私の厨ニ病な友達
今回は、主人公以外の視点です。
魔界の荒野に吹く風は、粘液質の闇を含んでいるかのようだった。
纏わりつく風は少女を引き留めるかのようにその華奢な身体を撫でる。
その少女に対するは、魔族の男性。
男は、朱の民と呼ばれる元となった炎のような髪をしている。
彼は重々しい鎧に身を包み、腰には意匠の施された長剣を下げている。
その魔族は少女を、かつての仲間である朱の民最強の戦士である少女、アリアンロッドを見る。
まさに炎を体現したかのような赤毛は腰まで伸び、火燐眼と呼ばれる深紅の瞳は強気な彼女を引き立てている。
その背には華奢な少女には似つかわしくない大剣を背負っている。
二メートルを超えるその大剣はまるで生きているかのように淡い光を放っていた。
「どうしてもいくのか?」
男は、少女の幼なじみである魔族の男はそう尋ねる。
「ええ、グラシュカ。世話になったわね。」
「考え直す気はないのか?」
そう言ってはみたが彼女の気が変わることは無いだろうと思っていた。
「無いわ。私は…朱の民を許さない。」
グラシュカはその言葉に顔を歪める。どこで間違えたのか。
「出来ればあなたとは戦いたくないわ。」
グラシュカはゆっくりと首を横に振り否定する。
「アリアンロッド、俺は朱の民の長だ。それは出来ない。」
少女は諦めたかのような弱々しい笑みを浮かべると踵を返す。
「次は戦場で会いましょう。」
そう言ってアリアンロッドは荒野へ消えていく…
「っていう夢を見たんだけど!これは、あたしの封印された記憶が夢となって…」
そう言って嬉しそうに昨日見た夢とやらを報告してくるのは、私の親友である。
封印されているのに夢で見れるのか?とか、あんたの背丈でどうやって二メートルもの剣を振れるのか?などという意見は聞かないだろうから言わないことにしている。
さて、この未だにツッコミ所満載の夢について解説している女の子の話をしよう。
名前は陸海 空。
私達は現在中学二年、彼女は正に厨ニ病真っ盛りであった。
そんな厨ニな彼女の容姿から説明したいと思う。
身長はたしか152cmだったはず体重はちょっと痩せすぎじゃね?という位である。
ここまでは普通である。まあ胸は小学生のほうかあるんじゃね?とかは言わないが。
彼女が厨ニ病になったきっかけの大部分であろうその容姿だが、髪は肩までのストレート。その髪色は白銀。少々つり目気味な瞳の色は右が青、左が薄緑と左右で違う。
こういうのはオッドアイとか言うんだったか。
肌は白く透けるような色で儚げな印象を受ける。
どう見ても外国のお姫様といった容姿であるが、彼女自身は生まれも育ちも日本人なのだ。ただ、彼女の母方の祖母がフィンランド人だそうだ。
この様に厨ニ病な人間なら涎を垂らして羨むほどの容姿をした彼女はもちろん重度の厨ニ病を患っている。
「聞いてる?洋子ちゃん!」
「あのね、空。」
「なになに洋子ちゃん?あっ!ちなみにグラシュカは隣のクラスの斉藤君でね?」
「話が長い!」そう言って私は丸めたノートを空の頭に叩きつける。
パコーンとイイ音がする。
「あいたっ!?ひどいよ洋子ちゃん!」
涙ぐむ空は大変可愛らしいが、そんな事より…
「隣のクラスの斉藤ってたしか陸上部のエースとかいう?」
空は頭をさすりながら頷いた。
「それが夢に出たということは…空、あんた斉藤に告白されたね?」
空は目を見開きこちらを凝視してくる。
今までの経験から間違いない。
「なっなぜわかったの?」
「前もあったでしょ?」
と私がいうと机に突っ伏した。
…斎藤か。
私は空に分からないようにスマホで連絡を取る。
誰にって?空のファンクラブの会長達にだよ!
現在この市立高津山中学には空のファンクラブが公式だけで三つある。
まず正統派の、陸海空ファンクラブ。次に過激派の、神聖空様親衛隊。これはエアガンなどで武装していて風紀委員とバトルを繰り広げている姿をたまに見る。
最後に異端派である、そらちゃん好き好き同盟である。
ここは新聞部と結託して空の写真などで利益を上げているが、その代わり隠し撮りなどの取締りなどを行っているし利益をこちらに流してくるので公式となっている。
非公式含めれば二桁行くんじゃないかと噂である。まあ私は把握しているが。
取りあえずファンクラブに斎藤の処罰は任せるとして。
空はモテる。ファンクラブがあるくらいだから当然であるが。
しかし彼女はまだ色恋には疎いようで、まあ恋より厨ニ病に忙しいのだろう。
「あたしは孤高の朱の戦士なのよ。」
そう言って空は顔を上げる。
「そうか、つまり斎藤はフッたのね?」
空はにへへっと笑うと頷いた。
やれやれ、空が恋愛に目を向けるのは何時になるやら…
まあ、しばらくは空ファンクラブ総括である私、中司洋子が許さないんだけどね!
思いつきでまた始めてしまった。