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第9話ー3

 私は、守人を寝室に追いやって、涼姫をその場で着替えさせる。その間に、コーヒーを入れている。


「さて、美奈陽。この前の質問に対する答えはでましたか?」


 着替えながら、涼姫が尋ねてきた。


「質問?」


「どうして、守人君の魅力に気づけないのか、という質問です。ですが、昨夜の反応からして、気づいてはいるみたいですね。ふふふ」


 最後の笑いは、どうにも私を馬鹿にする笑いのようだ。でも、気にせず私からも質問しよう。


「涼姫。あんたは、どこまで本気なの?」


「本気、とは?」


「守人のこと。昨日は、私を殺してでも彼を奪う、みたいなことを言ってたけど」


「ああ、そういうことですか。本気も本気、全部、本当ですよ。あなたが邪魔で、あなたが消えてくれれば、まず、守人君は落ちるでしょう。ここまで尽くしたのですから、彼が私を、無下にできるはずもない」


 どうやら、嘘偽りない、真実のようだ。この女がこんな丁寧口調で話す時は、大抵真剣で、人をおちょくることはない。


「でも、あんたは私を殺してない。それはなぜ?」


「そんなこと、分かりきったことです」


 涼姫は悲しそうな表情を浮かべて、一拍置いて言う。


「守人君が、悲しむからです。事故であなたを消せたのならば、それは良いでしょう。でも、策略通り、あなたを動揺させて、勝てた。だから、私にはあなたを殺せない。それに、あなたを弄るのも、中々楽しいですからね。自ら楽しみを潰すことも、面白くないでしょう? 要は、あなたを生かしたまま、守人君を手に入れる。それが、一番面白い。だから、あなたを殺さないんです」


「……そう」


 ここまで自己中な意見を言われると、逆に清々しい気持ちになってくる――好感がもててしまう。これは、この女の魅力なのだろう。


「後、謝ることがあります」


 着替え終わった涼姫は、こちらに向いて、そして頭を下げた。


「1月4日に、あなたが暴漢に襲われた件。あれは、私の差し金です。そもそもあの地域では、窃盗・強盗事件が多発なんてことは、ありませんでした。ですが、あなたを怖い目にあわせるために、パパの人脈を使って、偽情報を流しました。責任感のあるあなたなら、生徒会になんとかしてくれ、という打診があれば、動くと思いましたからね。

 ただ、精々2人ぐらいで襲わせる予定だったのが、まさか10人になっていたことは、予想外でした。それについては、完全にこちらの手違いです。許して欲しいとは言いませんが、謝らせてください」


「そんなこと……」


 別に、今となっては、どうでもいいことだ。でも、涼姫が筋を通してきたのだから、それに応じよう。


「もう、過ぎたことだから、構わないわよ」


 今更、それを蒸し返す意味もない。もちろん、一般的にはとんでもないことだけど、それを上回る事件に巻き込まれてきたのだから、どうでもよく思えた。



    *   *


「お待たせ」


 ちょうど良いタイミングで、守人が出てきた。涼姫との個人的な話は終わったので、後は、この男との話だ。2人は既に席についている。


 私は、コーヒーを三人分食卓に置き、話を始める。


「さて、守人。昨日、あんたが最後に言った言葉。あれは、本当?」


「あ、う……それは……」


 ひどく動揺する守人。私と同様に、思い出して赤くなっている。


「守人。あんたは私に勝つために、私を動揺させた。そのためだけに、あんなことを言ったの? 他に動揺させる言葉がないから、あんなことを言ったの?」


 私は、彼の瞳を見ながら、問うた。その真剣さが伝わったのか、守人は顔を赤くしながらも、私の視線から逃れずに、話し始めた。


「そうじゃない。あの時が、ひょっとしたら最後になるかもしれないから、僕の本心を伝えたんだ。本当は、違うことを言うつもりだったけど、涼姫がそっち方面の話題にしたからね。だから、僕は君に想いを伝えた。もちろん、君の精神を揺さぶるという目的もあったけど、決して、それだけじゃない。あれは――僕の本心だ」


「守人……」


 照れながらも、きちんと詰まることなく、思っていることを吐き出してくれた。正直に言って、嬉しく思う。


 赤くなった守人は、手持無沙汰からか、コーヒーを口にしようとする。すると、


「あっつ!」


 カップが熱かったからか、コーヒーをぶちまけてしまった。彼のズボンにコーヒーがかかる。


「大丈夫?」


 あわてて布巾を濡らして処置をしようとするが、涼姫は先んじて動いていた。


「さ、守人君。ズボン脱いで」


「ちょっと、涼姫さん。このぐらい、自分で何とかできるから」


「だーめ。それに、さんはなしでしょ?」


 守人に構いつつも、涼姫はこちらを向いて、笑みを浮かべていた。狡猾で、いやらしい笑いをしている。


「ほら、さっさと冷やしたら!?」


 濡れ布巾を守人の顔面に投げつけてやった。

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