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第8話ー4

「……どうして、あなたは考えを変えたの?」


 私は、あなたのために、人生を生きてきた。なのに、どうしてあなたは、私を裏切るの? 私の想いを踏みにじったの?


 虚しい勝利に、私の瞳から涙が滲み出てくる。ところが、




「……すまないな、美奈陽」




 微小な声が、どこからか聞こえてきた。それと同時に、組んでいた両手が、強引にこじ開けられた。


「ミナハ!?」


 眼を開けると、彼はケイオスの両手をすり抜け、こちらに接近していた。今までの動きが嘘のような、圧倒的な速さで。しかも、彼が使っているのは灰色の魔力――無ではなく、白銀の魔力。


「まさか……」


 彼は、敗北したはず。でも、私が目を逸らした瞬間に、それを覆した。そして、防御を兼ねていた私の一撃が捌かれた以上、私には身を護る術がない。


「ぐ……ああ、あ……」


 それは、コンマ数秒の出来事だった。彼の拳が、ケイオスの身体を貫いた。ただ、私の乗っているコックピットではなく、ケイオスの心臓――動力炉がある位置だった。


『動力炉半壊! 再建まで稼働できません!』


 メイの警告が飛ぶ。事実、私の意思はケイオスに通じない。それを知ってるのか、ミナハは動力炉付近で佇み、語りだした。


「本当に、すまない。君を惑わせるような真似をして」


 幼い頃に見た、優しく、悲しそうな顔。ただ、全身が銀色の装甲で覆われている。ちょうど、10年前に、最後の激突をしたカオスのような色に。その装甲は、徐々に剥げ落ちつつある。


「君に勝てないと言ったのは、本当だ。ただ、勝てない理由は、力で及ばないからじゃない。魔力不足で、本気を出し続けられないからだ」


「それは……混沌?」


「そう。不安定な無を極限まで高め、それを圧縮して安定させた、無の根源たる力。無さえも飲み込む、今では俺にしか扱えない力。ああ、金色じゃないのは、ケイオスに乗ってない、不完全な状態だからだ」


「……なぜ、最初からそれを使わなかったの?」


「言っただろう? 本気を出し続けられないって。これは、魔力に余裕があっても、数十秒から数分間という、短い時間しか使えない。余談になるが、10年前にカオスがエネルギーになる物を抑えたのも、俺たちが魔力不足で困ったのも、互いにこれを使うため。――それで、君が油断した瞬間を狙って発動させた。精々一撃しか使えないし、使ったら魔力が空になるけど、君の邪魔をするには……十分だ」


 そう言うと、ミナハはケイオスから飛び降りた。いや、落ちた。同時に、彼の白銀の力が完全に消え、元の緑色の髪と、ボロボロになった身体が現れた。


「じゃあ、また」


 最後にそう告げ、ミナハは落下していった。魔力が尽きたのか、自由落下に身を任せていた。



   *   *


「2人とも、損害は!?」


『あと10秒で動かせます。ですが、私たちの意識が集中している動力炉の損害ですので、今後は魔術使用のサポートができません。それと、多少のスペックダウンはあるかもしれませんが、ケイオスの活動に支障はありません』


「つまり、デスアンドバースも集束砲も使えない?」


『そういうことだね。でも、美奈陽ちゃんなら、デスアンドバースはいけると思うよ?』


「分かったわ」


 動かせるなら、それでいい。向こうは私よりも魔術の素人。僅かな時間とはいえ、実戦で経験を積んできた、こちらに分がある。


『それと……申し訳ありませんが……私たちの意識も、なくなるようです』


「メイ?」


『ケイオスの稼働が最優先……だから、OSであるボクたちの意識は、そのために……なくすみたい』


「アン……分かった。二人とも、お疲れ様」


『ご武運を』

『頑張って』


「ええ」


 ここからは、完全に私一人か。でも、最後までやり遂げよう。それが、私の責任だから。

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