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はぁ…、まぁ起きたことは仕方がないよね
それよりも現状把握の方が優先だ
記憶にある限り『マリア』は前の『私』と似たような家族環境みたいだしそこから改善するかぁ?
でも11歳からのスタートだと遅すぎるかも…?
たしかゲーム開始は15歳の春
コンセプトはありがちな身分違いの恋だったっけ
舞台は王国一の学園『ラルフェンス学園』の高等部
主人公のアンナ・サンテミリオンは男爵位でありながら特待生として入学し、学園に波乱を巻き起こす
攻略対象はこの国、『サンセール王国』の第二王子である『アダム・リリアム・サンセール』
王国騎士団長の息子『ギルデロイ・クラウザー』
大魔道士一族『ルーカス・ザクシャイン』
魔族とのハーフ所謂半魔の『ケイオス・セイブリー』
それから2年になるとやってくる異世界から召喚された勇者『ユウト・カガハラ』
確か他にも隠しキャラだとかがいたけどそこまでやり込んでないし、『マリア』に『私』が成り代わったっていうイレギュラーがあるからゲームの知識とはズレが出てくるし期待はしてないかな
ところで…
『私』はなんで成り代わったのだろうか
死んだのか、それとも突然トリップしたのか
こうなる直前の記憶がぽっかりとぬけてしまっているようだ
思い出そうとうんうん唸っていると再びドアが開かれた
「マリア!起きましたのね!よかったわ!」
「あ…、お姉様。ご心配をおかけしました、もう大丈夫ですよ。」
「ふふっ、でもまだ顔色がよろしくありませんよ。今日一日はまだゆっくりしていらして?」
「えぇ、ありがとうございます。」
ふふふっ、と笑った柔和な雰囲気に明るいふわふわとした茶髪、桃色の瞳の愛らしい女性
彼女がマリアの姉、『ユリア・エルーカ・アルメニア』
1つ上の姉でマリアのコンプレックスの一因である
ユリアは魔法に長けており、またその容姿や風貌から聖女と呼ばれるほどの人物
『マリア』という名でありながらさながら悪魔のようだと影で言われたマリアは心に深い深い傷を負っている
ーーーもし私が『マリア』という名でなかったら
ーーーもし姉がマリアの姉でなかったなのなら
そう考えてしまった結果、マリアは心を閉ざし偽りの仮面をはめた
それが私の、『マリア』としての記憶だ
もちろん姉のことは好きだし尊敬もしているが理解はできても心がそれを拒んでいるようで境界線を引いた
その境界線に踏み込んだのがエレノア嬢なのだが、今はそれは置いておこうか