第九十四話 ミクちゃん
「なんとかなったな」
アゼルは、一息ついて言った。
余裕だったように見えるが、あちこちキズだらけだ。
「ア、アゼルさん。ちょっとじっとしててくださぃ」
ミクちゃんはそう言うとアゼルに両手をかざした。
光がアゼルをつつみこむ。
「す、すごい!」
思わずさけんでしまった。
だって、アゼルのケガが一瞬にして治ってしまったから。
「ミクちゃん。ありがとう」
アゼルも少し驚いている。
「ど、どういたしましてぇ」
ミクちゃん回復魔法が使えるなんて意外すぎる。
メイド喫茶オスティウムでパーティー組めるわね。
あたしだけ変身能力って、戦闘の役にたたない遊び人みたいだけど……。
「さて、この次はどう出てくるのか」
アゼルは外を見て言った。
女王様の兵隊が周囲を取り囲んでいる。
向かいのメイド喫茶リリウムの屋上には女王様とジャン様がひかえている。
「四銃士の二人を倒してしまうなんて、ただではすまないわよね……」
恐る恐るあたしが言うとアゼルも返事した。
「ああ、だが、ジャンが何とか説得してくれればいいのだが」
そうだ!
以前から協力的だったジャン様が何とかしてくれないかしら。
屋上を見ているとジャン様は何かを女王様に耳打ちしてこちらへと向かってきた。
余裕で屋上から飛び降りて涼しい顔をしている。
「アゼルさん。魔物の討伐ご苦労さまでした」
ジャン様は微笑みながら近づいてきた。




