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第1話 日本に戻ってきた

『箱庭の世界にある運命の塔に辿り着き、その最上階に辿り着いた者だけを滅びる世界から救いましょう』


 俺は、俺達はいつの間にか連れてこられた白い空間で神と名乗る存在からそう言われた。質問などは一切許さず、淡々と神が言う試練の内容を俺達は聞かされた。


 地球を含む全ての世界が滅びること。助けるつもりはなかったが才能ある者達だけ、特別に試練を課して、選別することにしたこと。その試練が、神が用意した箱庭の世界にある運命の塔と呼ばれる場所に辿り着くというもの。

 辿り着く道中には魔物がいて、まるでゲームのように魔物を倒しながら自分をパワーアップさせていかないといけないということ。パーティーを組めること。そして俺達に力を与えているということ……神の説明はどこぞのRPGゲームの説明を聞いている気分だった。

 

 試練を受けた人数は1000名。運命の塔の最上階に着くことができたのは、たったの4名だった。その一人が俺。


 運命の塔に辿り着くために、多くの戦友が死んでいった。運命の塔の中に入った50名以上の戦友も俺を含めた4人を生かすために死んでいった。

 俺なんかと違って、勇気があって、仲間のために死ぬこともいとわないような英雄たち。

 もっと早くソロで突き進む事を止めていれば、仲間と一緒に戦う選択を取っていれば……結果は変わっていたかもしれない。

 神に連れてこられた箱庭世界に来る前に、俺は友や恋人に見捨てられた。だから、箱庭でも次も見捨てられるのではないかと思って、心の底から俺のことを心配してくれていた人達の手を振り払ってしまっていた。


 臆病で、弱くて、周りを疑うことしかできなかった。


 だけど……最後くらいは役に立つことできて良かった。


 このふざけた遊戯を高見の見物をしていた神との戦い。俺は大して約に立つことはできなかったかもしれないが、くそったれの神からの最後の一撃から一緒に戦った仲間を助けることができたんだ。


 誰かに泣いて貰いながら、死んで行ける。独りぼっちだった地球では考えらないくらい、幸せな死に方だ。


 心残りとしては、やっぱりようやくできた命を預けることもでできると仲間ができたのに、すぐに別れることになってしまったこと。


 だけど……それでも……


 俺の視界は暗くなっていき、もう目覚めることはなか……った。



「はずなんだよな。何で俺は生きているんだ? それにここは何処だ?」


 糞ったれな神が死に際に放った光の槍が俺を貫き、仲間である桜、白、テオ、そしてアウラ様の泣き顔に、骸骨。


 それが、僕俺が最後に見た光景だ。


 死んだよね? それとも、最高神の一撃をぶちかまされても、仲間たちがどうにかして命を助けてくれたとでもいうのだろうか。


「だとしたら、こんな場所にいないと思うんだよな」


 俺が目覚めたのは、住宅街の団地の敷地内にある道路の真ん中だ。自殺志願者か泥酔者としか言えないような状況だった。

 これで、起きたら自分の部屋でしたというオチだったら、夢オチという可能性も考えられたのだが、流石にこれはない。

 

 俺はゆっくりと立ち上がりながら、辺りの様子をマジマジと見つめる。


「やっぱり日本だよな。日本なんだよな~ アイツが言って言葉を信じるなら、地球は消滅していないとおかしいはずなんだが、俺達が倒したから予定が狂ったのか」


 神を名乗ったアイツは、確かに地球を含む世界が消滅すると言っていた。だが、どのように、そして何時消滅するかまで言っていなかった。だとしたら、まだその時じゃなかったのか。


 けど……ま、何か既に起こったのは確かだろうな。


 太陽がまだ高い時間帯に、住宅街の道路の真ん中で立っていられる理由は簡単だ。人が住んでいるような気配がなければ、人が暮らしているような環境に見えなかったからだ。住宅街は廃墟とはいうわけではないが、建物の一部が何かを撃ち込まれたかのように破壊されているのだ。道路には、倒れた木や倒壊した建物の瓦礫の一部が放置されている。これでは、車が通行するのは無理だろう。


 ここで一体なにがあったのだろうか? 


「そんなことを考えていたら原因であるだろうご本人のご登場か」


 顔が引きつるのが分かる。


 ドシン、ドシンという音を響かせながらマンションの3階程に相当するデカさの二足歩行の魔物が姿を現してきた。顔は兜で見ることができず、巨体を守るように、いかにも獣人が身に着けるような両肩にとげとげしい鎧で身を固め、その手にはその身の丈に合う大きなこん棒を持っていた。


 オーガや巨人か何かだろうか。まあ、俺が箱庭に居た時の知識になるけど。


「ヒー、フー、ミー、けっこいそうだな。10体……いや15体ってとことかな」


 一際大きい巨人かオーガーらしき周囲には、俺よりも二回りほど大きい緑色の肌で髪が生えていない筋肉質の魔物。オーガっぽいな。まず間違いなく、あのデカイのをリーダーとしてグループを作って、この辺りを練り歩いているのだろう。


 ということは、案外人間がいたりするのだろうか。あれほどの巨体なら食事の量もそれなりにいるだろうし。それとも、魔物同士の弱肉強食が繰り広げられているのか。


「ウゴァァァァァァァ」


 ぼんやりオーガーらしき集団を見ていたら、どうやら向こうもこちらに気づいたようだ。下っ端のオーガらしき魔物がこちらに斧を突き付けて叫び声をあげ、他のオーガー達も俺の存在に気づいて行く。


「ウォ!ウォ!ウォ!ウォ!ウォ!ウォ!ウォ!」


 リーダー以外は兜していないことから、その醜悪の表情は見て取れてしまう。敵ではなく、獲物を見つけた下劣な笑みだ。


「ゴォォォォォォォ!」


 でかいオーガーがこん棒を俺に突き付けながら吠えると同時に、下っ端たちが武器を片手に突っ込んでくる。作戦なんていらないと考えているんだろうな。なにせ、相手は自分達よりも二回り以上も小さく、武器も何も持っていない人間なのだから。


「神とかと戦ったこともあって、何だが緊張感がでないんだよな」


 オーガの集団程度で恐怖にかられるくらいなら、神に戦いを挑んだりはしないのだよ。


「4人の中では最弱だけど、戦えない訳じゃ――」


「イヤー!! 誰か助けて下さ――」


「はい!?」


 オーガ達が襲い掛かってきた方向とは全くの逆側から、どこぞの漫画やラノベにでてくるがごときの女性の助けを呼ぶような叫び声に、俺はすっとんきょな声を思わずだしながら振り返る。


 そこには、両手をカマキリのようなするどい刃にした上半身は人型で下半身はカマリキの集団が女の子を追いかけ回している光景だった。

 

 どんな鉢合わせだよ。


 女の子は俺を見つけて助けを求めようとしたみたいだが、俺の後ろにいるオーガの群れを見て驚いているのか、最後まで言葉を繋げることができなかっようだ。顔がひきつって、涙目になっているのがよくわかる。


 色々とつっこみたいことは沢山あるが、雑魚が増えて、守るべき人間? が1人が増えただけ。 とりあえず、この場をどうにかしてから女の子から事情を聞くとしよう。


 俺はオーガ達ではなく、女の子の側に移動して、半径3メートルほどの結界を張りながら、光のレーザーの魔法である”レイ”をカマキリ共に放つ。レイは、1体のカマキリの胴体を貫通して、そのまま後ろにいた1体の体の一部を消滅させて、更に後ろにあった建物にあたり爆発する。


 もろいけど、しぶといな。どうやら、上半身の胴体に風穴を開けても死ぬことは無いらしい。雄たけびを上げながらこっちに迫ってきている。後ろにいたオーガー達も、俺が一瞬で女の子の方に移動したことで、一瞬呆気にとらえたような様子をしていたが、やっぱり突っ込んできている。


 とりあえず、自分の今の力の確認と、地球にいる魔物の強さの確認をするとしましょうか。


 俺は、光の剣を生み出しながら、横で呆然と俺が放ったレーザーの魔法であるレイが放たれた方角を見ていた女の子に告げる。


「ここから出ないようにね」


「わ、わかりました!!」


 女の子は俺に声をかけられるとビクっと体を震わせるが、すぐに首をブンブンと縦に振って了承してくれた。


 それじゃあ、戦いますか。

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