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一件目 女子高生の借金の場合 その3

三話目です!



 流石に公園で寝かせるわけにもいかない。俺は急いでその加原がいる公園まで向かう。


「ここだな」


 かなりのスピードで走り、到着した。魔法とかで瞬間移動してもいいんだけど、目撃者出てしまうと面倒なことになるからな。そうなった場合、記憶削除の魔法を使わなきゃいけない。でも、使ってしまうとものすごい後味が悪い。だってこっちの事情で人の記憶を都合が悪いからって消すんだ。後味が悪いに決まっている。


「どこだ?」


 遠視で見たときにはベンチに座っていたんだが、今はいない。移動したのか?


 あちこち確認したが、公園にはいないようだ。仕方がないのでもう一度遠視で確認をする。


「どこにいるんだ?」


 首をあちこちに降りながら探す。傍から見たらものすごい奇妙な光景かもしれない。夜の公園で首をブンブン振っている青年。・・・うん、確実にお巡りさんこっちですコースだね。


「・・・・・見つけた!」


 少しの間、首をブンブン振ってようやく見つけた。可能性はあったけど、そういうことか。加原は借金取りたちに連れて行かれていた。あのゲスな顔からしてどうせエロいことでも要求しようとしているんだろう。救いようがない。


「さて、見つかったことだし・・・・っと」


 その場から俺は跳躍する。跳んでいる最中、自分を透明の魔法で姿を消す。そしてそのまま空中で停止する。飛行の魔法だ。その停止した状況からの急なスタート。かなりのスピードである。結果、すぐに追いついた。


「追いついた」


 人気のない所に降り、透明の魔法を解除。そして加原と合流する。強面の黒服と何か話しているようだ。結構声もデカい。ちょっと離れているここからでも聞こえる。


「おい!さっさと来い!家のないお前に居場所を提供してやるって言っているんだよ!」


「い、嫌です!お、お金はちゃんと払いますから離してください!」


「そんなに簡単に払えるわけないだろうが!二億だぞ、二億!高校生が簡単に払えるわけねぇだろうが!お前が逃げないようにするためにも連れて行く必要があんだよ!お前の親は逃げたからな!」


「!」


 親のことを言われて抵抗をやめてしまう加原。まあ、そう言われるとショックだよな。自分の親がしでかしたことだもんな。信じていた親に裏切られ、周りからは馬鹿にされる。耐えられるわけがない。


「・・・・・うぅっ」


「それじゃあ、俺が部屋を提供してやるよ。監視もしておいてやる」


 俺はそう言って声をかける。これ以上は見ていられない。そう判断した俺は早速声をかけたのだ。


「あぁっ?誰だ、てめぇ?こっちは大事なお話中なんだよ。餓鬼はさっさと家に帰って寝てろや!」


「わるいわるい。俺、こいつの連れでな。よく分からないんだが、抵抗しているのに連れて行かれそうに見えたから声をかけたんだわ」


「てめぇには関係のないことだ!いいから帰れ!さもないと・・・」


「さもないと?」


「この場でミンチにすっぞ?」


 ドスノ利いた声でそう言ってくる。加原もビクッとなる。まあ、普通は怖いよな。まあでも、俺は普通ではないので、この程度は怖くもなんともない。


「それじゃあ、やってもらおうかな?・・・・・出来るものなら」


「上等だぁ!覚悟しやがれ!」


「や、やめてぇ!」


 加原が静止の言葉を叫ぶもそんなんで止まるはずもない。強面の黒服は俺に殴りかかった。


「・・・・・?」


「ん?どうした?殴らないのか?」


「え?」


 殴ろうとした黒服が急に動きを止める。その様子に加原は訳が分からないといった表情をする。


「・・・!」


「ハハハッ。どうしたんだ?そんなに震えて」


 俺を見る黒服はブルブルと震えだしていた。そして青い顔で恐怖の表情をしている。まあ、大体のことは分かる。この黒服はまあまあ実力があるのだろう。人間の中では。でも、なまじ実力があるせいで俺の隠れた実力の一端を感じ取ってしまったのだろう。別に俺は実力を隠蔽とかはしていないからな。


「て、てめぇ、一体何者だ⁉こ、この感じ・・・。ただ者じゃねぇことだけは俺でも分かる・・・」


「まあ、その答えは教えてやるわけにもいかないんでね。少し・・・・眠ってろ」


 最後の言葉はものすごい冷淡な声色で言い放つ。


「ひぃっ」


 そして背後に回って首トンをする。気の失わせ方もしっかりと武神に叩き込まれたからな。この程度は何でもない。


「はい、これで終了」


「え?ええっ?」


 今、起こったことがあり得ないといった表情で困惑する加原。


「まあ、俺がものすごい強いって認識しておけばいいよ」


「そ、そうなの?」


「ああ。この世で一番強い人に教えて貰ったからな」


「す、すごい」


「すごいのはいいんだが、加原」


「な、なに?」


「とりあえず俺の家に来い」


「ふぇっ⁉」


「流石にこのまま放置も出来ん。この男は放置するけども」


 ついでに黒服には記憶削除の魔法をかけておく。これで今日のことはスッポリと記憶から抜け落ちていることだろう。


「俺の親にはなんて言えばいいかとかは考えなくてもいい。今は一人暮らしだからな」


 まあ、流石に所有する財産が財産だからな。これくらいは簡単なことだ。それに俺はいつも急に消えたりしているからな。家族と一緒に暮らしていると色々と面倒なことが起こる。そのたびに記憶削除の魔法を使うのも嫌だ。自分の肉親に記憶削除を使うなど、嫌すぎる。


「ひ、一人暮らしの梶田君の家にい、いくの?」


「ああ。気にしなくていい。公園で寝ているクラスメイトを放置も出来んからな。それに事情が事情だ。加原の友達に泊めてもらうことも出来ないだろう」


 加原がいることで迷惑が掛かる可能性があるからな。それなら俺のところにいた方がましだ。


「で、でも」


「大丈夫だ。俺はそこのゲスとは違う。お前に何もしないよ」


 そう言って頭を撫でる。そう言ったからか、はたまた頭を撫でたからか、安堵する加原。


「でも、ただ泊めるのもあれだしなぁ」


「⁉」


 俺の言葉にビクッとなる加原。なんだかネコみたいだな、仕草が。


「俺の家にいる間は家事をやってもらおうかな?」


「か、家事?そ、それならいいよ」


「そうか。それじゃあ頼む」


 そう言ってニカッと笑う。自炊すんのも大変だからな。やってくれる人がいると助かる。


「それじゃあ、行こうか。こいつの仲間がいつやってくるとも限らないからな」


「うん」


 俺は加原を連れ立って家へと向かった。流石に空を飛んだり、ものすごいハイスピードで走る訳にもいかないからな。ゆっくりと徒歩での帰還だ。




・・・




 家に戻ると加原が俺の家を見上げていた。


「どうした?」


「梶田君の家ってもしかしてお金持ち?」


「いや、そう言う訳ではないな」


 俺の家がお金持ちなんじゃなくて俺がお金持ちなんだ。


 加原はその俺の言葉を聞いても信じられないだろう。それだけ俺の家は予想外だったのだろう。普通、高校生の一人暮らしだ。そんなにお金が出せるはずがない。精々、1K。良くても1DKだろう。でも、俺の家はそうじゃない。明らかにお金持ちが住んでいそうな、俺達が通っている学校の周辺では他に比べるものが無い程の高層マンションだ。これには普通の一般家庭の加原には驚きだろう。ちなみにこのマンションのワンフロア全てが俺の部屋です。


 そう。俺の部屋が一室だけかと思っていた加原にとってはこれも驚き。最上階の全ての部屋が俺の家なのだ。ビックリするに決まっているか。エレベーターから降りたら扉が一つしかないんだもんな。


「いつまでも呆けてても仕方ないぞ。さっさと入る」


 俺は言葉も出ないといった感じの加原の背中を押して部屋へと入る。元々ワンフロアに三部屋しかないこのマンションである。それだけ一部屋がデカいんだけど。と言う訳で、俺の部屋は10LDKである。何だろうか。この言葉だけだとセレブ感の漂う感じは。


 リビングに座った加原はあちこちを見回す。女子の部屋に初めて入った男子みたいな感じだな、今の加原は。


「す、すごいんだね。梶田君って」


「まあ、色々とあったからな」


 神様に鍛えられたリ、異世界に飛ばされて世界を何回も救ったりと。自分で考えてもものすごいあり得なさ加減。おかしい。どこで踏み外した、俺の人生。まあ、こうならなかったら死んでいたんだが。


「加原は部屋の一つを使ってくれたらいい。それとこれは買い物用のお金な。食材とかお前の服とかも買っておけよ」


 財布を投げ渡す。加原は今、制服しか持っていない状態だ。全部売っているようだからな。


「そ、そんなにしてもらっていいの?」


「構わない。これから加原は俺の部下だからな。部下にはちゃんとした生活をしてもらわないと。それと服の値段とかは気にしなくてもいいからな。その中に入っているカードを使えばいい」


「でも、こんな大事な物、私に預けてもいいの?今の私って借金を抱えている状態なんだよ?」


「お前がした借金じゃないだろ。だから気にすんな」


「ありがとう」


「お礼はいいよ。それより、風呂に入って来い。どうせここのところ、水浴びくらいしかしてないんだろう?風呂はそこを廊下を真っ直ぐ行ったところにあるから」


 過去視で見れば分かる。勿論、覗きはしない。裸が見えないくらい遠くから見ていたからな。見ようと思えばそんな遠くからでも見ることは出来るけどな。視力もものすごい上がってしまっているし。まあ、やらないけど。


「あ、ありがとう。入らしてもらうね」


 顔を赤くして風呂に向かう加原。まあ、女子相手に言う話じゃないからな。さて、加原は保護したことだし、これからどうするかな。まあ、やることは決まっているんだがな。借金取り共の会社を潰す。それと加原の両親に報告だ。報告と言っても借金は無くなりましたっていう報告ではない。加原は俺が貰っていきますという報告だ。俺の許で働くことになる加原だ。これからまあまあいい給料をもらうことになる。それを充てにされたくないからな。一度あることは何度でもある。一度こういうことをやってしまっているんだ。二度目が必ずある。そんな親の許に加原を置くわけにはいかない。加原の住む所はこれから、この問題が解決してから考えればいい。とにかく、加原の心が壊れる前にさっさと解決するかな。



 これが俺の何でも解決相談所。アトミナス相談所の最初の依頼にして、最初の従業員を獲得した依頼でもある。




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