第九十話 魔物の群れ
ケルベロスが五体。
オスティウムを包囲している。
アゼルの圧力に圧倒されているのかケルベロスは唸り声をあげるだけで近づいてはこない。
「けど、なんでウチの店を囲んでるの?」
ケルベロスは、まっすぐオスティウムに向かって来たような気がする……。
「隊列! 包囲!」
向かいから号令が聞こえたかと思うとケルベロスを囲むように兵隊が現れた。
マリー様のメイド喫茶の屋上に四銃士。
その後ろに女王様!
「魔物を包囲せよ! その店の犠牲は気にするな! 絶対に魔物を包囲の外に出すな!」
女王様はこちらを睨みつけ叫んだ。
「ま、まさか、オスティウムを潰すために!? そんなはずは無いよね!?」
あたしが驚きの声を発すると、アゼルは冷静に口にした。
「女王様は目的を達成するためには手段を選ばない鋼鉄の女と言われてるんだ。
この国が他国を圧倒しているのも女王の手腕だと言われている」
ケルベロスがジリジリと向かって来る。
その外周には兵隊がひかえている。
その時、女王様の近くで黒い閃光が走った。
黒い影が複数立ち上がる。
そして、ケルベロスとアゼルの間へと瞬時に移動したかと思うと影が形を成した。
巨大な角の牛の顔を持った巨人。
その体躯はケルベロスほどだが威圧感は圧倒的だ。
「まさかケルベロスまで……」
アゼルは思わず驚きから声にしたようだ。
女王様の近くで黒い光が次々と光る。
そして、様々な魔物がオスティウムの前へとあらわれる。
鎧を着たガイコツ、腐った死体、不死の魔物。
ユニコーン、角のある巨大なクマ。
恐ろしい数の魔物にオスティウムが囲まれてしまった。




