第九話 四銃士ジャン様登場。
「私は『ヴァレンシュタイン家直属近衛兵団四銃士』のジャンという者だ」
えええ!
一番最初のお客様が四銃士。
どうしよう?
緊張しちゃう。
うん。こういう時は平常心よ。
平常心。
四銃士様と言えどもお客様は平等に。
「よ、ようこそメイド喫茶『オスティウム』へ」
あ、ちょっと間違えちゃった。
メイド喫茶『オスティウム』へようこそ。
だ。
「ようこそ」を先か、後かの違いだから間違ったなんてわからないよね?
「あ、う、うーん」
なんだかジャン様困っているみたい。
「メイド喫茶『オスティウム』へ、ようこそ!」
改めてはっきりと大きな声で言えた。
「うん。あー。私はマリー様の命で営業許可のための立ち会い検査に来たのだが」
「え?」
ああ、勘違い……。
顔が火が吹きそうなぐらい熱く赤くなってるのを感じる。
「お疲れ様です。ジャン様。わざわざ立ち会い検査までありがとうございます」
恥ずかしさで、あたふたしてる所にアゼルが良いタイミングで声をかけてくれた。
「アゼルさん。お久しぶりです」
ジャン様がアゼルに少し畏まって挨拶した。
え?
アゼルってジャン様と知り合いなのかな?
「どうです? 施設には問題無いですよね?」
アゼルはそっけなくジャン様へ言った。
「ええ、問題ありません。ただメイド喫茶というのは何なんでしょうか?」
もっともな質問だ。
この異世界初のメイド喫茶なのだから。
「は、はい! あたしが説明します」
名誉挽回だ。
「メイド喫茶とは、あたしのようなメイドが癒やしと寛ぎを提供するお店です。
フード、ドリンクに加え、まだまだ、これからですがメイド喫茶にしか無いアミューズメントメニューも提供する予定です」
ジャン様は、目をつぶったまま話を静かに聞いていた。
「それにマリー様もご納得いけるような。かわいくて綺麗なお店にしてゆきます!」
思わず力が入ってしまった。
「アゼルさんのお店なら私が出来る範囲で営業出来るように計らいます。それでは失礼しました」
あれ? またあたしスルーされてしまった?
ジャン様はお店を出て言った。
あたしのメイド力がまだまだ足りないのかジャン様、メイドに全く動じないとはやるわね。
ところでアゼル、ジャン様とはどういう関係なんだろう?
「ねえ。アゼル。ジャン様とお知り合いなの?」
「ああ、昔ちょっとね」
いつも明るいアゼルがちょっと曇った返事をしてきたので何か事情があるのかな? って思えてこれ以上聞けない。
その時、入口につけた鈴が鳴り来客を知らせた。
今度こそお客様?