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第七十五話 マリー様のメイド喫茶からのぞく影

 毎日、目の前のやることをコツコツと。

 それで売上は徐々に回復してきた。

 今日は日曜日。

 久しぶりに満席になった。


 すると入り口から聞き覚えのある声が聞こえた。


「ちょっと。よろしいかしら?」


 マリー様だ。

 後ろには四銃士のジャン様、アンリ様を従えている。

 こちらのお店を偵察に来たんだろうか?


「おまたせしました。マリーお嬢様」


 あたしは丁寧に挨拶した。

 お店の売上も戻ってきたし余裕があるのだ。


「今日は、ちょっとお店の様子を見に来てあげましたのよ。ほほほほほ」


 なんだか嫌味ったらしい言い方だけど、ここは怒らず。


「大変申し訳ありませんが、ただいま満席のため少しお待ちいただく事になります」


 マリー様は驚いたような表情を見せた。


「そ、そんなはずは」


 店内満席の様子を見てマリー様は絶句している。


「ご覧の通りでございます」


 あたしは少し勝ち誇ったような気持ちになった。


「ふんっ! わたくしのお店のおかげで、こちらにもお客さんが来てるようね。感謝しなさい。行くわよ」


 マリー様は、負けおしみを言うとプイっと振り返って自分のお店へ歩いていった。

 ジャン様、アンリ様も後をついていく。

 ジャン様は一瞬こちらをふりかえって笑顔でウインクした。

 少し微笑んでいる。


「またのご利用おまちしています」


 あたしは深々と頭を下げて見送った。




※ ※ ※ ※ ※




 年末は売上があがるんだけど今日は一段とよかった。

 もうマリー様のお店におびえる必要は無い。


 戸締まりをしようとお店の外に出るとマリー様のメイド喫茶が目に入った。

 夜なのにガラス張りのお店が煌々と明るいので見ざるを得ないと言える。

 もう閉店のはずのリリウムのテーブルに一人綺麗なご婦人が座っている。

 よく見るとこちらを見ている。

 その眼力は力強くただものでは無い雰囲気を醸し出している。

 あたしは焦って思わず目をそらして店内へと戻った。


「あの人、何者なんだろう?」


―――――――――――


12月1日(日)


メイド喫茶『オスティウム』


 料金 1時間1980デジ 延長30分ごと950デジ


 売上

  日別 175100デジ

  月別 175100デジ

  年別 5788930デジ


 席数

  28席

  カウンター 6

  テーブル 24


 メニュー

  オムライス(メイドのお絵かきあり) 1000デジ

  オリカク  1500デジ

  メイドドリンク 1000デジ

  チェキ   800デジ

  初心者セット1500デジ

  カラオケリクエスト 1000デジ


  カラアゲ 500デジ


 メイドの心得


  メイドの心得1。

  お客様のプレゼントに遠慮はしない。代わりに全力で喜ぶ。

  メイドの心得2。

  お客様の事は、お客様から話をされるまでは詮索しない。


―――――――――――

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