契約の印
5月25日(水)の投稿となります。
拙作『貧乳眼鏡っ娘の俺が異世界で無双するようですよ!?』もよろしくお願いします。
5月19日(木)無事?に完結いたしました。
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もう一つ『笑わない少女は血薔薇と舞う』そちらもよろしければご覧いただけると幸いです。
こちらは20時更新となっております。
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二人がいる校門辺りが騒がしい。周りの女の子達が騒いでいる様だ。
「あれって八葉学園の制服よね?」
「リムジンなんて、やっぱりお金持ちなんだ」
などなど、ここは混乱を避けるためにも裏門から……
「あ、きたきた。空さーん!」
はい、気付かれましたー!
ニコニコと呑気に手を振る日向さんを無視する訳にもいかず、あたし達は二人の元へ。
うはぁ周りがさらに騒がしくなったよ。
洋子ちゃんはそんな視線に臆する事なく日向さんの元へ進んでいく。
……なんか怒ってない?
荒い足取りで進む洋子ちゃんの背中に阿修羅を見たような気がした。
「やあ。たしか中司さんだったかな?」
「先日はどうも。そちらの方は初めましてですね?」
まるで睨みつけるかのような視線にこたえた様子も見せず水都さんが挨拶する。
「ああ、二宮 水都だ。初めまして」
「空の友人の中司 洋子です」
洋子ちゃんの様子を見た日向さんは、場所を変えないかと提案してきて、あたし達は了承した。
リムジンの中、向かい合わせで座る。
備え付けのクーラーボックスからジュースを手渡しながら日向さんが口を開く。
「さて、中司さんはなにか言いたいようだね?」
洋子ちゃんは、時間が立って冷静になったのか言葉を選んでいるようだった。
やがて纏まったのか顔を上げ話始める。
「色々言いたい事はありますが、まず事情は聞きました。それを踏まえてお聞きします。空じゃないとダメなんですか?」
日向さんと水都さんは顔を見合わせた後、洋子ちゃんに向かってはっきりと否定した。
「無理だ。これは空さんしか出来ない事なんだ」
と、水都さん。
「僕達だって出来れば巻き込みたくないよ。だからこそギリギリまで空さんに伝えなかったんだ。でももうそんな事を言える状況じゃなくなってしまった」
日向さんは、沈鬱な表情で告げる。
「でも……」
洋子ちゃんがさらになにか言いかけるのを遮った。
「いいよ、洋子ちゃん。あたしは大丈夫!」
「空……」
あたしは洋子ちゃんに笑顔を見せて大丈夫だと言葉を重ねた。
「中司さん。なんの信頼もないだろうけど、僕達が必ず空さんを守る事を誓うよ」
「それは俺達がかつて交わした契約だしな」
そう言って二人は左手の甲を見せてくる。
そこには、複雑な紋様が淡い光を放っていた。
「この模様って……」
洋子ちゃんがなにかに気付いたようだ。
洋子ちゃんはあたしを見て続けた。
「空、気付いてる? あんたの左目を良く見ると同じ模様が見えるんだよ」
なんと!? 気付かなかった。
あたしの左目そんなのがあったのか……
「これが、かつて九神の姫と八葉八剣士が交わした契約の印だよ」
「姫を守る代わりに俺達に超常の力を与えてくれる」
なるほどー。
ギブアンドテイク的な?
「わかりました。それはいいでしょう。しかしっ! 空とキスした事の是非を問いたいっ!!」
ぎゃーーーー!! 忘れていたかった事をはっきり言ってしまったーーー!?
二人は困ったように頬を描いた後、お互い譲り合っていたが日向さんが仕方なく説明を引き受けたようだ。
やったのはお前だと水都さんに言われながらだったが。
「あーそれはね? 僕達が力を受ける時に、彼女とその、キスをする必要があるんだ…… すまない」
そう言って日向さんは謝るが、つまり毎回戦いのたびに誰かとキスする必要があると……
あたしは目の前が真っ暗になる感覚を覚えるのだった。