エピローグー1
3月15日金曜日の午前8時。春休みになって、居住区にある自宅に戻って気が抜けたせいか、私は最近、この時間に目覚めてしまっている。
「美奈陽ー、ご飯よー」
お母さんの声が聞こえてくる。私の寝坊助気味な傾向を考慮して、この時間に朝ご飯を用意してくれている。
「はーい。今行きまーす」
慌ててベッドから跳ね起き、身支度を整える。普段の休日ならTシャツにジーンズという、動きやすくてラフな格好をするけど、今日は色々イベントがあるので、休みなのに制服に着替える。それから、いつからあったか覚えてないけど、2つのイヤリングと大きなペンダントを身に着ける。そして、最近やけに伸びて、しかも緑色になった髪をカチューシャで留めて、朝ご飯を食べに行く。
「おはよう、お母さん。お父さんは?」
「おはよう、美奈陽。もう行ったわ。今日は制服だけど、どこか行くの?」
「うん。生徒会のメンバーと9時から待ち合わせなんだ。午後からは、工業区や商業区で、高校生向けの就職イベントの企画について話し合うし」
「そう。なら、今日はちょっと力を入れましょうか」
そう言うと、お母さんはパンとサラダだけだったテーブルに、1つ料理を加えた。手早く作られたオムライスが、美味しそうな匂いを漂わせている。
「いただきます」
手を合わせて、スプーンを取る。
「……あれ?」
1口食べると、突然、涙が零れてきた。
「美奈陽? どうかしたの?」
「ううん。なぜか、懐かしいような気がして」
もう1口食べると、何か大事なことが頭の中でフラッシュバックしてくる。
お母さんの作るオムライスより、各段に美味しい、名人の作ったようなオムライス。それを作ってくれたのは、誰?
気になるけど、待ち合わせまであまり時間がない。早々に平らげて、私は家を後にした。




