12.案内
異世界の町なう。
異世界の街並みは中世ヨーロッパ、某巨人のアニメ、某ウサギでもふもふで心がぴょんぴょんするんじゃぁ!とかの街並みに似ている。
なんだか景気が無いな。やっぱ食糧難や王国のことが気がかりなんだろう。どうにかしてやりたいな。
「お、フィア団長じゃないか!」
「魚屋のおじさん。こんにちは」
町の中を歩いていると前掛けをかけた頭に熊の耳をのっけたおっちゃんが声をかけてきた。熊の獣人か。
「こんにちわ。今日は一人でどうしたんだい?」
「え?一人……」
「フィア、多分このおっちゃん俺のこと見えてない」
自分で言ってなんだが傷つくな。
「あ、そういえば影がうす…いえ、そのぉ」
「気にすんな。自分でもわかってるから」
「フィア団長一人でしゃべってどうしたんだい」
「俺のことは気にしないでいいぞ」
もうこういう生活には慣れたからな。こんなの日常茶飯事だ。
「い、いえ。なんでもないよ」
「ん?そうかい」
「こらっ、あんた。サボってないで働きな!」
おっちゃんとフィアが話していると店の奥から恰幅の良い牛の角が生えたおばちゃんが出てくる。こちらは牛の獣人。もしかしてケンタウロスの混血種だったり?こちらも前掛けをかけ首にタオルを巻いたガキ大将のお母さんみたいだ。
「おぉ怖い怖い。どうだいフィア団長。いいグングルが入ったんだけど料理長に持ってくかい?」
そう言っておっちゃんはフィアに緑色に水色のまだら模様の輝く大きな魚を突き出す。とても毒々しい色してやがる。うまいのか?
「ん~。今はお仕事中だからお仕事が終わってから来るね」
「そうかい。んじゃお仕事頑張ってな」
「はいっ」
フィアはおっちゃんに手を振って歩き出す。
「今のはシミシ魚店。シミシ夫婦が営む国都で結構人気のあるお魚屋さんです。人柄もいいのでここら辺のリーダーのようなものをしています。この辺りはお店が集った商店区域です。この国都は四分割されていて東は商店区域、北は住宅区域、西は職人区域、南は自衛団の本拠地のある基地区域。様々な訓練ができるように設備が整ってます」
「住民の避難場所が住宅区域で南の基地が盾役になるって感じが」
いい配置じゃないか。
「これもイージス様が考案したんですよ。いつ南から進攻があっても自衛団が盾になれるようにということらしいです」
「爺さん、名前負けしてないねぇ」
流石神の盾。ただのうざい爺さんに見えるが見た目で判断しちゃだめだな。
「それにしてもあれがフィアの素なのか」
今までは無理して堅苦しい喋り方してるように見えたからな。
フィアは俺の言葉にハッとして慌てて弁明しだす。
「ち、違うんです!今のはあの、あれです!あれなんですっ」
混乱しているのかどれなのか全くわからない。
「別に責めてるわけじゃないからな?たださっきまでの喋り方は無理してる感じがあったから、なんなら俺にもさっきの感じで話しかけてくれていいんだぞ?」
「そ、そんなことできませんよっ。魔王様に対して無礼ですっ」
「魔王様である俺がいいって言ってるんだけどな」
フィアは頭が固いな。爺さんみたいにさっぱり、というか爺さんはさっぱりじゃなくて裏でいろいろ考えてんのか。腹グロっぽいよな。フィアがあんなになるのは嫌だ。
「やっぱ今のままでいいや。今のフィアがいい」
「っ、ま、魔王様!?」
うんうん。やっぱフィアはフィアのままがいい。
「さて、城から出てここまで歩いてきて思ったいたのだが……この道端に生えてる草?みたいの」
「?コメッコですね。どこにでも生えてる雑草ですよ?」
ざ、雑草だと……。どう見ても、どう見ても米じゃないか。てかコメットて。明らかに米意識してるよね。
「これ、食えるのか?」
「え?これ雑草ですよ?食べるわけないじゃないですか」
いや、でもこれ米。しかも小麦色になってちょうど収穫時期のようだ。粒を一粒摘むんで口に入れる。
カリコリ音を立てながら米粒をかみ砕く。
「ま、魔王様!そんなもの食べちゃいけませんおなか壊しますよ!ペッしてくださいぺっ」
おいフィア。馬鹿にしてんのか?
米粒はちゃんと炊く前の米粒の味がした。
「大丈夫だ。これ食えるから」
「これが食べられるんですか!?硬くて味もおいしくないらしいし。どうやって食べるんですか?」
「これは水に浸して炊くんだよ。すると水を含んでふっくら柔らかくなるんだ。いろんなおかずにあっておいしいんだ」
フィアはいまだ疑念を持っているようだ。まぁ仕方ないだろう。このコメットは昔から雑草という常識なんだろう。それを急に食えるだなんて疑わしいだろう。
「このコメットっていうのどういう草なんだ?」
「繁殖力が異常に高くて芽が出た三日後にはこの状態まで成長するんです。その異常性から研究する方もいろいろいたんですけど、コメッコが食べられるなんて話聞いたことないです」
「んじゃ俺たちが歴史で最初の偉人になっちゃうな。城に帰ったら炊いてみるか」
「ゴクッ。ほ、本当に食べれるんですかね」
俺の話を聞いたフィアは喉を鳴らす。
なんだか食い意地が張ってるな。それだけ食糧不足なんだろう。
「これが大丈夫だったら食糧問題も結構解決できそうだな。量は……」
あたりを見回せばそこら中に生えている。
「うん、大丈夫そうだな」
「そ、そうですね。これでおなか一杯食べれる日が…」
なんだかフィアが不憫な娘に感じてきた。
「フィア~。ご飯炊いて腹いっぱいご飯食おうなぁ。おかずは何にしようかぁ」
「うぅ。子ども扱いしないでください!」
「ははっ。んじゃ町の案内の続き頼むよ」
「むぅ……わかりました」
頬を膨らませながらも丁寧に案内してくれる。いい娘だなぁ。
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「ここが自衛団本拠地、ヘイムダル要塞です」
今俺たちは南地区にある自衛団本拠地に来ている。外見は少し大きな要塞だ。南地区は要塞から繋がる壁に区切られており外に出るときはこの要塞を越えていかなくてはいけないらしい。敵が攻めてきたときはこの要塞が盾となりその間に市民は北の住民区にある避難用の脱出路から逃げ出す。という手はずらしい。これも爺さんが関係してるらしい。
「なんかほとんどの物に爺さんが関係してるなぁ。これ、爺さんがいなかった時よくこの国はもってたな」
「昔は責めることばかり考えていたようで国もかなり不安定だったらしいですよ。でもイージス様の守るほうが楽だろう。の言葉で守りを固めだしたんです。そのおかげで国が安定しだしたんですよ。まあそれでもいろいろ問題抱えてるんですけどね」
ますます昔の魔国が心配になってきた。
「あ、フィア団長!」
そんな話をフィアとしてると野太い声が聞こえてきた。
「ダンテル大尉。どうかしましたか?」
「いえ、フィア団長が一人で話している姿が見えて。今日は城の方で何か用事があるのではなかったのですか?」
「え、あ、あぁ。それはもう済みました」
ん~。異世界なら俺に気付いてくれる奴がいるかと思ったが、やっぱいないかぁ。ぐすん……。
「それで、さきほどは一人で何を話していらっしゃったんですか?」
「い、いや。なんでもないです。気にしないでください」
「?そうですか。では私はこれにて。失礼します」
そう言ってダンテルという男はどこかへ行ってしまった。
「で、では案内を続けますねっ」
フィアについていくと大きな広場が見える部屋にやってきた。
「ここはこのヘイムダルで最高指揮官である団長が待機される部屋、現団長は私なので私の勤務部屋ですね。ここは拠点内を見回せる場所にあるのでこの部屋で説明しますね。
この本拠地は中央の道で左右に分かれていて城から見て右をプラーヴィ。左をリールヴィと呼んでいます。
まず中央にある広場、通常戦闘第一訓練場は主に団員の訓練場に使用されています。有事の際には住民の避難場所や攻めてきた敵軍を一網打尽にするための総攻撃状になる予定です。周囲を壁で囲んでいて敵を一纏めにすることも住民を守ることもできるようになっています。
次はリールヴィのほうにある一番手前の建物は環境想定式第二訓練場。あれは様々な環境で自衛する時の場面を想定して訓練できる訓練場になってます。魔道具や魔法の力を使って砂漠、平原、森林、山岳、地下などの想定訓練を行えます。
次はその奥にある小さな町のようなものです。あれは町中による戦闘訓練を意識した都内防衛第三訓練場です。万が一都内に敵を侵入させてしまった場合を想定した訓練場です。
そしてその隣にある建物、あれは気候想定第四訓練場です。第二訓練場に似て様々な気候を想定した戦闘訓練を行える場所です。熱帯、温帯、寒帯、冷帯、湿地帯、乾燥帯など多種多様な気候をまた同じく魔道具や魔法によって再現します。
主な訓練所はこれぐらいで、次は正面門左に位置する高い塔です。あれは物見塔。拠点内はこのヘイムダルでできますが防壁の外の監視はさすがにできないですからね。あそこにローテーションで待機させてある団員が24時間見張っています。この物見塔は全部で八か所、北、北東、東、東南、南、南西、西、西北に設置され敵兵や魔物の姿を発見次第、狼煙やライト、音などによって方角、距離、数などを知らせれるようになってます。
次はプラーヴィの一番奥にある建物の集合体、あれは宿舎です。団員候補生、団員達、主に独身の方々などが基本的にあそこで生活しています。結構なされた団員は住民区に移住していたりしますが、たまに家族とともにあの宿舎で過ごしている団員もいます。」
「フィアもあそこに住んでるのか?」
「いえ、私は小さな家を買ってそこに一人で住んでます」
ほぉ。流石団長。金は持ってるんだな。
「時々仲の良い女団員にもっといい家に住めばいいのにとか言われるんですけど、あまり大きい家に一人で住むのはさみしいので」
そう言ってフィアは苦笑を浮かべる。
「フィアは独り身なんだな……。失礼かもしれんがこの国じゃだいたいいくつで結婚するんだ?」
「え、えっと……15から20の間には大体の方がパートナーを見つけていますね」
「んじゃフィアももうそろそろ結婚とか考えてんのか?」
「いえ、今は仕事に集中したいので。作る予定は今のところないです」
フィアルックスは良いわ性格もいいわもてると思うんだけどな。
「その宿舎の少し手前にある白い建物、あれは治療院。説明する必要はないと思いますが治療をする場ですね。
それよりも手前にある二つの長い建物。あれは団員候補生が自衛団になるために勉学に励むハーデス自衛学園です。主に14歳から入学可能です。それから4年で団員認定されます。」
ん?
「フィアは12から働きだしたといっていなかったか?」
「私はもともとある町の孤児でして。取柄と言えば力があることぐらいでした。育った場所もあまり治安が良い土地ではないため絡まれることなどざらで。生きることに夢中でよく喧嘩をしていて。10のとき同じように喧嘩している所を、丁度町に訪れた先代団長に見つかり自衛団にスカウトされたんです」
うわぁ。四年の課程を二年て。飛び級か。しかもそれで団長だろ。チートか?
「では続けますね。リールヴィの奥、第二訓練場の奥にある。建物は倉庫になってます。武器に防具。兵器、雑貨、食料、衣類、ポーションや包帯などの治療品が備蓄されてます。拠点の主な設備はこれぐらいですね」
「ん~。団員の人数と構成は?」
「総数5,5762。上から団長1、団長直属部隊人数12、大将20、その下に中佐80、少佐160、大尉640、中尉1,920、少尉2,560、曹長1,280、軍曹3,072、伍長4,608、兵長5,990、上等兵8,386、一等兵12,579、二等兵15,094、団員候補生総数4,474。1学年~4学年、下から1,025、1,121、1,005、1323です」
「お、おぅ。マジか。全部覚えてるのか?」
「団員の人数を覚えておかないといざという時に困りますからね。ですがこれは数か月前の情報。リアルタイムでかずをかぞえることはできませんので。増えていたり減っていたりするかもですが」
流石飛び級で団長で。優秀すぎないか?
「うん、すごいね。まぁこれで自衛団の案内はいいかな。次は職人区域見に行ってみようか」
自衛団の説明のときの階位とか、あまり知識がないので
変なところがあるかもしれません。助言していただけたら
ありがたいです
あと王都地図をはじめのページに載せときました