第九十六話 アゼル
「な、なんだ?」
ジャン様は驚いている。
「久しぶりだな。全力で戦うのは」
アゼルがつぶやくと、ジャン様は目を見開いた。
「まさか、今までダブルを作った状態で――。
――くっ! ふざけるな!」
ジャン様はアゼルへと飛びかかった。
「まだまだ、修行が足りないね」
アゼルは親指と人指で剣の刃を挟んで止めた。
次の瞬間、何が起きたかわからなかった。
ジャン様は静かにその場に崩れ落ちた。
「う、うぅうう……。こんなに差があるなんて」
ジャン様は、床にはいつくばりながら悔しそうにもがいている。
「アゼル、大丈夫! それにシロちゃんは……」
「マミ、ごめん。
シロちゃんは僕が魔法で作った人形なんだ。
維持するために常に魔力を使い続けて、その思考は僕のコピーだから人間に近いんだけど」
アゼルは、なんでそんなことをしたんだろう?
「どうしてそんな?」
「お客さんが来ない日あったらマミが悲しむかなと思って、あと僕が居ない時にお店を守ったり、暴れるお客さんが居た時のために」
アゼルはずっとあたしの事を守ってくれてたんだ。
なんだか胸にこみあげるものがあった。
「ありがとう。アゼル」




