第9話ー2
「う……ん……」
ゆっくりと、瞼が開いていく。そこは、見慣れた景色――私の寮の部屋だ。窓からは朝日――いえ、もう昼間の光が差し込んでいる。
「どうして、こんなところに……ああ、そうだ」
夢の中で2人の少女が言っていた。私は――カオスに敗れた。
カオスと交戦中、突然ミナハが生身で挑んできて、それに守人と涼姫が、私を呼んでいた。
「ミナハが言ってた通りで、生きてたんだ」
ナノマシン搭載の弾丸で射殺された守人。私には蘇生させることができなかったけど、ミナハなら、できても不思議じゃない。
「あの時守人が言っていたことも……本当?」
信じられない内容。でも、カオスの中にいた2人は、おそらく本物。偽物には、あんなことは言えない。
「あ……」
思い出して、顔が熱くなる。彼は、戦場だというのに、意外なことを言ってきたんだ。
「ヘタレだと、思ってたんだけどな……」
しっかりと、私に向けて、彼は言葉を紡いだ。今までは、何か肝心なことを言おうとしても、必ず詰まってたのに。何が、彼を成長させたのだろうか。――いえ、それよりも、私にはやらなければならないことがある。
「……皆に、会わないと……」
ミナハに会わないと。それに、守人と涼姫にも、話がある。
私はベッドから降りて、着替えを始めようとする。ところが……
「あれ?」
違和感があった。それは、私の身体のことだ。
ケイオスが敗れた時、私の両腕は完全に壊された。でも、その怪我が完全になくなっている。
「……ミナハが治してくれたんだ。ん? でも、どうして服まで?」
昨日は制服を着ていたけど、それを今でも着ている。でも、昨夜の戦闘で、ボロボロになったはず。誰が着替えさせたのだろうか?
疑問の答えは、すぐ近くにあった。
「あ……ん、守人……君」
「うう……」
隣の部屋――居間兼台所から、声が聞こえてきた。間違いなく、例の2人だ。しかも、何? その、いやらしい悶え声は!?
「ちょっと、あんたたち、一体何をして」
扉を開けると、そこには食卓を押しのけて、布団が敷かれていた。布団の中では、苦しそうに呻き声を上げる守人と、いやらしい表情をして悶え声を上げる、涼姫の姿があった。それに、布団の隣には制服が2着、畳まれて置いてある。
「な、な、な……」
どうして、私の部屋で、この2人が寝ているの!? しかも、2人で一緒に!
「う……ん……、あ、美奈陽。起きたんだ」
私の声に反応してか、守人が起きた。
「どうしたの? そんな、笑っているけど、怒っているような顔して」
「あ、あ、あんた……それは、自分と隣の女の姿を見て言ったら?」
「んん?」
言われて、守人は自分と、隣で眠っている女の姿を見た。
「あれ? 涼姫? それに、僕……あああ! 何で!? 僕は、1人でここで眠ってたはずなのに! 彼女が自分の部屋に戻るって言うから、安心して眠ってたのに! それに、どうして僕、裸なの!?」
守人は掛布団を身体に纏って、立ち上がる。すると、この騒動の根源たる人物が、目を覚ました。
「うう……ん……、おや、守人君。おはよう。昨日は、激しかったね。私、初めてだったのに、感じちゃった」
照れくさそうに、恥らいを見せる悪女。
「ちょ、ちょ、ちょっと、涼姫! 君まで、何で裸なのさ!?」
「え? だって、せっかく距離が縮まったのに、君が1人で寝るっているから、ちょっと寂しく思っちゃってね。だから、君が眠りについた頃を見計らって、布団に潜り込んだのよ。……ぽっ」
「何、その『ぽっ』ていうのは!? 美奈陽が誤解するから――あ」
ようやく、私のことを思い出したようだ。
「あなたたち……随分と、人の部屋で好き勝手やってくれたようね」
私のことをボロクソに罵って、その上身体まで壊して。なのに、私をほかっといて、……をしてたって!?
「あの、美奈陽? これは、みんな誤解なんだ。全部、涼姫が仕掛けたことで」
「涼姫? 随分と、仲良くなったみたいね」
今までは、『団さん』と呼んでたくせに。やけに、親密になって。
「それは……そう呼ばないと、彼女が協力してくれないって言うから。別に、親密になったわけじゃないから」
「酷いわ、守人君! 昨日は、あんなにも私を扱き使って、それに寝ぼけて私を抱いたっていうのに……あああああああ!」
「もーりーとーくーん?」
「ち、違うんだ。ぼ、僕は、そんなことはしてない! き、君に告白した日に、そんなことをするわけ、ないだろう!?」
「……」
そうだ。それについて、聞かなくては。でもその前に、
「あんたたち、いい加減、服を着なさい」
目のやり場に困る格好を、何とかしてもらわなくては。




