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第七十九話 検査員の指導

 オープンまであと30分。

 今日は、ミクちゃん、レイちゃんは来ないので早めに準備を終わらせた。

 昨日の一件を忘れるようにアゼルも早くからお店に来て準備を終わらせている。


「頑張りましょう!」


 思わずアゼルに声をかけた。


「ああ!」


 アゼルも待っていたかのように元気よく返事してくれた。

 その時、ドアをノックする音が聞こえた。


「あれ? まだ、オープン前だけど」


 入り口には制服姿の男性が二名たっていた。


「どちらさまでしょうか?」

「この地区の検査員です。飲食店の営業許可の定期点検になります」

「え? あ、はい」


 検査員はお店に入ると二人であちらこちらをチェックしては紙に何かを記載している。


「アゼル。こんな検査ってよくあるの?」

「いや、許可証を取ってしまったら検査なんて無いね。食中毒や何か事故でも起こさないかぎりは」


 現実世界と同じだ。

 食中毒で病院から連絡が入るとかしない限り保健所が指導や検査に来ることなんて無いと言っていい。

 なんでまた……。


 検査員はひととおり調べ終わると、あたしとアゼルに向かって言った。


「いくつか問題があるようです。本日、営業許可証は持ち帰り明日正式な連絡をします」

「え? どうして? 今日の営業は?」

「もちろん明日の正式な発表までは営業しないように」

「な、なんで!」


 あたしが飛びかかりそうな勢いだったためかアゼルが割って入った。


「かしこまりました。マミ、今日はお休みにしよう。普段手が回らない店内の清掃とかやることはいっぱいある」


 アゼルの口元がふるえている。

 アゼルも悔しくて仕方ないんだ。

 あたしがここで揉めて事態を悪くしてはいけない。


「わかった……」

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