第8話ー8
曖昧だった距離間は、すぐに詰まった。もう、拳が届く。
ケイオスもまた、両手を組んでいた。まっすぐに、こちらへ向かってくる。
「はああああああ!」
組んでいた両手を離し、右腕で殴りかかる。
『やああああああ!』
ケイオスは、殴りかかって来る拳に対し、避けるのではなく、左腕で迎え撃つ。
「い……た、あ……!」
激突する拳。篭手をつけているのに、殴りかかった右拳に痛みが走る。涼姫が苦悶の表情を浮かべる。
「こ……の!」
今度は左腕で殴る。ケイオスもまた、右腕でそれを殴る。
「あ……く!」
再び激突する拳。篭手に亀裂が走り、骨が軋む音が聞こえてきた。
「どうにかして……避けないと」
殴りかかる度に、殴りかかった拳が殴られていては、もちそうもない。今は回復ができない以上、如何にして損害を減らすかが勝負の鍵。
でも、ケイオスはそうはさせてくれない。どんな角度から打ち込んでも、必ずそれに対処してくる。向こうにも激痛が走っているはずなのに。
「クヌム、どうすれば良い!?」
『……逆に、好都合と考えては? 敵は避けずに迎え撃ってくれるのですから、外す心配はありません。我慢比べです』
「我慢比べ……か」
確かに、外す心配がないというのはありがたい。避けられて、その隙に一撃でももらえば、それで終わりかねない。
逆に、美奈陽もそれを恐れているというわけか。だったら、賭けてみるのもいいかもしれない。魔術戦において一日の長がある彼女を、出し抜けるかもしれない。
「涼姫、後退する!」
「はい!」
涼姫の担当する右拳が放たれた直後、カオスは距離をとる。篭手はもう砕けていて、拳も酷く痛んでいた。




