表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界食事処『なごみ』  作者: 三条送
10/15

冗談だろ!?

 本来であれば、恭平も魔法陣で帰る予定で2枚を受け取っていたのだが、使ってしまったことで徒歩による帰宅を余儀なくされていた。

(まぁ、土地勘を得るための散歩だと思えば、な)

 2時間もかからない距離なので来た道を戻る。 


 そして、1時間ほど歩いた所で景色の至る所に違和感が出てきた。

(こんな傷あったか?)

 右手に見える木の幹の傷、街道横の地面の抉れ。それは獣が自身の爪を持って傷つけたような跡。それが至る所にあった。

「デカいなヤバい生物か?」

 爪と爪の間隔が広いことから大型な感じもするし、暴れまわっているのはメスを取り合っての喧嘩かと考えていたが、あるものを見て違うのではと改めた。


 切っ先が折れた剣が地面に転がり、辺りには血痕が散らばっていた。それに加えて、折れ曲がった鉄の檻とボロボロの木製の車輪も転がっていた。

 人間対獣の戦いがあった事は間違いはない。状況を考えると人間側の劣勢で幕を閉じたのか、場所を変えながらまだ戦闘が続いているのかは解らない。


 巻き込まれることを避けるために、常に頭を動かしながら耳もしっかりと研ぎ澄ませる。銃はしっかりとセーフティーを外し、即座に引き金を引けるようにした。

 そのまま歩く。当然のように木や地面が(えぐ)れ、原型を留めないほどに崩れている場所もある。


 しかも、何かの

 すると、前方から土煙が上がるのが見えた。

「遠回りするか?」

 自らを危険に晒す必要は無い。出来れば迂回をして安全に帰るのがベストだと言えるので、それを実行する。


 しかし、何事も自分の思い通りには行かないのが人生であるように、恭平の判断も思い通りには運ばなかった。右に避ける形で歩いていたのだが、何故がどんどんと破砕音と土煙が近づいてくる。

「冗談だろ!?」

 運の無さを呪いつつ、逃げようとする恭平の前に、4人の人間と1頭のドラゴンが木をなぎ倒しながら現れた。


 人間たちはドラゴンに追われる側らしく、攻撃をくらわないように逃げていた。

 全長3~4メートルほどのそれは、獰猛な眼光と全てに食らい付き噛み砕く牙。全身を青い鱗が覆い、丸太ほどもある4本の脚と直撃すれば人間など一瞬で屠れるであろう爪。そして背中から生える蝙蝠のような1対の翼という、ファンタジーでは御馴染みの姿をしていた。

(うわ。本当にドラゴンがいたよ)


 当たらなくても良い予感が的中したことにガッカリしつつ、自分には関係ないことだと割り切って逃げることにする。

 ドラゴンは恭平に興味を持っていないらしく、チラリと見ただけで4人組の方へと向き直った。このチャンスを見逃す手は無いと、恭平は背を向けて早歩きでその場を離脱する。

 すると、短い悲鳴が聞こえ、

「助けて!」


 と女性の声がした。思わず恭平が振り向くと、胴体を横から齧られる形でドラゴンの口に女性が収まっていた。

 甘噛みなのか、それとも何かしらの防具のおかげか、腹に牙が食い込んではおらず、出血もしていない。仲間である3人も、どうにかして助け出そうと考えているようだが、奇しくも人質として口に収まっている女性が邪魔で手出しができない。下手な事をしてドラゴンが顎を全力で閉じれば、それこそ目も当てられない。


 いつ噛み砕かれても不思議ではない状態だが、その瞬間が来ない。何故かドラゴンは女性を口にくわえたまま頭を振る。

(遊んでるのか?)

 恭平には、獲物をただ殺すのではなく、じわじわと弱らせるためにとる行動に思えた。

 ドラゴンは数回頭を振ると、口を開いて女性を放り捨てる。成す術なく空中を舞い地面に叩きつけられる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ