三件目 悪霊に憑りつかれた青年の場合 その2
二話目です。
「俺と友人は完全に酔っていました」
渋谷さんは大学三年生で、その日、友人たちと合コンをしていたらしい。
「盛り上がった合コンで気分が良くなり、調子に乗った俺は近くにある心霊スポットに行こうと言い出していました」
それに他の酔ったメンバーも賛成したらしい。若者とは何とも無謀なことをするものだ。俺も一応二十歳なんだけどね・・・。
「近くにある心霊スポットは近隣でも有名な場所で、とにかく色々なことが起こると有名でした」
心霊写真、心霊現象、幽霊の姿を見る、声が聞こえる、etc.
そんな場所だったらしい。そこに渋谷さんと友人の二人、それに合コンに来ていた女性陣三人の合計六人で肝試しをしに訪れたそうだ。
「その肝試し自体は特に何も起こることもなく、こんなのもかと拍子抜けするほどでした」
しかし、異変は次の日から始まったのだと言う。
「合コンに参加した友人の一人が体調を崩して寝込んだんです」
それだけなら疲れたのだろう、で終わる話だ。しかし、ここで終わらなかった。渋谷さんと合コンに参加したもう一人の友人が心配してお見舞いに行ったと言う。前日の肝試しのことが思い浮かんだのだ。
考え過ぎだと思いながらも、もしものことを考えて行ったのだと言う。
そして寝込んだ友人の家に行った。
「でも、チャイムを鳴らしても出ないんです。その友人は実家暮らしで、家には少なくともいつも誰かがいたのに」
家族全員が出かけているのかもしれない。そうも思ったのだが、寝込んでいるその友人を置いて行くだろうか?
「そう思って確認の意味も込めて家の扉を開けてみたんです。鍵が掛かっていたら出かけているなと判断も出来ますから」
だが、開いたのだそうだ。そして普段からその友人の家に遊びに行っていたこともあり、少し遠慮しながらも家の中へと入ったらしい。
「寝込んでいるって言ってたし、自分の部屋にいるんだろうと思って二階にある部屋に向かったんです」
だが、少し不可解なことに気が付いたそうだ。何故か家の中が暗かったらしいのだ。窓はカーテンを閉めているわけでもないので光は入ってくるはずだし、外も晴れていた。急に雨も降り出したりしていない。どういうことだろうと二人は思ったらしい。
「しかも、だんだん寒くなって来たんです。まだ春とはいえ、大分暖かくなってきていましたし、その日も暖かくて、むしろ暑いと感じることすらありました」
それが何故かいきなり肌寒くなり出したと言う。外が急に寒くなったのならまだ説明が出来る。だが、渋谷さんたちがいたのは家の中。そんなに急に寒くなるはずがない。
「昨日のこともあったし、少し怖いな~って思いながらも勝手知ったる友人の家。友人の部屋にその後はすぐに向かいました。でも、そこに友人はいなくて」
一応、部屋をノックはしたらしい。でも、返事がなかったので悪いとは思いながらも許可なく入ったのだと言う。
「寝ているのだろうと思っての判断でした。でも・・・」
そこに友人はいなかった。まさにもぬけの殻。
「だんだん怖くなってきた俺ともう一人の友人は家を出ることにしました」
急いで部屋を出て、一階へと降りた。しかし、そのまま外に出ようとしたところで後ろから声を掛けられたそうだ。
「女性の声で『どこに行くの?』そう確かに聞こえたんです」
バッと勢いよく振り向いたがそこには誰もいなかった。流石に本気で怖くなったので逃げるように家から出たそうだ。
「家から出ると最初に入ったはずの友人の家の外とは違う場所に出ていました・・・」
愕然とした二人。でも、そこにずっといるわけにはいかないと自分たちが今いる場所をスマフォで確認して帰ろうと行動を開始した。
「そこでさっきまでいた家のあった場所。つまり後ろを見たんです」
しかし、勿論のこと、友人の家は無く、少し古ぼけていて、人が住んでいるとは思えない廃墟がそこにはあったそうだ。
「怖くて怖くて仕方ありませんでした。そしてその場に呆然と立ち尽くしているとその廃墟の扉、俺達が出て来ただろう場所が勢いよく開けられたのです。そしてそこにいたのは白い服を着た黒髪ロングのストレートヘアの女性。髪がかなり長くて顔が完全に隠れていました」
まあ、見た目は分かるよ。だって君の肩に乗っかっている・・・っていうかぶら下がっているもの。怖い云々の前にこんなマヌケな悪霊見ていたら怖くもなんともないわ。
「そんな女性が走って俺達を追いかけて来たんです」
う、うん。話を続行ね。確かに怖いね。
「幸い、その時いた場所はスマフォで確認していたので逃げる方向は分かっていました。そして人がいる場所へと走り抜けました」
なんとか人通りの多い場所に出て、難を逃れたようだ。
「本来なら寝込んだ友人にもう一度連絡を入れるべきだったのですが、怖くて出来ませんでした」
まあな。また巻き込まれるんじゃないかと思ったら普通はヒヤヒヤモノだ。出来ないだろう。
「なのでその日は俺が一緒に寝込んだ友人の家に行ったもう一人の友人の家に泊まりました」
お互いに一人暮らしらしい。そんなことがあった日は一人で寝るのは無理だよな。
「次の日。大学に出ると寝込んだ友人が何食わぬ顔で講義に出ていたのです」
どういうことかと問い詰めたと言う。寝込んでいたんじゃないかと。しかし、友人は意味が分からないと言った表情で寝込んでなどいないと言った。昨日はただ単に寝坊したから自主休講しただけだと。
「俺は昨日、お前が寝込んだというから友人と一緒にお見舞いに行ったと言いました」
その時に寝込んでいると書かれたメッセージも見せた。友人は驚いていた。
「『出せるはずがない。だってこの時間はまだ俺、寝ていたんだから』と。友人は自分のスマフォを確認しました。そしてそこには確かにメッセージがありました」
怖くなったからこの話をするのはもうやめようと言い、考えるのを止めたそうだ。しかし、一緒にお見舞いに行ったもう一人の友人があることに気が付いたのだそうだ。
「俺達がいたのは友人の家ではなく、肝試しで行った心霊スポットだったんです」
その心霊スポットは古びている廃墟も有名で、そこに入ると女性の悪霊に憑りつかれて呪われると言われているらしく、二人は顔を真っ青にして震えた。なんせ、気付いていなかったとはいえ、そこに入ってしまっていたのだから。
「それから恐怖の体験の連続でした」
鏡にはその女性が写るし、ふと目線を家のベッドの下や扉の隙間に向けると女性がこちらを覗いていたという。もう一人の友人も同じだという。
でも、あなたの背中のソレはそんな恐ろしい存在には見えないんですが・・・。
ぶら下がることに疲れて来たのか、ついにプライドを捨てて床に足を付け出した。それどころか渋谷さんに寄りかかり、『まだ?』とでも言いたげな視線を向けて来ている。いや、見た目はまだ怖いんだよ?でも、それを全て帳消しにするその行動がな~。自分をどうにか出来るなんて思ってもいないのだろう。余裕じゃないか。
「そしてこのままホラー映画のように殺されてしまうのかと震えていた時に気が付けばここにいたんです」
本来は悩んでいる当人しか来ることが出来ないんだが、憑りついているためか、それとも日本の幽霊が思った以上に強力なのか、一緒にくっ付いて来てしまったということか。
「分かりました。解決しましょう」
「ほ、本当ですか⁉ありがとうございます!」
嬉しそうに喜ぶ渋谷さん。
「あ、あの。お金は払いますから友人の方もお願いできないでしょうか?」
「ああ。いいですよ。そのご友人が了承なさるなら」
「重ね重ね、ありがとうございます!」
「それでは準備をしますのであちらの控室でお待ちください」
勿論、護衛としてアルダミュスを付けておく。一人・・・というか、二人にしたら何するか分からないからな。監視は必要だ。あれでもアルダミュスはそこらの一般人より強い。勿論、戦闘がメインの高志とかには負けるけど、あれでも神たちが俺のサポートに遣わしたまさに神々の代行者。まあ、神々の代行者って割には俺が仕事し過ぎだけど。まあ、俺の始めた仕事だからしょうがないよ?でも、納得いかないこともあるじゃん?
神たちは自分たちが解決出来ない・・・というか解決することが出来ないことを俺に頼んでくる。神には世界に対してやっていいこととやってはいけないことの制限が他の生命体よりも格段に多い。だから、したくても出来ないのだ。そこで神に準じる力と知恵を持つ俺がこんなに忙しいということだ。
まあ、そんなことは一旦置いておいてっと。
「それじゃ、準備を始めるとするか」
そして俺は除霊の準備を始めるのだった。
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