初穂VSイケメン少年
人物紹介
豪徳寺高志:俺、24歳。普通のリーマン。誰の挑戦でも受ける!ただし姉ちゃんの挑戦からは逃げる!
豪徳寺穂波:27歳、豪徳寺家のボス。豪徳寺家最強でありその言葉がルール。逆らえば命はない。
豪徳寺瑞穂:20歳、171cmでスポーツが得意な妹。兄には気安く接するが姉の前では正座になる。
豪徳寺初穂:150cmと小柄だが、ローキックは長女から習った本格派。最近膝蹴りも習った。
本田博則:名門の青蘭高校の生徒。次期生徒会長と目されている優等生。
清楚系女子高生様:八竹美緒、青蘭高校の2年生。豪徳寺家は3兄妹だと思っている。
金曜日の朝、いつものように妹達と電車に乗る。
次女の瑞穂は大学に入り、俺と同じくらいデカくなりやがった。俺の肩をスマホ置きに使っていやがる。
三女の初穂は150cmと小柄なので、俺の脇腹でスマホを固定して使っている。
あばらがグリグリされて地味に痛い。
しかし!痛いとか言うと兄としての威厳が落ちる気がするので我慢する。
俺がこの二人を育てたと自負している。
だから威厳のために我慢だ。
だが・・・痛い。
ちょっと身をよじって、スマホをあばらの微妙に痛い位置から逃がそうとする。
なのに初穂は、上手に俺が身をよじって逃がすのに合わせてスマホの位置を調整しやっがった。
まさかと思うけど・・・
こいつ、俺のアバラの隙間にスマホを突っ込むことで固定しているのか?
そりゃスマホは固定されるかもしれないが、兄は滅茶苦茶痛いんだっつうの。
俺が苦しんで微妙にうねうねしていると、後ろからやけに賢そうな少年の声がした。
「あ、あの、少しよろしいでしょうか?」
見ると、名門高校の制服を着た少年だ。
見るからに賢しこくて、礼儀正しそうだ。
そして、草食系の美少年といえる顔立ち。
こんな少年が何の用だ?
見ると、少年は初穂の方を見ている。
「何?いまLINEの返事で忙しいんだけど。」
初穂おおおおお!
賢げな少年に、その態度はないだろう!
だが、そんな会話をしていると、金曜にだけ会う女子高生様が不思議そうに俺の横に移動してきた。
「お兄さん、本田君と知り合いなんですか?」
「え、女子高生様はこの少年と知り合いなの?」
「ええ、同じ学校ですから。」
確かにいつもの女子高生様も名門の制服だよな。
女子高生様の登場に、少年は滅茶苦茶動揺した。
「や、八竹さん!なんでここに。いつもはもっと早い電車に乗っているのでは?」
「なんで本田君が私の通学電車の時間を把握しているのかは知らないけど、金曜だけは2本遅く乗るの。それでお兄さんに何か用なの?」
すると少年は動揺しながら、手に持っていた手紙のようなものをそっと隠そうとした。
お!なにか訳ありの予感!
俺は素早く少年が隠そうとした手紙を奪い去る。
「おっと、これは預からせてもらうぜ!」
「あ、何をするんですか!」
慌てる少年を無視して俺は封筒を観察する。
少し可愛らしい封筒。
はは~ん、わかったぞ。
「少年、これを俺の妹の初穂に渡すつもりだったな。」
少年は動揺した顔で挙動不審になる。
わかるぞ、一対一で接したいのに、周りから口を出されたら困るよな。
だが君たちはまだ若い。
まして君は名門校だ。
早まってはいけない。
「これは決闘状だろう。だめだぞ、何があったかは知らないが君のような頭脳派が、こんな乱暴女に決闘を申し込んでは。こういっては何だが初穂は強い。今の君ではかなわないだろう。」
隣で清楚系女子高生様が『ブフッ!』と嬉しそうに噴き出している。
瑞穂はクワッと俺をにらみ、初穂は驚いた顔をした後、なぜかニヤニヤしはじめた。
少年は俺の言葉に慌てた。
「ちがいます!決闘なんかじゃありません。」
初穂は嬉しそうに俺をつつく。
「決闘状じゃないかどうか、ちょっと調べてよお兄ちゃん。」
珍しく瑞穂が初穂に声を荒げる。おいおい電車の中で声を荒げるなよ。
「初穂!バカなこと言わないで、黙って受け取って人のいないところで読むんだ!兄さんを巻き込んだらまたバカなことしでかすぞ。この人は馬鹿なんだから!」
でも女子高生様は、すっと初穂の横に移動する。
「ですが、どのみちお兄さんはここで引いても納得するタイプではないと思うんです。ここは声に出して読んでもらって皆で検証しましょう。」
なぜか女子高生様が、すっごく小悪魔みたいな笑顔をしている。
まあこの女子高生様がいたずらっぽい笑顔をするのはいつもの事か。
「よし、読もう。」
「やめてください!お願いします、やめてください!」
少年が絶叫したせいで、電車の中の人たちの耳がすべてこちらに向いているのを感じる。
みんな気になるか?
じゃあ聞かせてやろう、男の決闘状の内容を。
俺は封筒から手紙を出す。
少年が手紙を俺から奪おうとしたが、初穂と女子高生様が謎の連携で少年を押さえ込んだ。
「こほん、では読むぞ。えー、『突然のお手紙失礼いたします。私は本田博則といいます。青蘭高校の二年生です。いつも電車でお見かけしておりました。兄妹で楽しそうに通学する姿をいつの間にか目で追うようになっておりました。もしよろしければ明日の土曜に大井町でお会いしてもらえないでしょうか。お返事はメールかLINEでいただけますと幸いです』か。なるほどな。」
少年は顔を押さえて、真っ赤になってのけぞっている。
なぜかカツラのサラリーマンが「辛いだろうが、いつかいい思い出になるはずだ。強く生きろよ」と少年を励ましている。
社内の乗客たちも、微妙な表情で目をそらしていた。
まあ、連中の気持ちもわからなくもない。
「つまり、俺にローキックをかます初穂の強さに惹かれて決闘を申し込んだんだな。だがこの決闘状は気迫が足りないな。せめて『必ずぶったおす』みたいなセリフが欲しいところだ。」
「「「「「ええええええ」」」」」
車内から一斉に驚きの声が上がる。
その声に俺のほうがビクッとしてしまったぞ。
女子高生様だけは『ブフっ、さすがお兄さん、素晴らしい』と吹き出しながら喜んでいたが。
そこで少年は真っ赤な顔を上げて、何か吹っ切れた感じの顔になっていた。
「そ、そうですよ。決闘状ですよ!」
言い終わると、なぜか少年は泣いていた。
よくわからないけど、頑張れよ少年。
すると初穂はいきなり少年にローキックを放った。
スドム!
「ぐはっ!」
あまりの激痛に膝をつく少年。
そうだろう、初穂の蹴りは重いだろう。
なんたってプロの女子格闘家直伝の蹴りだからな。
こう見えて初穂は、戦闘一族・豪徳寺家の一員。
優等生タイプの少年では歯が立たないのは当然だ。
だが恐ろしいことに、これほどの戦闘力のある初穂でも、豪徳寺四天王最弱なのだ。
とはいえ女子に負けるとか辛いだろうに。
だからプライドが傷つかないように、俺はやめておけといったんだよ。
初穂は膝をつく少年を見下ろして仁王立ち。
「その程度の蹴りで膝をつくような男は願い下げだよ。私はお兄ちゃんより強くないと付き合わないから。」
すると少年は決意した表情で、カツラのサラリーマンい支えられながら立ち上がる。
「では、僕があなたのお兄さんよりも強くなったら付き合ってくれますか?」
付き合う?
ああ、決闘に付き合うってことね。
「そんな根性があるなら構わないよ。そうそう、もしも鍛えるなら五反田にある総合格闘技のジムがおすすめだよ。W-1グランプリ、女子世界チャンピョンのオーガ・ホナミがやってるジムね。」
「わかりました・・・。ではクリスマスまでには一人前の男になってきます。」
男の子だねー。
挫折を乗り越えさらに強くなるか。
昔の自分を思い出すよ。
そこで乗り換えの駅に着いた。
少年は初穂のローキックのせいで足を引きずっていたが、清楚系女子高生様が肩を貸してあげて歩き出す。
羨ましい。
俺にもあんな青春が欲しかった。
電車を乗り換えると、俺は初穂に聞いてみた。
「なんでちゃんと決闘を受けなかったんだ」
すると呆れた表情をされてしまった。
「まだ決闘の申し込みだと思ってたの?まあいいかお兄ちゃんだし。あんな賢そうで細いイケメンは好みじゃないだけだよ。」
初穂の声が聞こえる位置にいた少年は、がっくり肩を落とす。
でも清楚系女子高生様は逆に嬉しそうに「ブランコですね、わかります」と微笑んだ。
土曜日。
俺が五反田のジムに汗を流しに行くと、あの優等生少年が本当に入会に来ていて驚いた。
いいねー、やっぱ思春期に格闘技は基本だよな。
カツラのサラリーマン豆知識。向山義永、努力の人であり、それなりに出世している。某大企業の専務。『仏の向山』と呼ばれ、事業部長や部長たちからの人望も厚い。




