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第八十二話 清掃、改装、男装。

 営業停止二日目。

 

 あたしは動きやすい服装にするため男装した。

 黒いシャツとパンツで動きやすい靴。

 なんだか少年みたいだ。

 自分の姿を鏡で見てなかなかのショタぶりに関心した。


 ミクちゃんとレイちゃんはギルドのレストランで一時的にアルバイトすることになった。

 レストランのマスターは事情を聞いてすべて了承してくれた。

 それにギルドのレストランでメイド喫茶『オスティウム』の事を宣伝してもいいとも言ってくれた。

 ミクちゃん、レイちゃんも再開時には新規のお客様が来てくれるよう頑張ってくれるとのことだ。


「よし! あたしも頑張らないと!」


 営業許可がおりるように一つずつ改装してゆく。


 キッチンの上は板張りの天井でなくてはならない。

 現在のキッチンの天井はと言うと板張りなのだが板が傷んでいる。

 通常、この程度なら何も言われないはずなのだがアゼルと一緒に補修してゆく。


 キッチンの中は黒や暗い色ではなく明るい色で。

 現在のキッチンの中は板張りそのままなので茶色だ。

 まったく問題無いはずだけど文句の余地がないようにする。

 キッチンの中を真っ白に塗る。

 こうなったら店内すべて真っ白に。

 ありとあらゆる箇所を。

 

 改装していない箇所は清掃もあらためて徹底する。

 清掃に終わりはない。

 やればやるほど気になる箇所が出てくる。

 天井に近い高い所もハシゴをのぼって雑巾がけ。

 男装はラクね。

 動きやすい。


「きゃっ!」


 調子にのりすぎた。

 左足がすべってハシゴをふみはずしてしまった。

 このままだと後頭部から床におちてしまう。

 思わず目をつぶった。


「あれ? 落ちない」


 目をひらくとアゼルの顔があった。


「マミ。危ないなぁ」


 アゼルがキャッチしてくれたんだ。

 アゼルの腕の筋肉。

 わずかにふれる胸板の感触。

 細いのにガッチリしている。


 冷静に自分の状況を見るとアゼルにお姫様だっこされている……。


「ご、ごめんなさい! お、おろして!」

 

 思わず足をバタバタさせた。


「ご、ごめん」


 アゼルはゆっくりとおろしてくれた。

 あたしはアゼルに背を向けた。


「危ないところをありがとう」


 小さな声で言った。

 あたしの顔赤くなってないかしら。

 恥ずかしくて思わず背を向けてしまった。

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