おばちゃんVS次女瑞穂VS車いす
人物紹介
豪徳寺高志:俺。24歳。普通のリーマン。妹達いわく「恥ずかしい兄」
豪徳寺瑞穂:20歳、171cmでスポーツが得意な妹。
豪徳寺初穂:150cmと小柄だが、茶髪にして現代女子高生になろうと頑張っている妹。17歳。
おばちゃん:瑞穂いわく「たぶん名前はサチヨだと思う。そんな感じの雰囲気。」
車いすの女:初穂いわく「美人だからお兄ちゃんに勝てるように応援しちゃう。」
電車に揺られていると、不快な香水の匂いが。
この匂いはあいつだ。
さりげなく後方を確認する。
チッ、やはり昨日のおばちゃんだ。
しかし今日は俺の真後ろではない。
俺の斜め後ろ。
グイグイと上の妹の瑞穂に向かってポジショニングしてやがるのか?
みると、デブッた胸をグイグイ瑞穂に押し付けてやがる。
おいおい、あの顔は『当ててんのよ』と言いたげな小悪魔表情だぞ。
お前が…そんな表情を…するな…
おえええぇぇぇぇ。
ヤバい吐きそう。
流石に瑞穂も気持ち悪いのか、じりじりと俺の前に移動してくる。
ヤメろ。
俺を巻き込むな。
おばちゃんの顔が徐々に俺の真横に来る。
やめろ瑞穂、お兄ちゃんを巻き込むな。
お小遣いやるからアッチに行きなさい。
やめて、
あっち行って。
ガタン
電車が大きく揺れて、乗客がたたらを踏んだ。
その瞬間、鋭く眼光を光らせた瑞穂は人の揺れの動きに合わせて、おばちゃんの後ろに回り込む。
なるほど、逃げられないなら死角にか。
良い作戦だぞ瑞穂。
しかし
しかしだよ君!
それによりひどい悲劇が起きた。
おばちゃんの『当ててんのよ』モードが俺に。
しかも正面同士で向き合ってしまい、顔が近くてつらい。
よし息を止めるぞ。
うぐぐ、はやく次の駅につけ。
次が乗り換えの駅だ。
息を止めるのも限界になってきた。
ちょっとクラクラしてきた。
あれ、お爺ちゃん。死んだはずなのになんで俺の前にいるの。
もう限界と思ったとき、
ぷしゅー
ドアが開いた。
やった!助かるぞ!生きて脱出できる。
おれは急いで出口に向かう。
俺の正面に立ってしまっていたおばちゃんは、おれの猛烈プッシュで押し出される。
「ちょっと、押さないでよ。ちょっと。」
満員電車で何寝ぼけたことを言ってやがるんだババア。
大人なら流れに逆らわずに降りやがれ!
おれは強くおばちゃんを押し出した。
「おさないでよ変態!」
そう叫びながら外に押し出されたおばちゃんは。
「ぎゃあああ」
横から来た車いすの女にひかれて倒れた…
「あう、すいません・・・」
オロオロする車いすの女を俺は持ち上げて走る。
「後ろが詰まってるんだ、ババアは諦めろ。今は俺たちが会社に着くことだけを考えるんだ!」
そのまま一気に走り去り、離れたところで振り返ると、まるでゾンビに襲われているかのように、躓いた人たちにのしかかられていた。
ふう、あぶなかった。
みると車いすの女はまだアワアワしている。
しょうがねえ。
「おちつけ、今日は俺が階段を降ろしてやるよ。今日の勝負はお預けだ。」
そういって下した車いすを押してやった。
車いすの女は嬉しそうに俺を見る。
「やっぱりあんたも勝負のつもりだったんだ。」
「当然だ、お前に勝つのが俺の朝の日課だ。」
そう言いながら階段に来たので、車いすごと持ち上げて階段をおりだす。
「あっ。…ありがとう。」
「気にするな、俺の敵を倒してくれたお礼だ。」
そこに妹2人も走ってくる。
「あ、兄さん。今日は休戦なんだね。だったら手伝うよ。あのおばさんを倒してくれたお礼も込めて。」
車いすの女は苦笑いをする。
「よっぽどひどい敵だったのね。」
「ああ、あのおばちゃん、ぜったい妹の事をイケメン男子だと思ってやがるよ。キモイ。」
「そうなんだ、妹さんは二人とも可愛いのに男性に勘違いとか失礼だよね。」
そこで階段が終わったので下に降ろす。
そして俺は走り出した。
「わはは油断したな!休戦といったな、あれは嘘だ!」
「ちょ、卑怯じゃない!」
関係ないね。
おれは電車に飛び乗る。
みると下の妹の初穂も俺と一緒に飛び乗っていた。
さすがマイシスター。
そこでいきなりローキックをかまされた。
ドス
「痛い!お兄ちゃんになにすんじゃい。」
「蹴るために追いついたんだよ!この卑怯者!」
まあ、おばちゃんと車いすの女に勝つという快挙をしたので、初穂の蹴りなぞどうでもいいがな。
わっはっはっは
どす!
どす!
どす!
どす!
うお、痛いって!やめろこのやろう!無言で蹴り続けるな!
ドスの利いた妹の声が車内に響く。
「お兄ちゃん、ごめんなさいは!」
「ご、ごめんなさい。」
ちくしょう、俺悪くないもん。