光宗、兄になる。
初めて妹が出来た日のことをふいに思い出す。8月上旬、真夏の日差しが照りつける中、俺は義母さんの家にやってきた。
父「今日からここがお前の家だぞ光宗。」「チリチリリン♪」
ドアベルを鳴らすと扉がゆっくりと開き、扉の陰から小さな女の子が覗き込んでいた。
琴音「……ど、どちら様?」
女の子は恥ずかしそうに俯きがちに尋ねてきた。
父「やあ、君が琴音ちゃんだね。今日からわたしが君のお父さんになるんだ、よろしくな。で、こいつが君のお兄ちゃんになる光宗だ仲良くしてやってくれ。」
琴音「はじめましてお兄さん、よっ……よろしくね」
光宗「お、おぉ…」
こうして俺の妹との新しい生活が始まった。それから一年がたち現在、妹との激戦の真っ最中なのである。
琴音 「なーーんでわたしのパ〇コ勝手に食べちゃうのよっ!!せっかく学校帰りに食べようとたのしみにとっておいたのに。」
光宗 「いいじゃねぇか、こっちだってこの暑さで疲れてんだからよ。ほら、もう一本あるぞ?」
俺は琴音を慰めるつもりでもう一本のアイスを差し出す。だが、琴音の怒りはおさまらなかった。
琴音「うっさい!!今すぐ新しいの買ってこい、バーーカッッ!!」
琴音の蹴りがみぞに直撃した。
光宗「とても中一とは思えないぜ…」
それから何とか立ち上がった俺はしぶしぶ近くのコンビニでアイスを買いにいった。その帰り、俺はいつも通りだったら真っ直ぐ家に帰れるはずだったのだが…しかし、突然目の前の空間が変わり、俺は迷路のような場所に立っていた。
光宗「なっ…なんだここ?何で急にこんなとこに来てしまったんだ?」
俺は不安に思いつつも辺りを詮索した。しばらく歩き回り、俺はひとつの扉を発見した。扉を開けるとそこには見たこともない巨大な化物がいた。その姿は蟹にも見えて両腕のハサミがキラリと目に焼き付いた。
光宗「ば、バケモノッ!?ヤバい逃げなきゃ」
俺はその場を去ろうとしたが、入ってきた入口がなくなっていたのだ。
光宗「まずいっ!奴に気づかれたーーって、うわっ!?」
俺が態勢をくずしたところに蟹の化物が襲いかかってきた。
光宗「くっ!ここまでか……」
俺が諦めかけていたそのとき、桜色の光が化物を貫いた。化物が消えて俺は元いた空間に戻った。
光宗「いったい、誰が助けてくれたんだ?」
一度にいろんな情報を得たせいで俺の頭のなかはいっぱいだ。そこに追い撃ちをかけられる。
琴音「何ボーーっと突っ立ってんのよ、……お兄さん。」
聞き覚えの声が聞こえてきて、声の方向を振り向くと……秋葉でよく見かけるようなコスプレ姿をした妹がたっていた。
光宗「琴音!?なっ、何やってんだお前!それに、なんだその格好!?」
俺は自分の妹がこんな時間にこんな場所でこんな格好をしていることにかなり同様しまくっていた。
琴音「お兄さんの帰りが遅いもんで様子を見に来たら、妖魔の結界がはられているんだもん!まさかお兄さんが中に閉じ込められてるなんて……でも、無事でよかった。」
なにいってんだ?妖魔?結界?突然妹から訳のわからないフレーズを並べられて俺の頭はまだ混乱している。
琴音「あっ!ごめんね、いきなりこんなこと言われても意味わかんないよね?うーん……妖魔っていうのはね、人間の恨みの心が形になったもので、無差別に人を襲ったりするの。ほら、原因不明の事件とかあるじゃない?あれも妖魔の仕業なの。妖魔は普段は目に見えないからたちが悪いのよね……だから、わたしのような選ばれた陰陽師が変わりに妖魔を倒してるの。」
うん?こいつ今なんて言った?えっ、陰陽師!?だめだ、ついていけねぇ…
光宗「な、なあ琴音、そのお前が陰陽師ってどういうことだ?選ばれたって誰に選ばれたんだ?」
琴音はふっとため息をつき、ややめんどくさそうに俺の質問に答えた。
琴音「……3ヶ月前、放課後に本屋に立ち寄った帰りにお兄さんと同じようにわたしも妖魔の結界に捕まったの。そこで妖魔に襲われそうになったわたしを一人の陰陽師が助けてくれたの。そしたらその陰陽師にーー君は陰陽師の素質がある、一緒に妖魔の討伐を手伝ってくれないか?ーーって言われて、わたしも普通と違う人生に憧れていたから陰陽師になることにしたの。」
妹は俺に陰陽師になった経緯をはなしてくれた。しかし、まさか琴音が普通と違う人生に憧れていたなんて驚いたな。
光宗「……自分の妹のこともわかってなかったなんて情けない兄貴だな俺は。……っよし、琴音!俺も協力するぜ、お前が困ってるときに俺が出来るだけサポートする。」
琴音「お、お兄さん!?」
こうして俺が妹との絆を深めるための戦いは幕を開けた。