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異世界食事処『なごみ』  作者: 三条送
14/15

タン

 店に向かう道中で恭平がアロンに尋ねると、彼は経緯を語った。

「ドラゴンは良い稼ぎになる。どこの部位でも必ず売れるからな。で、捕まえたはいいが暴れだして、檻は壊れるし追いかけまわされるしで死にかけてた所に君が現れた次第だ」

 やれやれだ、と溜息を付くアロン。


「なぁ、さっきから気になってたんだが、その武器どこで手に入れたんだ?」

 2人の間に割って入るシューリ。彼の目には恭平の装備が映っていた。銃の性能が低いこの世界で、銃の存在は知っていても、連射可能な銃の入手経路などはなく、そもそもこの銃は存在すらしていない。 


 どうやって説明したものかと考えていると、代わりにレーナが口を開いた。

「私はお肉の支度があるので先に行きます。恭平さん、お店にはレコルンドがいます。あの娘に言えば飲み物は出てきますから」

 銃の出どころを誤魔化すためのセリフなのかはわからないが、それだけ言って去っていった。

 それに気を取られたのか、銃への追及は無くなった。


「ただいま」

 なごみの扉を開けるとレコルンドがカウンターの中におり、皿を洗っていた。

「あ、お帰り。ドラゴン倒したんでしょ? レーナが喜んでたよ」

 恭平に笑顔を向けながらも手は動かし続ける。

「まぁ、倒せたのは偶然な」


 恭平たちはカウンターに腰を下ろし、それぞれ飲み物の注文をする。

 この店の料理も飲み物も、地球産であり恭平には馴染みのあるものだが、アロン達には物珍しく映るのかと思いきや、

「ビールをくれ」

「俺も同じものを」

「焼酎の水割り」

「私はハイボール」

 と、慣れた感じで注文をしていた。


「よく来るのか?」

 恭平が聞くと、4人は頷いた。

「この店は超有名店だぜ? 贅沢する日はここを選ぶ」

「他の店より値段は張るが確実に美味いものが出てくるからな」

「変わった食べ物とか多いし、甘いものも豊富なのよねぇ」

「強い酒もある」


 なごみの評価は、金があれば毎日でも通う店らしい。料理も酒も地球で見かけるものなのに、それをすっかり受け入れられる位には浸透した存在らしい。

「キョーヘーは何飲む?」

 レコルンドが冷蔵庫からビールを取り出しているのを見て、恭平もビールを頼んだ。

 「キョウヘイの強さとワシ等の運の良さに」

 アロンが乾杯の音頭を取ると、全員がグラスや瓶を掲げた。


 ビールの冷たさと炭酸が喉を通り過ぎる快感を楽しむ。酒を飲みながら暫くしていると、店の奥の扉が開いてレーナが出てきた。

「お待たせしました」

 そう言いながら、彼女はアロンに紙の束を差し出した。それはこの世界の貨幣で、その束が3つある。

「満額そろっていますが、確認してください」

 代表で受け取ったアロンが手早く紙幣を指ではじいていく。

「確かに」

 最後の1枚を数え終えたアロンは、歳に相応しい落ち着いた笑みを見せた。そして総額を綺麗に5等分すると、その1つを恭平に渡す。


「君の取り分だ。受け取ってくれ」

 渡された金をありがたく受け取る。シューリ達も金を受け取り、そこから宴会が始まった。

 つまみになるような、【唐揚げ】や【板わさ】が並び、それに比例して酒も増える。

 一方のレーナはその宴会をBGMに料理をしていた。


 まな板の上には数キロは有ろうかというブロックの肉。彼女は包丁を1本握りしめてそのブロック肉と対峙している。

「それ、どこの肉ですか?」

 と、恭平が聞いた。

「舌、いわゆるタンですね」

「牛タンか」

「え、違いますよ?」


 恭平の中でタンとは牛タンのことで、先ほど自分で牛の様な生物を捕獲した事を考えると、自然とその結論に至ったのだが違ったらしい。

「これはドラゴンの舌です」

 この異世界ではドラゴンは常食の分類に入るのだろうか。確かにあの巨体であれば食べる部分は多いだろう。しかし、ドラゴンというのは哺乳類なのか、それとも爬虫類なのか。カエルやヘビは鶏肉に似ているというが。

 と、恭平の頭で色々なことが思い浮かんでは消えていく。


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