第9話ー5
私たちはしばらくの間、談笑していた。これまでの学園生活や、各人の個人的な歴史。色んなことを、語り合った。
後片付けに向かっていたミナハがここに来たのは、陽が落ちかけた、夕方だった。
「やあ、諸君。元気かな?」
能天気な笑顔を見せながら、ミナハが玄関から入って来た。部屋に入るや否や、ミナハは私に向かってきた。
「美奈陽。君には、謝らなければならないね。俺の身勝手な願いを、君に押し付けてしまった。すまない」
おちゃらけることなく、彼は頭を下げた。
「ミナハ……もういいから、頭を上げて」
「ああ」
ミナハはすぐに頭を上げ、私を見る。
「美奈陽。君には、本当に迷惑をかけた。それに、守人と涼姫。君たちにも、大変世話になった。感謝している」
「ミナハ……」
「感謝しているなら、何かくれません?」
言葉に困る守人と、こんな時でも軽口を叩ける涼姫。そんな涼姫にも、ミナハは誠実に対応する。
「すまないね、今の俺にはあげられるものがなくて。その指輪で勘弁してくれないか? 地の力を使えば、宝石類の量産は容易いから、十分報酬になると思うが」
「うーん、まあ良いでしょう」
「それじゃあ、3人とも。今までありがとう。さよなら」
軽く会釈をして、ミナハは出ようとする。でも、こちらにはまだ用がある。
「待って、ミナハ。あなた、これからどうするつもり?」
「どうするつもり、とは?」
ミナハは私をまっすぐに見据えて、問うてきた。
「私は、あなたの願いを叶えようとした。でも、あなたはそれを撤回した。じゃあ、あなたはこれから、どうするの?」
「……まあ、1人で世界中を彷徨って、また考えようとは思うが」
やはり、彼の中の悩みは解消されていない。このままじゃあ、また彼は、同じことをやりかねない。いえ、自分で、世界を壊しかねない。
「それじゃあ、あなたの悩みを聞きましょうか。座って」
「うん?」
訳も分からず、ミナハは言われるがまま、食卓についた。




