三件目 悪霊に憑りつかれた青年の場合 その1
出来ましたので投稿します。
今回はギャグ要素とシリアス要素が半分ずつぐらい入っているかな?
そんなわけで楽しんで頂ければ幸いです。
それではどうぞ!
俺は今日、社長室で大学の講義で出された宿題をこなしていた。かなりの量で、机の上は宿題で出されたプリントの山で埋まっている。そして俺もその中に埋まっていた。そして埋まりながら宿題をこなしている。
いつもいつも思うんだが、俺の通っている大学、宿題が多くない?そう思って同じように通っている加原に家のリビングで聞くと「そうかな?そんなに出ていないと思うんだけど・・・」と言われた。確かに、加原はそんなに宿題が大変そうには見えない。
実は高校三年のときの事件以降、未だに俺の家に住んでいる加原は毎日忙しそうには見えなかった。ちなみに、俺は住むことを強制はしていないからな。加原がこのままどうしても一緒に住んで俺の世話をしたいと言い出したのだ。恩返しをしたいのだなと俺は納得して、許可を出した。
俺が宿題を多いと思っているだけかと思ったのだが、加原が興味本位で俺の受けている講義が何かを聞いて来た。それに答えると驚いた表情をしたのが印象深い。どうやら俺は通っている大学でも有名な講義を受けているらしかった。有名と言ってもいい方で有名なわけではない。勿論、悪い方でだ。この講義を担当している教授は物理的に期限内に宿題提出は無理だと学生だけでなく、他の教授に言わせるほど出しているらしい。
通りで俺以外に授業に出ている人がいないと思ったら・・・。最初はいたんだよ?でも、数回授業に出ていたら俺以外の全員が来なくなったのだ。確かに、この宿題の量は常人では無理だろう。普通の大学生に出すようなものではない。
しかし、俺は無理だと周りから言われている期限内に宿題を提出することを難なくこなしているのだ。その宿題を出している教授は大喜び。学生たちや教授たちはありえない物を見るような目で俺を見ていたのだ。通りであの講義を受けだしてから周りが変な目で見てくると思ったら、そんな理由だったのかよ。
そんな無茶な宿題を出す教授は未だに俺に大量の宿題を出していた。宿題を難なくこなしてくるのが嬉しかったのだろう。ただ、最近は勧誘も増えたな。教授たちが自分の研究を手伝ってみないかと言い出しているのだ。今まで変な目で見て来たくせに手のひらを返してきたのだ。まあ、仕事もあるし、そもそも大体の研究の最終到着点をすでに知ってしまっているからな。手伝いとかではなく、むしろ教授たちが俺のお手伝いさんになってしまうことだろう。
そんなことを考えながらスパスパと宿題を片付けているとアルダミュスがノックをした後、入って来た。今回はちゃんとノックしてくれたな。まあ、俺の返答を待たずにすぐに開けたけど。
「お客様が来たわよ」
「おお。ちょっと待って。これ解けたらすぐに行くから」
今やっている課題は理数関係の宿題だ。あの教授、自分の研究分野じゃないのになんでこんな宿題を出してくるかね?
「答えなんて解っているくせに」
「まあ、せっかく出してくれた宿題なんだ。ちゃんとやってあげたいじゃないか」
「お客様を思いやる方が大事よ。その宿題と教授のことは一旦置いておきなさい」
「分かったよ。それで?どこ?」
「相談所に直接来ているわ。困った人用のドアから来ているから」
「分かった。頼み事じゃなくて相談・解決の方ね」
そう言って俺は一階へと降りる。
「アレか?」
「アレね」
俺達がそう言うアレとは一番から十番まである窓口の一つである七番窓口に座っている人であった。
「ものすごい分かりやすいわ」
「やっぱりそう思うわよね?」
だって、見ただけでどんな悩み事かすぐに分かったんだもの。
――――――その相談者の青年の肩に見るからに青白い肌で黒髪ストレートの白い服を来た女性がへばりついていたら誰だって分かるよ。ホラー系の相談だってことは。
実物を見るのは初めてだな。すごい。本当に目も血走っていて思いっきり見開いている。なのに髪に隠れて顔がよく見えない。あれ、どうなっているんだ?
「ここに加原がいたら怖がりそうだな」
俺のように中学のことから色々あったわけではなく、高校三年の春にこちら側へと足を踏み込んだ彼女なら今回のアレは怖いだろう。俺の場合、異世界でアンデッドとかゴーストとか呪いとか色々体験したり、見聞きしてきたからな。今更アレくらいで怯んだりはしない。
っていうか、物凄い上手い具合に青年の肩にぶら下がっているけど、あれってどうなってんの?あれをするには下半身がない場合じゃないと出来ないじゃん。
って思ってよ~く見れば、足を折りたたんで足が床に着かないように必死にぶら下がっている。
まあ、そうなっているのも当たり前だ。この相談所は幽霊も実体化する。まあ、要するに疑似的に肉体を得るのだ。だからあんなにはっきりと見えるし、普段は重さなんてないから浮いていられたけど、今は疑似的にとはいえ重さがあるので必死なのだ。頑なに足を地面に着かないようにしている。そんな姿を見ていてついつい微笑ましく思ってしまう。
「ここでぼんやりしていないでさっさと行ってきなさいよ。流石にあれは私たちの対処出来る範囲外よ」
まあ、そもそもこの相談所って俺がいることを前提とした仕事だからな。具体的な解決は俺がやらなくちゃいけない。相談までなら他のスタッフとかにも出来るんだけどね。
「分かったよ。それじゃ、いってきますかね」
そう言って俺は七番窓口に向かい、青年と幽霊の前に座る。
「ようこそ、アトミナス相談所へ。今回はどのようなご相談でしょうか?」
俺はにこやかな顔で青年へと話しかける。今回は地球から来た人の相談だからな。日本人だし、ここは日本人の営業スマイルだ。そもそも、こんな幽霊、日本以外にいるのか?この明らかにTHE・日本の幽霊さんが「Kill you. f○cking」とか言いながら襲って来たら逆に見てみたいわ。そこまでイマジンをブレイクしたら他の悪霊とかに集団リンチに遭いそうだけど。
「ここ・・・何でも解決相談所?」
「ええ。巷ではそう言われておりますね」
「そ、そうなんですか!」
かなり嬉しそうにする青年。
「お、俺、渋谷 博樹って言います。実は相談したいことがあるんです。嘘って思われるかもしれないですけど、俺に憑りついている幽霊について」
まあ、嘘とは全く思わないよ。むしろ、ここまで見事に姿を現しているこの幽霊の存在に気付いていない君の方が信じられないわ。疑似的にとはいえ、実体化しているんだ。重さも当然ある。しかも、浮くことの出来なくなったこの幽霊は現在、マヌケな感じでこの青年にぶら下がっているのだ。何故分からないと声を高らかにして言いたい。
「ええ。嘘とは決して思いません。勿論、相談に乗ります。それでどうしますか?相談コースと解決コースがありますが」
「その二つのコースってどんなのなんですか?」
「簡単に言えば、相談コースがアドバイスを言ったり、解決方法だけ教えて、後は自分で解決してもらうという内容になっています。解決コースはお客様の抱えている悩みまでこちらで解決するという内容になっています。相談コースは一万円。解決コースは十万円になっています」
「た、高い。でも、一回で相談、もしくは解決してくれるんですよね?」
「ええ。勿論です」
「バイトを増やすか・・・」
「現在、手元にお金がない場合は後程、請求させていただきますので」
「それは助かります」
まあ、本人も気づかないうちに銀行や家の貯金から請求分だけ頂くのだけどね。
「それではどうしますか?」
「解決コースでお願いします。自分で解決しようとして失敗したら下手したら死んでしまうかもしれないので。それに一人だと怖いし・・・」
なんか、物凄い形相でこっちを幽霊さんが見ていらっしゃるんだけども!まあ、自分をどうにかしようとしている人間だ。普通は邪魔者だと判断するわな。
「それではまずはお話をお聞きしましょう」
「はい」
そうして彼は話し始めた。幽霊は俺を依然として見開いた目で睨んできているけどね。
「あれは俺が友人たちと一緒に夜、居酒屋で酒を飲んだ後のことでした―――――――」
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連続投稿なので、続きがあります。そちらもお読みください。