第九十五話 シロちゃん
パチパチと手を叩きながらジャン様は笑いながら言った。
「いやぁ。やはり、そのへんの魔物ではダメだと思ってたけど、
四銃士のアンリ、ジャック、ルネでも全く歯が立たないとわね」
ジャン様、なんだか嫌な言い方。
「めんどうだけどボクがやらないといけないみたいだね」
ジャン様は恐ろしい形相になったかと思うとアゼルに襲いかかった。
アゼルはアンリ様の剣をひろってジャン様の太刀を受けた。
「さすがアゼルさん」
「ジャン! どういうことだ!」
「どういうことも、こういうことも無いですよ」
ジャン様は剣を次々と剣を繰り出しアゼルを襲う。
アゼルはジャン様の剣を受け流す。
あたりに剣のぶつかり合う高音が激しく響く。
「ア、アゼル……」
あたしは嫌な予感がした。
これまでと違って戦いが長引いている。
その時、ひときわ大きな高音が響いたかと思うと折れた剣が天井へとつきささった。
「武器の差とは言わせませんよ。あなたがこの数年遊んでいた間、ボクは必死に訓練していましたからね」
ジャン様はアゼルに剣のきっさきを向けて言った。
アゼルの剣は折れてしまっていた。
「どうしてこんな事を……」
アゼルは悔しそうにジャン様に言った。
「あなたは四銃士であるボクよりも強く、あげくマリー様の寵愛まで受け、平民の出という身分を忘れて調子にのりすぎたのですよ」
ジャン様は剣を握り締めた。
「ちょっと! それただの逆恨みじゃないの! しかも、マリー様に相手にされないからってカッコ悪いわよ!」
あたしは思わず叫んでしまった。
「な、なんだと!」
ジャン様は、鬼のような形相で叫んだ。
「ズボシのようね! カッコ悪いわよ!」
ジャン様は剣をこちらへ向けた。
ああ、あたし、ここで終わりかも……。
「くっ、仕方無い。ごめん、マミ」
アゼルは、あたしの方を見て言った。
「え? 何が?」
あたしの声をかきけすようにアゼルが叫んだ。
「シロ! 戻れ!」
シロちゃんが光ったかと思うと、
光の粒子となりアゼルの体へと吸収された。




