マドモアゼルの誘惑
人物紹介
豪徳寺高志:俺。24歳。普通のリーマン
豪徳寺瑞穂:20歳、171cmでスポーツが得意な妹。
豪徳寺初穂:150cmと小柄だが、茶髪にして現代女子高生になろうと頑張っている妹。17歳。
なんでみんな朝から電車に乗るんだよ。
混んで大変じゃないか。
乗るな!俺と妹達以外の奴は朝から電車に乗るな!
2人の妹は、今日も遠慮なく俺にスマホをぶつけてくる。
まあいいよ妹だから。
そう、妹達達なら構わない。
だが今、後ろから俺の背中をスマホで突いてきやがるヤツ!
お前はダメだ。
ふっ、だが慌てるな俺。
女子高生様がスマホで突いてきている可能があるから、いきなり睨むのはヤバイ。
まずは冷静になろう。
もしも女子高生様だったら、むしろ妹達よりも優先的に俺を突く権利を与えるしな。
振り返る。
目があった。
凄い化粧をしたおばさんだった。
おばさんは『なにコイツ、ウザイ。なに私を見ているの?』みたいな顔しやがった。
言葉には出さなかったが、間違いなくそう思っていやがる目をしている。
殺す。
好きでおばさんを見ているんじゃねえよ。
てめえが、背中かからアプローチしかけてきてるから見たんだろうが。
見られたくなかったら、俺の清い体に触れるんじゃねえ。
乗り換えで電車を降りる時に天罰を食らわせてやるぜ。
もういちど睨む。
目が合うなり、なぜか向こうがお怒りだした。
「ちらちら見ないでよ、いやらしい。」
「ざっけんな!だったら背中から俺を突つくな、くそババア!」
思わず叫んでしまった。
しかし後悔はない。
叫ぶと当時に下の妹の初穂がスマホの角で殴ってきた。
ゴツン
「お兄ちゃん、恥ずかしいから叫ばないでよ!バカじゃないの。」
「だって…、俺が後ろから突かれてたのに文句言われるとか不条理だろ…。」
デカい妹の瑞穂もあきれ顔だ。
「兄さんは女子高生に背中突かれたら喜ぶんだから、こちらのご婦人が突いたっていいじゃないか。」
そういうと「兄がすいませんでした、マドモアゼル」とか謝りやがった。
ふざけるな、悪いのは向こうだろう。
おいおい、おばさん、なんで乙女みたいな顔でうちの妹を見ているんだよ。
イケメンに見えるけど、これ女だからな。
そうこうしているうちに、乗換駅に着いた。
よっしゃ、妹達がうるさいから社内では我慢したが、電車降りたらギタンギタンにしてやんよ。
プシュー
ドアが開いた。
ひゃっはー、先に降りて待ち構えてやる。
そしておばさんに説教だ。
勢い良く飛び出す俺。
その瞬間、何かが俺にぶつかった。
それは20代前半で髪が長い女性。
ただし車いすに乗っている。
またお前か!痛ってえなこのアマ。
奴の目が『ふふん、お先に失礼。うすノロさん。』と言っていた。
ムキー
今日も倒してやる
通路に向けて走り出す俺。
しかし見事なコース取りで、俺に先を譲らない車いすの女。
負けるか!
その日、会社に着いてから思い出した。
あ、おばさんに説教し忘れた。