表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/73

エピローグー6

 しばらくの間、私は守人にお説教をしていた。少しして、涼姫も守人の質問に気づいたようで、私が鞭をやるのに対して、彼女は飴で籠絡しようとしている。


「ねえ、守人君。そんなにハーレムがお望みなら、私は別に構わないわよ。もちろん、そこの怒ってばかりの人は、側室だけど」


「涼姫! あんたは、そうやって、いかがわしいことばかり言って! 少しは、TPOというものを弁えたら!? それに守人! あんたも、涼姫の提案に心を揺らしてるんじゃないわよ!」


「あ、う……」


 いつものように、三角関係の騒動が行われている。言っている私自身、TPO的によろしくないとは思

うけど、実際この関係が面白いというのも事実だ。できれば、この関係が続いて欲しいとは思う。


 そんなことを思っていると、笑いっぱなしだった青年が、2人の女性と少し談笑した後に、こんなことを言い出した。


「少年、答えてあげよう」

「本当ですか!?」


 その提案を聞いて、守人は諸手を挙げて喜んだ。

 二人は別のテーブルに掛けて、私と涼姫は、男性の連れている二人の女性と話をすることになった。


「――――」

「……、……」


 何をしゃべっているのだろう。


 注文したコーヒーを啜りながら聞き耳を立てているけど、遠いテーブルに行ってしまったので、どうにも聴こえてこない。


「気になりますか?」


 青い髪の女性が、話しかけてきた。ちなみに、涼姫は黒い髪の女性と馬が合ったのか、妙に楽しそうに話している。


「ええ。あの人は、どんなアドバイスをすると思いますか?」

「そうですね」


 青い髪の女性は少し考え込んで、


「多分、器の大きい男になれ、とでも言っているんじゃないでしょうか? 自分だって、煮え切らないくせに……ね」


 苦笑交じりに答えてくれた。


「煮え切らない? あの人が、ですか?」


 守人とは違って、ちゃんとした人だと思うけど。でも、何で2人も連れまわしているのかは、気になる。


「そうです。彼は元々、あの少年みたいに振り回されて生きてきましたからね。あなたも疑問に思うでしょう? そこにいる彼女と私……どちらが本命なんだろうって」


「ええ。この国だと、二股は認められませんからね。それで、どういう関係なんですか?」


「うーん……難しいですね。でもまあ、両方とも均等に愛してくれている……両方とも本命……というのが答えではないでしょうか? そもそも彼は、2人分の人間のようなものですし」


「2人分?」


 どういうことだろう?


「彼は、ちょっと特殊な人なんですよ。昔あった障害がきっかけで二重人格になってしまって、今では優しく、けどいたずら好きなトラブルメーカー――その両方を合わせた人になってしまった。私としては、優しいだけの皆葉みなはの方が、初々しくて良かったんですけどね」


「ミナ……ハ?」


 どこかで聞いた気がする。すごく、大切な人の名前だと……思う。その時、




『おねえちゃん』




 幼い少年の声が、頭の中で響いた。


「ああ、元々の、彼の名前です。皆葉と彩破さいはという人格があって、今では皆破という名前なんですよ。不思議なことですけど、彼が2人分というのは、そういうことなんです」


 その話も、名前も、どこかで聞いた――




『ボクは、幼い頃に左脳を失くしちゃったんだよ。それに加えて、とある事情で左脳が回復しちゃって、左脳と右脳とで、それぞれ別の人格になっちゃったんだ』




 そう、聞いた。だから、これが正しい記憶なのか、聞いてみよう。


「その障害というのは、ひょっとして、左脳がなくなってしまったことによる右半身麻痺ですか? それで、左脳が回復したから二重人格になった――ということですか?」


「おや? どうして知っているんです? ピッタンコカンカンですよ」


「……そうなんですか」


 何かが、繋がった気がする。それに、『カイハ』という名前――それは、神に乗っていた人物と同じ名前。


「……………………ああ!」


 頭の中に、様々なビジョンが浮かび上がってきた。


 ――教会で子供を保護して、寮で一緒に暮らしたこと。

 暴漢に襲われて、それがきっかけで子供の正体が分かったこと。

 彼が私に願いを託して、私が……世界を滅ぼそうとしたこと。

 そして、最後には――




『人を、信じてみたら? あなたは、今まで自分――いえ、仲間だけを信じて戦ってきた。その固まった頭を叩き割って、他人を信じる――協力してくれることに賭けてみたら?』




 ――彼に、1つの選択肢を与えた。


 彼はそれを実行して、結果を変えた。




「……」


 なぜ、私はそれを覚えているのだろう。しかも、結果を変えたというなら、私がこのイヤリングとペンダントを持っているのもおかしいし、髪だって変っているのも論理として成り立たない。でも、


「……すみません。ちょっと、あの人に話がありますので、失礼します」


「ええ、どうぞ」


 私は、今まで抱えてきたことの方が気になる。席を立ち、ミナハに話をしに行く。


 さて、何を話そうか。私と守人と涼姫の関係について相談する? それとも、私がミナハに対して抱いている想いが何なのか尋ねる? 今後の私の歩み方について聞いてみる?


 ……まあ、全部話せばいいか。私にも、彼にも時間はある。彼は取り戻したいモノを取り戻したし、私も失われたモノを取り戻した。お互いに、火急の大事があるわけでもない。


 それじゃあ、何から話そう。悩みながらも、私は彼の前に立ち、こう切り出した。




「――ミナハ。私の……相談に乗って欲しい」




「……」


 ミナハは驚いている。私のお願いに驚いたのか、私が覚えていることに驚いたのかは、分からない。けど、一息ついて、


「――分かった。話を聞こうか」


 彼は楽しそうに、私の伸ばした手を取ってくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ