第8話ー5
ミナハは、約束を護ってくれた。彼が飛び立ってからジャスト1分。彼がケイオスから落下してくるのと同時に、カオスは再起動を始めた。
『……魔力生産良好。システムオールグリーン。OSクヌム正常稼働』
「クヌム?」
突如、カオスの内部で声が聞こえてきた。微妙に高い、男性の声。これは一体?
『私は、皆破の代わりにこの機体をサポートするOS――クヌム。この名前は、先代の神の名前。それはともかく、皆破を保護しなくてよろしいのですか?』
「は、そういえば!」
カオスが動きを取り戻したのに気を取られ、肝心な人物のことを忘れていた。
「任せて、守人君。私がやるわ!」
涼姫は、ケイオスの近くで待機させていた2つの翼を動かした。大きな手に形を変え、ミナハを抱え込んだ。
「ふう。後は、ケイオスを――な!?」
そう言った矢先、ケイオスがこちらに向かい始めた。しかも、ライフルを抱えていて、その照準はカオスだけでなく、ミナハにも向けられている。
「まずい!」
慌ててバーニアを噴かせて、飛翔。ミナハの保護に向かう。
『壊れろおおお!』
ケイオスの叫び声が上がり、ライフルから弾丸が射出された。
「涼姫!」
「大丈夫!」
僕――カオスは、どうにか弾丸を避けれた。涼姫の方は、1つの翼を犠牲にして、ミナハを抱えた翼を護った。
でも、ケイオスの狙撃は終わらない。間隔を置かずに、2射目、3射目と続く。でも、
「ん? 射撃の間隔が、微妙に長い? それに、狙いも微妙にずれている」
ケイオスのすべての動きが、わずかではあるけど、遅くなっているようだ。おかげで、全弾回避できている。それに、魔術を併用していない。どうやら、ミナハとの戦いで、相当の消耗があったようだ。
『このお!』
同時に攻撃することを諦めたのか、ケイオスはミナハに狙いを絞った。2丁のライフルが、ミナハを狙う。
「あ……ダメ、もたない!」
手数が倍に増えたせいで、ミナハを抱えた手を操作している涼姫は、限界のようだ。もう、いつ着弾してもおかしくない。
「涼姫! 後少しで届く。投げろ!」
「はい!」
即座に、涼姫はミナハを投げた。役目を終えた手の形態をした翼は、直後にライフル弾の猛攻を受けて元の翼に戻り、そして砕け散った。
高速で、ミナハはカオスに向かって飛んで来る。
「……ふう」
生身の人間を扱うには、決して相応しくない速度で投げられたミナハは、カオスの手に落ちた。彼をコックピットから中に入れる。
「ミナハ!?」
再び見たミナハの姿は、痛々しいものだった。全身が傷だらけで、さらに魔力を使い切ったせいか、顔は青ざめている。呼吸も弱々しく、意識がない。
『お二人とも、皆破の処置は私に任せて、戦いに集中してください』
クヌムは、コックピット内を操作して、1個のカプセルらしき物を創りだした。1人の人間が入れる大きさだ。さらに、触手らしきものがいくつかコックピット内に現れ、ミナハをカプセルの中に入れていく。
「クヌム、ミナハは?」
『大丈夫です。ですが、戦闘を優先するので、彼の回復に割ける魔力は最低限に抑えています。死ぬことはありませんが、彼のサポートは期待しないでください。それと、皆破をスキャンして分かったのですが、向こうのOSを封じることができたようです。魔術の使用にあたって、あなた方と同じ土俵に立ったみたいですね』
「分かった。死なないなら、それでいい。行くよ、涼姫!」
「はい!」
不安の種は無くなった。
話をするために、銃弾の嵐を掻い潜って接近する。




