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妖のクラスルーム  作者: 森マッコリ
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よみがえる記憶

すみませんねえ。もっと早くに登校しようと思ったのですが、宿題を殺ってました。いや、宿題って夏休み最大の脅威だと思うんですよね、ホントに。皆様もご注意を。

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」


私は悲鳴を上げた。なぜなら足元からツルが伸びてきて実体のないはずの私の足首をつかんだから。私に物理は効かないはず。だったらなぜ?


・・・魔の者避けが張ってある。ここには招かれたもの以外は入れない。じゃあ、なぜあいつは入れたのか、それはあいつが招かれたからと考えられる。どうしてあいつが・・・?グッとりあえずこのツルを何とかしなくては・・・


「やっいやああああああああああああああああああああああああああああああああっ」


ツルが私を穴に引き込もうとしてくる。あんなところに落ちたらきっと無理やり私の存在を消されてしまうのだろう。やばいやばいやばい!!本気でヤバい!!どうしよう?だれか、だれかあっ


「たすけてっ」


♦♢♦♢♦♢


静かな水面にただずむ一柱の神。ふと一筋の風が吹く。神のその大きな耳がピクリと動いた。次の瞬間金の狐の姿はどこにもなかった。


♦♢♦♢♦♢

「たすけ・・・ムグゴハッ・・・た・・・ムグムググん~ん~」


くっツルが私の口をふさぐおかげで声も出せないっもう死んでるから呼吸はしなくてもいいがあの穴の中は・・・ぶるるっ


というかホントにヤバい!!真面目にヤバい!!どうしよう・・・怖い・・・この世から無理矢理、成仏ではなく消されるということはつまり・・・



なにもない無になるということ。私がいた記録もすべて消えてしまう!!何とか生きている私の映っている50年前の卒業アルバムからも消えてしまう!!


だれか、だれかぁぁぁぁぁコタでもいいからたすけてっ


その時、にわかに辺りが輝いたかと思うと、目の前に狐、いや、神が降り立ち、一瞬でツルを消し去った。


「は、はわわ・・・」


「大丈夫かい?優樹菜」


「はわわわ・・・ありがとうございますぅ~」


「そんなにかしこまるなよ。俺も記憶が取り戻せたことだし、帰ろうか。」


「へ?」


神がにやりと笑ったかと思えば、狐太郎が現れた。


「ほげええええええええええええええええええええええええええええ!!??」


「ふふふ、驚いたか?俺さ、記憶失くしててね。やっと思い出せたよ。あーあ。こんなに力がありあまってら。」


そしてふと顔を曇らせる。


「恐ろしいほどの仕事が溜まってしまった・・・どうしよう。」


それから我に返ったようににっこりと優しく笑ったかと思うと次の瞬間狐太郎の瞳がやんわりと温かい光を放った。目を開けばもうそこは放課後の教室、私の思いが残る場所に来ていた。


狐太郎の方を向けば、あの狐のマスコットを握りしめていた。その顔は暗くてよく見えなかったが、ふとこちらを振り向いてにこりと笑った。


「お前はこの学校が好きか?」


「え、ええ。大好きよ。ここから離れたいだなんて一度も思ったことないわ。それに私は知辣したユーレイじゃないもの。私、交通事故で死んだの。だけどみんなが楽しんでるのに私だけ・・・って思ったらいつの間にかここにいた。だから私・・・」


この学校が大好きなの


その思いを伝えると狐太郎は満足そうに笑って、


「そうか。ならこの件は破棄でいいな。」


と、つぶやいた。そして


「あーあ。今日からもう仕事始めないとな。明日からはあの新米祓い屋にでも手伝ってもらうかね?」


夕焼け小焼けの朱色の空、カラスが帰る。お山に帰る。人も動物も皆がそれぞれの帰宅路につく。もちろん幽霊も、神様も。沈みかけの太陽は黄金の光を放っていた。



明日も元気に宿題殺ろう!!

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