
ま、まぁ、話を戻して。
明日あたり彼奴の事を狙っていそうな女子がいないか探ってみるとするか。
これは、イケメンキャラとして親友の恋を応援したい男の、全力で空回りする物語。