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第2話 テンプレは自分で起こすものです

 両手に光の剣を生み出して、カマキリに突っ込む。初めて見る魔物だが、レイの一発で肉体が貫通するなら雑魚だろう。

 後ろからは、「ちょっと待って、え!!」という女の子の声が聞こえるが、今向かってきているオーガ程度に簡単に壊されるとは思わないし、壊されそうならカマキリからオーガ側の殲滅に切り替えればいい。


 広範囲攻撃で殲滅してもいいのだが、自分の身体能力を確認しておきたい。仮にも一度は、神の手によって魂もろとも肉体をバラバラにされたのだ。戦ってみて分かる違和感があるかもしれない。雑魚相手に早い内に確認しておくべきだろう。


 ――俺の役割ヒーラーなんだけどね。


 先頭にいるカマキリに、とりあえずは突っ込み、人っぽい形をとっている胴体とカマキリの下半身部分であるつなぎ目を断ち切る。本気を出している訳ではないのだが、カマキリは反応できなかったようだ。


 俺はカマキリの残った下半身部分に足を乗せて、一旦後ろにバックステップをして地面に着地する。同時に、カマキリの下半身部分もゆっくりと倒れて行く。


「キシャー!!」


 吹き飛んだ上半身も地面に転がるが、まだ生きているようだ。大きな叫び声を住宅街に響かせる。後で頭を打ちぬいて置いた方がいいかもしれないな。


 ガキィン


 周囲にいた他のカマリキが攻撃を仕掛けてきたが、わざわざくらうつもりはない。魔法で生み出した二刀の光の剣で、フルスイングで殺到するカマを全て受け止める。


 あ、調子に乗り過ぎたかも。光剣は切られなくても、俺の腕力が数体分のカマの力に拮抗できそうにない。


 それを悟るや否や、俺は条件反射で身体強化の魔法をかけてしまった。これじゃあ、魔法で強化していない俺の身体能力の確認もくそも無い。


 振り抜かれた剣は、殺到していたカマを切り捨ててしまっていた。


「まあ、身体強化せずに戦うことなんてないし、普通に戦ってみるか」


 後ろには女の子がいるのだ。遊び感覚で身体強化もせずに戦うのではなく、普通に戦おう。


「ブモモォォォ」


「うおっと」


 俺は後ろからの掛け声に、咄嗟的に横にジャンプすると、自分の身長を超えるこん棒が地面に叩きつけられていた。こん棒は道路のコンクリートをくだき、破片を周囲に散らしている。


 オーガのリーダーはこっちに来たのか……って、全部こっちに来てるじゃん。


 女の子の方を見ると、結界の周囲にはオーガは1体もおらず、華麗にスルーしてきたようだ。俺にとっては都合がいいのだが、そういうものなんだろうか。少しくらい攻撃してから諦めるか、何体かは結界の攻撃に回して、俺に向かってくる気がするけど。


 オーガの考え何てどうでもいいか。まあ、俺を倒せば全て解決するのだから、ある意味オーガの選択は正しいだろうし。


 俺は二刀の光剣を二つに合わせて、自分の身長よりも遥かに大きい大剣へと形態を変化させる。大きくなったからといっても攻撃力は変わらない。攻撃力を上げるなら、通常サイズに大量の魔力をつぎ込んだ方が効率がいい。


 でも、今の光剣の攻撃力と俺の身体能力でとりあえずはカマキリは切り倒されるのだから、これを振りまわせばとりあえず大方片づけることができるだろう。


 ブン


 という音はではない。風を裂く音など出さずに振り回した光の大剣は、特に抵抗を感じることもなく、円を描くように一周する。


 同時に周囲から獣と昆虫の雄たけびが俺の耳を貫く。


「まだ残っている魔物がいるッツ」


 大剣の射程外にいたカマキリとオーガが何体か残っているのを確認して、レイで打ち抜こうとするが、俺の頭上に大量の紫入りの血が降りかかろうとしていた。


 俺は自分に結界を張ってオーガの血を被らないようにガードする。ベチャ、ベチャという音と共に、俺の光輝く結界に紫の血が降りかかってくる。


 危ない所だった。俺が今着ている服は、神に拉致らえた時に来ていた服だ。ワイシャツにジーパンというラフな服装なのだが、それ以外の服装はこの世界ではコスプレに分類されるもののみ。唯一の普通の服をファンタジー満載のオーガの血で汚す訳にはいかない。


 俺は血の雨が止むのを待って、逃げているオーガとカマキリ、そして上半身だけで蠢ているカマキリにレイを放ち、最後の一体には、元のサイズに戻した光剣を脳天に目掛けてぶん投げる。


「何というか無駄な戦い方をした気がしてならないな」


 全ての魔物の脳天にレイをぶちこめば、それで終わりだったはずだ。


 いや、最低減の身体能力は把握だできたのだから無駄ではない。戦ってみたが、特に体に違和感はない。


 魔法も普通に使えるし、身体能力も低下はしていない気がする。


 違和感があるとしたら、妙に消費魔力が少ないことだ。箱庭よりも魔法が簡単に発動している気がする。いや、確実にしている。魔力全快で攻撃すると、恐ろしいことになりそうな気がしなくもない。


 問題ないの……か……? 弱体化の恐れとは真逆の結果になっているのだが、本当に問題ないのだろうか。理由が分からないのがモヤモヤしてしまう。例え、俺にとって都合のいい結果であってもだ。神に拉致られた箱庭よりも、なんだか妙に開放感があるのだが。


 神の手によって、あれだけのやられ方をしたのにパワーアップして復活するなんてあり得るのだろうか。


 死の淵から復活したらパワーアップするような設定を背負った記憶はないのだが。


 神が死に際に放った、俺の光の魔法がかすむ程の、凶悪な輝きを纏った光の槍のような一撃は未だに脳裏にこびりついている。体どころか、魂さえスタボロにされていく感覚は忘れたくても忘れられないだろう。まず、間違いなく俺は生きている方がおかしい状態になったはずなのだが。


「あ、あの~」


 か細い女の子の声に俺はハッと現実に戻る。あ、女の子を結界に閉じ込めていたんだ。

 

 慌てて駆け寄ると、女の子は涙目で女の子座りして、俺を見上げていた。頭をポンポンして抱きしめたくなるような保護欲が掻き立てられるが、それを初対面の女の子にやったらセクハラになるのでグッと我慢する。我慢するまでもなく、そんな度胸ないけど。


 俺は結界を解いて、彼女に手を差し伸べる。


「大丈夫?」


「は、はい。ありがとうございます!」


 彼女は、俺が差し出した手を躊躇わず握ってきたので、ゆっくりと引き上げる。近くで見ると女の子の容姿は、クラスで1番、2番とかいうレベルではなく、テレビで子役でもやれそうなほどの美少女に思えた。髪は漆のように黒く、癖のない綺麗な髪。年は小学生か中学生かといった所だろう。目は猫っぽい感じだが、涙目になっているのも合わさって、小動物っぽい愛らしさに拍車をかけているような気がしている。


 ポフン


 そんな可愛らしい音と共に、女の子は俺の胸に飛び込んできていた。


「怖かったです」


「もう大丈夫だから。うん」


 怖がっている年下の女子の慰め方何て分からないぞ。とりあえず、俺は女の子の背中をポンポンと叩きながら、何とか安心させようとする。

 女の子も俺の背中に手を回して、ギュッと離さないように強く抱き着ていくる。本当にこれどうすればいいんだ。


 俺の後ろには、オーガやカマキリの死体があるのを考えると、周りから見たら、なかなかシュールな光景だろうし。


 死体。あ、もしかして魔物に血の臭いで他の魔物がここに寄ってきたりしないだろうが。寄って来ても問題ないと思うが、女の子にとっては怖い以外の何物でもないだろう。


「他に魔物が寄ってくるかもしれないし、とりあえず移動しようか」


 俺は女の子の方に手を置いて、離れるように促す。


 女の子はコクリと頷いて、俺に回していた手を解く。ちょっと勿体ない気持ちになってしまうが、抱き着かれたままという訳にもいかない。



 俺達は、とりあえず先ほどの広場のすぐ側にあったマンションの一室に入って、一旦落ち着く方向ことにしていた。


「名前は? 俺は時雨悠しぐれゆう。年齢は……19歳。よろしくね」


「私の名前は、彩葉。柊木彩葉ひいらぎいろはって言います。年は……13歳です。改めて、助けて頂いてありがとうございます」


 柊木彩葉と名乗った彼女は、深々と頭を下げる。


 13歳ってことは、中学1年生か? それとも小学6生だっけ? どちらにしても、見ず知らずの女の子をマンションの一室に連れ込んでいることを考えると、こんな状況じゃなかったら事案になっていたな。赤の他人の家にいる時点で、不法侵入でもあるが。


 俺が年齢で言い淀んだのは、おそらく19歳としか言えないのだ。箱庭にいた期間が今一正確には分からないのだ。たぶん、19歳くらいだと思うのだが。気になるのは、彼女も言い淀んだことなんだが、俺に釣られたのか?


「柊木さんは、何で魔物に追われていたのかな?」


 人のことは言えないが、どうしてこんな人気を一切感じない場所で、魔物に一人で追われていたのは気になってしまう。そもそも、なんで人気が全くなく、魔物が徘徊しているんだか……聞かないとな。


「あ、はい。魔物を狩ろうとして攻撃したはいいんですが、大きな叫び声を上げたと思ったら、ワラワラと沢山集まって来て……アハハハ」


 1体しかいないと思って攻撃したら、仲間を呼ばれてしまったということか。


「そもそも何で攻撃したんだ?」


「これでも、一応は私ハンターをやっているもので。ハンターとはいっても、駆け出しで始めたばかりですが。それよりも、時雨さんはメチャクチャ強いですね!! 光の剣で、ズバーっと一掃しちゃうなんて。どうすれば、あんなことができるようになるんですか」


「できるよういなるって言われてもな。魔物を倒して強くなったとしか」


「まだ、お若いのに英雄のようなお強さ。それに、見たことが無い程の優しく、力強い光の魔法。まさに、物語の勇者のように見えました。もう死ぬんだと諦めていましたが、一転して勇者に守られるお姫様に慣れた気分でした。ありがとうございます!」


 彼女は、座っていた椅子から腰を浮かせて、テーブルを挟んで座っている俺に身を乗り出しながら、キラキラした目で俺に顔を近づけてくる。グイグイとくるな、この子。表情もコロコロと変わるし。それに、勇者とか言わないでくれ。恥ずかしさで死にそうになる。


 それに、どうすればできるようなるか……と言われてもな。神に拉致られて、死んだら終わりのダンジョン攻略をしながらゴールである運命の塔の頂上まで行ければ、強くなっているといっても訳が分からないだろうな。そもそも、ハンターって何? 魔物を狩ることはイメージできるけど、まさかそれが職業にでもなってしまっているのか。聞いてみるしかないか。


 この町の現状や人のいる場所も分かるかもしれないし。


「え~と、ちょっといいかな」


「はい! 何でしょうか?」


「ハンターって何か教えて貰っていいかな? あと、この辺りに人っていたりするの?」


 目の前の少女は、目をぱちぱちとさせながら俺を数秒じっと見つめる。俺と彼女の顔の距離はお互いの吐息が伝わってしまう程の距離のままだ。そろそろ、浮かせた腰を椅子に戻そうよ。俺は、目を合わせ続けるのに耐えられなくて、視点を横にずらす。そして、彼女も落ち着いてくれたのか、椅子に座り直してくれた。


「時雨さんは、もしかして異世界から来た人ですかね?」


「異世界?」


「ハンターや、町の状態が分からないということは、記憶を失っている人や、数百年単位で眠っていた人、隔離されていた人、そして異世界から来た人程度しか思い浮かばないので。時雨さんを見ていると、記憶を失っているようにも、数百年眠っていたり、隔離されていたようにも見えないので、異世界人なのかなと推測してみましたが……違いますかね。日本人っぽいのでちょっと不安ですが」


「間違ってはいないかな。俺は日本人だけど、異世界に連れて行かれて、戻ってきたことになるし」


「なるほど。行って戻ってきたパターンですか。名前も容姿も日本人なので、異世界に召喚された日本人の子孫だったりするのかなとも思っていました。でも、時雨さんは19歳ですよね? いつ頃に異世界に行ったんですか?」


「確か……2023年の11月くらいだったと思うが。今は西暦何年なんだ」


「そりゃまた、随分と時間のズレがありそうですね。そうなると、魔物もまだいなかった時代ですね。ついでに、何歳頃に異世界に召喚されたんですか」


「俺は高校1年の16歳だったな。魔物はファンタジーの存在だったな。まあ、連れ去られた世界で慣れちゃったけど」


 この世界で魔物を見て驚きはしたが、見飽きてしまっていたせいで、魔物の存在そのもを受けいれることには全く問題ない。そういう世界になっているんだと、受け入れるだけだ。


「それで今19歳と。それはまた、おっそろしい程のズレですね。アレ!? それじゃあ、たった3年でそんなに強くなったんですか!? チート能力でも手に入れたんですか?」


「チートかどうか知らんが、最初はメチャクチャ弱かったけどな。それなりに、生き死にをって、それはいいから、結局今西暦何年なんだよ」


 思い出すのも嫌な程に神に連れてこられた直後の俺は、能力も心も弱かった。まあ、心に関しては今も怪しい所だが。悪化はしていないことを祈ろう。


 それにしても、本当に今は何年なんだ。彼女の様子を見ると、まず間違いなく俺が神に連れて行かれた箱庭で過ごした3年と同じ時間が流れていた訳ではないだろうが。


「むむ。根掘り葉掘り聞きたい所ですが、それは置いておきましょうか。今は………………………ヘックシ」


「…………」


「そんな冷めた目で見ないでくださいよ。空気を和ませようとしたんです! 今は、西暦2315年です。約300年のズレが発生していると言えますね」


「マジで?」


「マジです。魔物が発見されたのが、確か西暦2100年頃だったはずです。その頃に異世界人の存在も公表されるようになったはずです」


「浦島太郎状態になっているってことか?」


 彼女はコクリと頷いて答える。どうやら、冗談でも嘘でもなさそうだ。


 俺が普通に高校生活を送っていた時のことを知っている人は誰もいないってことか。家族も既に死んでいるだろうし、高校の友達も。


…………碌な思いでがないから、悲しめないことが虚しいな。むしろ、あいつらがいないことがちょっと嬉しい。


「まあ、いいか」


「いいんですか!? ご家族や友達に……恋人さんとも会えないんですよ?」


「思い入れはないかな。友達なんていなかったし、家族もまあ。恋人は……いなかったようなものだし」


「なかなか寂しい青春を送っていたんですね」


「悪かったな。それで近くに人が住んでいる場所はあるのか? それに、この辺りに人がいないのは魔物が原因なのか?」


「ここは、群馬だった場所だと思いますよ。おそらく近くに人が住んでいる町はないと思いますよ。人が住んでいるのは、東京シティーか大阪シティー、後は各地にある点在している軍事都市ですかね。ここからだと少し遠いです。どちらにしても、パスがないと入れませんよ。この辺りに人がいないのは、2年前に魔物の数が一気に増えたことが原因です。皆シティーに逃げたんだと思いますよ」


 ここはグンマなのか。だから魔物が……って違うか。東京シティーに大阪シティーね。向かうとしたら東京が速そうだが、パスが必要と。それに小さな町……?


「パスは俺が入手することはできないのか? それに軍事都市って?」


「……身分の証明ができない時雨さんには難しいかもしれません。軍事都市とは、シティーが魔物討伐のために拠点を兼任した町になります。こちらも、パスがいります」


 詰んでね?


「異世界人が当たり前になってるんだよな? だとしら、異世界人はこの世界でどうやって生きているんだ?」


「2年前に発生した第2次モンスターハザードが発生するまでは、魔物の討伐もダンジョンの管理も順調だったんで、異世界人も普通に受け入れられたんですが……もうちょい早く戻ってくるべきでしたね」


「第2次モンスターハザードってなんだ?」


「魔物の数が突然増えだしたんです。ダンジョンの数も一気に増えて溢れだすわ、強力な個体も増えるわで、世界中が大パニックにった事件です。世界の人口が半分以下になったとまで言われていますよ。日本は半分以下になりましたけどね。ついでに言えば、第1次モンスターハザードは最初に魔物が確認された際のパニックになります」


 2年前って、300年のラグがあったことを考えると、本当に誤差みたいなものじゃないか。いや、生きているだけで感謝しないといけないんだけど……2年か。ハァ


「気を落とさないでください。助けてもらったお礼もありますし、こうやって出会たのも何かの運命! 私も時雨さんに付き合いますよ」


「いや…でもなあ。君には帰る場所があるんだろう? っていうか、何で1人で魔物を狩っているのか?」


「私も事情があって、ハンターとして魔物を狩りながら、1人で生計を立てているんですよ。それに帰る場所といっても、少し離れた場所にある、パスの不要な非合法な町になりますし 」


 彼女は、寂しそうな笑みを浮かべながら、手のひらでカップを包み、言葉をこぼす。


「私も時雨さん同様にパスを持っていないんです。そして、そんな人達が集まって、独自に暮らしている町もあるってことです。禄でもない場所ですけど、魔物の素材とかは高値で売れるんです。少し歩きますが、そこなら時雨さんも入れるはずですよ」


 暮らすにはオススメしませんがと付け加える彼女の表情は、どことなく苦みをこらえているような感じられた。


 そんな町もあるのか。あまりいい場所ではないようだが、行かざるを得ないか。彼女の様子を見ると、かなり治安の悪い場所というのは分かるのだが。そう考えると、目の前の少女はかなり危うい中で生きているってことか。


「なら、俺と一緒に行動してくれないか? 正直今の世界の状況どころから、日本の状況も何も分からない」


「も、もちろんです。むしろ私がお願いしたいくらいです! 1人だとやっぱり不安ですし、魔物の討伐も上手くいかなったので」


 俺が倒す役目ってことか。まあ、彼女からはこの世界の事や、魔物の素材の換金方法、それに先ほど話題に出てきたダンジョンについても教えて貰いたいし、Win-Winの関係だろう。可愛い女の子と一緒に行動できるだけでも、嬉しいと言えば嬉しいのも本音だけど。


それに、このまま別れてしまったら、この子は遠からず死んでしまうかもしれない。 俺が守るべきだろう。

 

「それにしても、本当にタイミングがよかったよな。オーガの集団と戦おうとしたら、後ろから君が来るんだから」


「アハハハ。私もオーガがいるとは思いませんでしたよ。道路で眠っている時間がもう少し長かったら、いくら時雨さんが強くても危なかったんじゃないですか?」


「………………」


「どうしたんですか? いきなり黙っちゃって」


「どうして、俺が道路で眠っていたことを知っていたんだ?」


「え? だってそれは、私が見つけた時に時雨さん、大の字で道路に………あ!」


 首を傾げながら思い出すように語る彼女だが、自分が何を言ってしまったのか把握できたのだろう。彼女は、口をパクパクさせおり、そんな彼女は俺をじっと見つめる。


 時間が止まったかのように、静寂の時間が数秒間室内で続いたのだった。

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