第七十七話 災いのはじまりの来店者
オープンして1時間ほど、カウンターにシロちゃんと常連様一名。
今日は火曜日なので混みだすのは4時間後の20時ぐらいから。
今日もミクちゃん、レイちゃんが出勤しフルメンバー。
ドアの呼び鈴が小さくなり来客を知らせた。
黒いスーツを来た黒い犬の仮面を被った何者かがゆっくりとドアを開いた。
開いたドアをささえる黒いスーツの犬仮面を横をゆっくりと歩いて中に入って来たのは……。
マリー様のメイド喫茶からこちらを見ていた、ただならぬ雰囲気のマダム。
「いらっ」
あたしがお迎えしようとするのをさえぎりアゼルがマダムの前にひざまずいた。
深々と頭を下げ言葉をこれまでにないぐらい慎重に発する。
「ご無沙汰しております女王陛下」
(ええ! 女王陛下! どうりでただならぬ雰囲気、どことなくマリー様に似ている)
「おもてをあげい」
「はは!」
アゼルは直立不動で女王陛下の前にたっている。
あたしも姿勢をただした。
レイちゃんも作業を止め起立している。ミクちゃんは驚きのあまりか固まってしまっている。
気づくと女王陛下の後ろには護衛の黒い甲冑に身をまとった近衛兵が4名。
外には20名ほどの近衛兵が控えている。
ものものしい雰囲気だ。
「マリーが急にメイド喫茶など始めたいなどと言うから来てみれば、まさかお主のマネごととはな」
「はは! 恐れおおいお言葉」
アゼルは、再度深々と頭を下げた。
「お主が城を後にして3年か、よもや去る時の約束を忘れたとは言わせんぞ」
「もちろんです」
アゼルは神妙な顔をし返事した。
(なんなの? アゼルが王室に居たのは知ってたけど、女王陛下とも直接顔見知りなんて)
メイド喫茶オスティウムは、これまでにないほどの緊張につつまれていた。




