第五十八話 向かいの建物が完成しました。
ずっと工事していた向かいの建物。
見るからに豪華で高貴なたたずまい。
ついに看板が取り付けられている。
「アゼル、見てみて! お向かいさん、ちょうど看板つけてるわよ」
「へー。何のお店かな?」
「やっぱり、あの高級な感じは宝石屋さんじゃないからしら?」
「うーん。ガラス張りで外から見えるテーブルと椅子の感じだとレストランじゃないかな?」
数人の作業員により目の前でゆっくりと看板があげられていく。
「見てみて、看板見えるわよ!」
看板は入り口の上に堂々とかかげられた。
「おお!」
アゼルは驚いて叫んだ。
看板を見ると……
(リリウム。メイド喫茶……)
「ええ!」
あたしも思わず叫んだ。
ものすごく豪華なメイド喫茶。
名称と建物の様子からすると正統派クラシックメイド喫茶だろうか?
思わぬライバル店が現れた。
「このあたり一体メイド喫茶だらけになったりしてね。盛り上がっていいじゃない?」
アゼルはのんきなことを言った。
あたしは何だか嫌な予感がした。
※ ※ ※ ※ ※
明日の新人歓迎会に備えてレイちゃん、ミクちゃんはお休み。
今日は一日、向かいに出来たメイド喫茶の事が頭から離れなかった。
来ているお客さんの間でも話題になっていた。
「うん。でも頑張るしか無いよね!」
お店が流行ってくればライバル店なんていくらでも出てくる。
うちはうちで頑張るしか無いのだ。
それにアゼルが言う通りこのあたり一帯が異世界の秋葉原として世界中で有名になれば沢山の人が訪れることになるだろう。
前向きに考えて頑張ろう!
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10月18日(金)
メイド喫茶『オスティウム』
料金 1時間1980デジ 延長30分ごと950デジ
売上
日別 74050デジ
月別 2131070デジ
年別 3809890デジ
席数
28席
カウンター 6
テーブル 24
メニュー
オムライス(メイドのお絵かきあり) 1000デジ
オリカク 1500デジ
メイドドリンク 1000デジ
チェキ 800デジ
初心者セット1500デジ
カラオケリクエスト 1000デジ
カラアゲ 500デジ
メイドの心得
メイドの心得1。
お客様のプレゼントに遠慮はしない。代わりに全力で喜ぶ。
メイドの心得2。
お客様の事は、お客様から話をされるまでは詮索しない。
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