第九十八話 マリー様
「母上。これはどういうことなの?」
マリー様は怒っているようだ。
「マ、マリー、どうしてこんな所に? 今日はお店に来ないはずでは」
女王様のあせった表情は初めてみた。
「わたしは、こんな方法でライバルのお店が無くなるのは望んでいません!」
マリー様は、きっぱりと言った。
「お店も、それにアゼルの事も、わたしは自分の力で勝ち取ります!」
マリー様は、あたしの方を見た。
え? あ、あたしに?
「マリーがそう言うのであれば……」
女王様はどうやらマリー様には頭があがらないようだ。
「それでは行きましょう。それにこちらのお店だいぶ壊れてる所も多いわ。外の兵隊にも手伝わせるからきちんと直しましょう」
マリー様はそう言うと、あたしの近くに来て小さな声で耳打ちした。
「マミと言ったわね。お店もそうだけどアゼルのことも負けないからね」
「え? あたしはそんな――」
「では、また明日からお互いに頑張りましょう」
マリー様は、お店の外へと向かった。
「マ、マリー様! なぜ、こんな! こいつらは!」
ジャン様が必死に立ち上がるとマリー様へ近づいた。
「あなたは覚悟おし! このような事をするなんて! 四銃士はもちろん。お城にも居られると思わないで!」
マリー様は冷たくジャン様をつきはなした。
「マ、マリー様。俺はアナタの事を思って!」
ジャン様は、黒い宝石を胸元から取り出した。




