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第2話ー3

 私が怒りだすと、ミナハは十分に楽しんだのか、1分も経たないうちに笑い終えた。


「じゃあ、本題に入るけど、あなたはどうして、こんな場所にいたの? しかも裸で」


「……」


 突然、先ほどまでは快活に動いていた口が閉じた。


「ミナハ君?」


「……分からないんだ。何で、ボクがここで寝てたのか」


「……じゃあ、お父さんやお母さんは?」


「もう死んでるよ」


「じゃあ、さっき言ってた友達や恋人は?」


「おねえちゃん、またいじられたいの?」


 再び微笑を浮かべている。でも、笑ってはいるけど、先ほどの楽しんでいるような笑いではないようだ。何か隠し事でもあるかのような、ごまかすための笑いに見える。


「ミナハ君。私はこれでも真面目に聞いてるんだけど」


「……友達も、恋人も、いなくなっちゃったよ」


 どこか悲しげな声だった。


「それじゃあ、あなたに近い人。友達や恋人じゃなくていいから、誰かいない?」


「……」


 ミナハは黙ったまま、人差し指を立てた。そのまま、私の方を指す。


「おねえちゃん」


「…………そう」


 彼もまた、私と同じ一人ぼっちか。私は感傷的になったのか、瞳が潤んでいた。涙を抑えきれそうになく、ボロボロと雫が落ちてくる。


「おねえちゃん?」


「な、なんでもないから……」


 眼を手でこするけど、まだ涙は止まらない。そんな私に、何を思ったのかミナハは、




「よしよし、良い子だね……」




 彼は立ち上がって、床に座っている私の頭を撫でてきた。


「……ど、どうして、君は、こんなことするの?」


「だって、おねえちゃんもボクと一緒で、一人ぼっちなんでしょ? 今までずーっと一人で生きてきて、同じような境遇のボクと出会って、つい悲しい記憶が蘇っちゃった。だから、泣いているんじゃないの?」


 その表情や言葉には、いたずらをしているような茶目っ気はなく、外見には似合わない、慈愛の精神があるだけだった。優しくて、どこか悲しみのある表情。10年前のあの人を思い起こさせられるその表情は、非常にあの人と似ている。そのせいか、私はたまらず、声を上げそうになる。それを抑えようと懸命になる。でも、


「いいよ、思う存分泣いても。今は、ボク以外誰もいないから。無理をして、クールで完璧な『彩美奈陽』を演じなくてもいいから」

 

 彼は、優しく私を包み込んでくれた。小さな身体で私を抱え、頭を撫でてくれている。

だから、私は、




「わああああああああ!」




 溜らず、彼に抱き着いてしまった。本来ならば、私は年下である彼を、慰める立場だ。でも、私は彼に慰められている。抱き着き、大粒の涙を床に漏らし続けている。


「よしよし、おねえちゃんは、頑張ってきた。10年間も一人で、立派にやってきた。だから、今は泣いていいよ。ボクの胸を貸してあげる…………ところで、おねえちゃん。意外に胸あるね」


「え? ……あ、あ……いやあ!」


 それに気が付き、私は彼を突き放す。


 この少年は、こういう子供なのだ。迂闊な行動に、私は忽ち後悔した。

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