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異世界食事処『なごみ』  作者: 三条送
2/15

黒猫

 今回の戦場のメインは市街地。政府側の傭兵として前線で銃撃戦を繰り返していた。カルロスの言う第4地区とは市街地の中でも民間人が多く住んでいるような地区であった。そこでの戦闘というのは遮蔽物も多く、敵と民間人の区別が付きにくい。一瞬の判断で敵味方の判別をしなくてはならないし、建物が倒壊すれば被害が尋常ではなくなる。


 何よりそこを占拠されてしまうと、今後の戦況すらもヤバくなる事は想像できた。

 急いで第4地区に向かい、銃をぶっ放す。軽快な発砲音を響かせ戦闘に突入する。

「カルロス。政府の奴らは介入してくるのか?」


 無線を聞いているカルロスに尋ねると、彼は首を横に振った。

「アイツらはこの戦いに関与はしてこない。誤射で市民を傷つけたら一大事だからな。都合の悪いことは俺たちに押し付けたいのさ」

 相場よりも割と高い金額の報酬を、前払いで払った時点で怪しくは思っていたが、理由はしっかりとあったらしい。


「寝返ってやろうかな」

「どっちつかずは無駄に敵を作るぜ?」

 そんな会話をしながら敵を殲滅し続ける。戦闘自体は1時間もしないうちに終了し、無事に第4地区は守られた。

「今日は終わりにしてビールでも飲もうぜ」

 カルロスは仕事終わりの酒を楽しみの1つにしているらしく、ウキウキとしていた。

 街にある料理店に入ると、たいして活気のある店でもないらしく数人の男が大人しく酒を飲んでいた。


「酒はどこの世界でも美味いもんだ」

 カルロスはビール瓶を一気に煽り中身を空にする。

「稼いだ金を酒に費やし過ぎなんじゃないか?」

 恭平もビールを飲んではいるが、軽く喉を潤す程度のペースだった。酒も入ると自分たちの今後について話す事も増える。


「今は若いからどうにかなってるが、ある程度になったら引退だよな」

 恭平が3本目のビールを空にしてつぶやく。すると、彼の足に何か柔らかい感触があった。テーブルの下を見ると黒い塊があった。よく見れば全身を黒い体毛に覆われた黒猫。軽く足を上下に動かすとつま先に向かって猫パンチを繰り出した。

(店で飼ってるのか)

 癒しを感じていると、カルロスがため息を付く。


「身体が動かなくなる前に、くたばっちまうのが最善か」

 言って、硬い肉をブチリと噛みちぎって飲み込む。

 笑い話でもあるが笑えないことでもある。元傭兵ですと言っても日本での潰しは効かない。ごく限られた職業に当たりをつけるしか無いのがネックだった。

「適当なところで切り上げて就職活動でもするかな」


「俺の地元に来るか? つってもマフィアとかしかねーけどな」

 結局は戦闘しか生きる道が無いのか。と恭平は天を仰いだ。

 傭兵の寝泊まりする施設は政府が用意しているので、そこに帰れば風呂もベッドも在った。

 カルロスと別れ自室に戻る。


「マフィアねぇ」

 傭兵からマフィアへの華麗な転職を果たした自分を思い浮かべると、自然と苦笑いがこぼれる。確かにデスクワークをしている自分も想像できないが、マフィアというのも微妙だった。

 適当にシャワーを浴び、銃や装備の手入れを行ってからベッドに寝転がる。考えることは色々あるが、睡魔に勝てるはずもなくいつの間にか眠りに落ちていた。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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