9.魔法
細かな設定って面倒くさいですね
「では魔法の実践を始めます。魔法はイメージが大事です。というか想像力が無ければどれだけ魔力があってどれだけ魔法属性があっても魔法を使うことはできません。魔法の中核になるのはイメージということです」
イメージですか……。ふふっ。想像力とは妄想力と同じ!影にぃの妄想するのは得意です!
「ふむ……」
イメージイメージ……。
「できない」
いくらイメージして魔力を込めても何にもできません。
「よく考えてください。今から使うのは光魔性の聖なる光です。この魔法は光を生む魔法です。無属性魔法のライトと似ていますがこれはアンデットにも効く光です。そのことをよく想像してください」
光、それも聖なる光……。アンデット、つまりゾンビやスケルトンなどに効く光、浄化の光……。あぁ、早く魔法覚えて強くなって影にぃを助けなくっちゃ。
「ホーリーライト」
私が魔法名を呟くと私の目の前にまぶしい光が現れます。
「っ、できた!やったぁ!魔法だよ、魔法使えちゃった!」
「……できましたけど、なんですこれ?」
リーゼが光を見てあきれたようにそう言います。私も光をよく見ると、
「え?……これって、かげ、にぃ?」
光は影にぃの形をしていました。なぜ?
「これが影にぃ、ですか?」
「うん、でも、なんで?」
私が疑問に思っていると、
「多分…チカゲがイメージの際に影にぃ、をイメージしたからじゃないですか?それもかなり鮮明に」
「うっ」
「魔法を使う際に余計なことを考えていると痛い目を見ますよ」
うぅ、怒られてしまいました。
「ごめんなさい……」
「反省したのならいいですよ。では続きをしましょう。光属性の初級魔法はちょっと問題がありましたが大丈夫でしょう。今の感じでほかの属性もやってみましょうか」
「はぁい」
火属性のファイア。土属性のサンド。氷属性のアイス。雷属性のサンダー。どれもどうにか使うことができました。
「うん、適正属性に問題はないですね。ではどんどん難易度を上げていきましょう」
次に試す魔法は第6階位魔法です。魔法には7階位から1階位まであり先ほど使ったファイヤ、サンド、アイス、サンダー、ホーリーライトなどは7階位魔法と呼ばれています。数が小さくなるほど難易度は増していきます。
「じゃぁまず光魔法のライトアロー。これはアンデットに対して抜群の効果を表します。詠唱は難易度が上がるごとに増えていきます。
7階位魔法は詠唱はいらないですけどね。詠唱は慣れてくれば略せたり無詠唱ができたりしますから、記憶力に自信がなければとにかく魔法を使って慣れていくことですね。
ライトアローの詠唱は『聖なる理、矢を成し敵を穿て』です」
詠唱か……ちょっと恥ずかしいな。
「ゴホンッ。せ、『聖なる理、矢を成し敵を穿て!』」
どもりながらも詠唱し終わります。しかし何も起こりません。
「チカゲ……。魔法はイメージが大事なんです。今詠唱中にイメージしなかったでしょう?」
「うっ……。そういえば詠唱するのに夢中でイメージしてなかった……」
「ではもう一回!」
ま、またあの詠唱をしなければならないなんて……。恥ずかしいです。
「『聖なる理、矢を成し敵を穿て!』」
今度はしっかりイメージしました。魔力もきちんと流しました。すると目の前に光る矢が形成されていきます。完全に矢の形になった光は、その場で微動だもせず沈黙を貫きます。数十秒もすれば光が霧散するように消えていきます。
「?」
確かにイメージしたんだけどなぁ。
「チカゲ。もう一度言います。魔法はイメージです。形のイメージをしてもそれでは形作るだけで動くことはありません。その矢がどう動き、どのような威力で標的に当たるのか。それをイメージしないといけないのです」
「あぁ、そういうことね!」
「威力や速度はイメージだけでは変わりませんがどう動くかならばイメージでどうとでもなります。まぁ複雑な動きをさせたければそれだけイメージも鮮明に、難しくなります」
ふむ…。よしっ、次こそは大丈夫です!
「『聖なる理、矢を成し敵を穿て!』」
先ほどと同じように目の前で矢が形作られていきます。しかし先ほどのようにその場でじっとしているのではなくビュッっと音を鳴らし飛んでいき壁にぶつかります。壁にぶつかった光の矢は壁に刺さることなくぶつかった瞬間霧散してしまいます。
「あれ?消えちゃった」
「この壁の結界は魔力を霧散させる力があるんです。ですから消えてしまったのは威力が足りないのではなく結界が強力なのです。さっきの魔法なら人体に突き刺さる程度の威力はあったと思いますよ」
じ、人体に突き刺さる……。生々しいです。
「も、もぅ。折角テンション上がってたのにリーゼが生々しい言い方するから萎えちゃった」
「あっ、ご、ごめんなさい!」
「ふふっ、いいよぉ。さぁて、次の魔法いっちゃおう!」
次に試す魔法は5階位魔法、リフレックス。5階位までの状態異常魔法などを一時的に無効化する魔法です。
「詠唱は『聖なる光、我に仇なす理をその光をもって打ち消さん』です」
むぅ、これは全ての詠唱を覚えるのはきつそうですね。早く慣れなくちゃ。
「『聖なる光、我に仇な、すこ…とわり……プハッ、はぁ、はぁ。なに、これ……」
なぜか詠唱中に言葉が出てこなくなりました。喋ろうとしているのに声が出ず、無理やり出そうとすると息ができなくなります。
「ようやくですね。それは自分が使える階位以上の魔法を使ったときに出る症状です。その症状が出る前の階位が現状使える階位になります」
「それじゃ、私が使える魔法は6階位までなの?」
「いえ、現状はです。これから魔法を使ていき熟練度を高めれば使える魔法も増えていきます。、まぁ人それぞれ得意不得意がありますから7階位しか使えない人もいます」
一番適性のある光属性でも現状6階位までなんだ。
「もしこれで2階位、3階位などの上級魔法や1階位の最終魔法が使えたら私自身無くしちゃうところでしたよ」
「あはは。リーゼはどこまで使えるの?」
「私は3階位までです」
へぇ、上級魔法使えるんだ。
「じゃぁ宮廷魔術師団主席?の人は?」
「エリザさんですね」
へぇ、エリザさんって言うんだ。一応覚えておきます。
「エリザさんは2階位までですね」
「1階位は?」
「1階位なんて太古の英雄が使ったと伝承が残されているぐらいですね」
大昔の英雄が使った技……かっこいいです。
「1階位魔法は広範囲型破壊魔法とも呼ばれています。その魔法一つで山を軽く消し飛ばす威力があるとかなんとか」
軽く山を消し飛ばすとか、何の冗談でしょう。
「2階位では軽く大穴を開ける程度しかできないです。だから1階位と2階位の差はとても大きいのです」
「いや、それでも十分でしょう……」
魔法、怖い……。
「さぁ、訓練の続きを始めますよ!熟練度を上げるついでに魔力の総量も上げてしまいましょう。今から気絶するまで魔法を使ってもらいますよ?」
「ま、待って?気絶するまで、って冗談でしょう?」
「フフッ」
「ちょ、ま、まってリーゼ!」
「フフフフフフフフフフフフ…………」
リーゼ、怖い……。
次話、影宗視点です




