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第8話ー3

 勝った。私は、勝利を確信していた。


 開戦直後の一撃が凌がれ、さらに軽傷ではあるけど損害を受けたので、私の頭の熱は冷めていた。なので、メイとアンのアドバイスを受けることができた。


 そこで私が使ったのが、メイ直伝の三段攻撃――氷壊閃裂合魔撃ひょうかいせんれつごうまげき。敵に隙を作りだし、そこに大技を叩き込む。セオリー通りの技だが、それゆえに効果的な一手。事実、最後の砲撃を撃つ時には、カオスは慌てて相殺をしようとしていた。


 でも、6属性を雑多に混ぜて、上手くいくはずがない。まばたきをする間に、砲撃に飲まれてカオスは消える……そう思っていた。でも、


「え?」


 カオスの砲撃が消滅し、私の一撃が敵を屠る――その瞬間に、異変は起きた。押し勝つはずだった私の砲撃は、どんどん消えているのだ。


「どうして? ……あれは!?」


 その答えが、こちらに接近しつつあった。力強い、灰色の光を放つ小さな影が、私の砲撃を次々とかき消していき、近づいてくる。


「まさか……ミナハ!?」


 この状況下で対応できるのは、この世に現存している人物の中で、至高の力を持つミナハしかいない。でも、なぜ? 彼が私の邪魔をするなんて、あり得ないはずなのに。


 そんな疑問が頭の中で錯綜していた。そのせいで、私は回避行動に移るべきだったのに、それができなかった。徐々に近づいていると思った影は意外にも早く、砲撃に使うために展開している6個の翼が、すべて破壊された。


「くぅ!」


 さすがに、残り2つの翼まで失うわけにはいかない。灰色の一撃がライフルに到達する寸前で、どうにかケイオスの身体を逸らして突撃を避けた。ライフルは元の翼に戻り、背中に戻る。


「すまないな、美奈陽」


 わずか数十メートルほどの距離に、その人影――ミナハの姿があった。彼は、両手を組み合わせて無を発動させながら、こちらを見据えている。


「ミナハ!? どうして、あんたが私の邪魔をするの!?」


「ちょっと、心変わりをしたものでね。申し訳ないが、君を止める側に回ったのだよ。一応頼んでみるが、美奈陽。君、もうやめてくれないか?」


「心変わり……だって? ふざけないで!」


 あんたが仕組んで、私にこんなことをさせているのでしょうが!? なのに、今更それを止める? 人を馬鹿にしているにも、程がある。


「あんたは、まがりなりにも神でしょう!? そんなあんたが、一度下した結論を変える? そんなこと、あるわけがない!」


「残念ながら、神だって間違いは起こすさ。でも、説得は無理なようだな。仕方ない。力ずくで、君を止めよう!」


 ミナハが突撃してくる。このまま激突しては、紙を破くように壊されかねない。私は集中してミナハの動きを見切り、突撃を避けた。


 私は回避運動を続けながら、メイとアンに指示を出す。


「メイ、アン! デスアンドバース、いける!?」


『大丈夫です。ですが、美奈陽。やめるかどうか判断する前に、どうして皆破があんなことを言い出したのか、その真意を尋ねてからでも良いのでは?』


「いいえ、それはできないわ。少しでも隙を作ったら、あの人にこの機体のコントロールを奪還される。そうしたら、私に勝ち目はない!」


『その通りだね、美奈陽ちゃん。メイちゃんも、とりあえず戦おうよ。でないと、美奈陽ちゃんが自分で是非を決められないまま、死んじゃうかもしれないよ?』


『……そうですね。ではいきますよ、アン!』


『りょーかい!』




『『デスアンドバース!』』




 ケイオスの両手に、無の力を発動させるための素材たる力が現れる。熟練の2人がやってくれているからか、2つの命の合成は、思いのほかスムーズだった。数秒足らずで、灰色の輝きが、両手に現れた。


「はああああああ!」


 回避運動を止め、突撃してくるミナハを迎え撃つ。


 ――激突。あまりに膨大な力がぶつかり合うことで、大気が震え、大地にまでその衝撃が走った。全世界に、小規模の地震が起きる。


「はあ、はあ……ミナハ。あんた、この勝負で私に勝てると思ってるの!?

 無の力同士が激突する場合、その優劣は単純なパワー勝負。質量と速度、そして無の出力。それらの掛け算で結果が出るけど、あんたが生身であるのに対して、こちらにはケイオスがある。体格差と出力差で、あんたに勝ち目はない!」


 そう。同じ土俵に立った以上、条件で劣るミナハは、勝てる道理があるわけがない。実際、ミナハの篭手には亀裂が走っていて、徐々に押されて行っている。


「ああ、そうだな。君の言う通りだよ、美奈陽」


 その不利を、悲嘆するわけでもなく、ミナハはあっさりと認めた。


「言い訳になるが、俺には魔力の余力がない。君に勝つためには、生身で戦うなら全魔力量の10割が必要。カオスに乗って戦うなら、五割はいる。

 でも、君の魔術媒介を創るのに1割を既に使ったし、カオスの蘇生・調整に5割を使ったから、生身でもカオスでも勝てない。それに、新たに2人に魔術媒介を創ったから、今の俺には最大値の2割程度しかない。

 こんな残量しかなければ、ケイオスと真っ向勝負をやって勝てるはずがないのは、自明の理だ」


「だったら、どうして今、カオスに乗らずに仕掛けてきたの!? せっかくカオスを使えるようにしたのに!」


「そうしたいのは山々だが、カオスは最終調整中でね。それに、調整しながらじゃあ、満足に戦えもしない。だから、俺は今、君に仕掛けた。最後に、君を止めるために!」


「じゃあ、あのカオスに乗ってるのは誰!? 魔術媒介をあげた2人っていうのは!?」


 そこまで魔力を使って、勝負を託すというのだから、相当力のある人物のはず。私は、そう思った。で

も、彼の口からは、意外な人物の名前が語られた。


「守人と、涼姫だ」


「な……ん、ですって?」


 あのヘタレと、性悪女? そもそも、守人は死んだはずじゃないの!?


「守人は、私が蘇生させた」


「何で!? 私を決意させるために、死なせたんじゃないの!?」


「本来はそのつもりだったが、なぜか、気が変わってね。君を説得するために、彼らに力を託した」


「…………」


 何なの、それは。守人を死亡させるプランを立てておきながら、今度は彼を蘇らせて、私を止めさせる?


「――ふざけないで」


 沸々と、怒りが湧き上がってくる。世界を滅ぼしてから、最後に彼を壊して終わる――それが、私のプラン。でも、そんなことは、どうでもいい。今の私は、ただ――叫ぶ。


「あんたを、壊す!」


 ミナハは、デスアンドバースを維持するだけで精一杯だ。でも、こちらはメイとアンが維持しているので、私の思考には余力がある。


「これでも喰らいなさい!」


 背中に戻った翼を射出し、ミナハの背後に送る。無の力は両手からしか発動できず、カバーできるのは前面のみ。故に、側面や背後からの攻撃に弱い。そこを、私は突いた。でも、私の策略は、容易には通らない。


「甘い!」


 ミナハの小型の翼が4基、私の2基の翼を迎撃するために放たれる。4基の翼は大型の翼へと姿を変え、そして大口径の銃へと姿を変え、弾丸を吐き出す。


「甘いのは、そっち!」


 こちらも、大口径の銃砲へと翼を変形させて、襲う。


「ミナハ。あんたが2つの脳を持っていて、私より遥かに情報処理能力が優れているのは知っている。でも、それは使える道具があって、はじめて活かされる。今のあんたには、物量で勝る私に勝つ手段はない!」


 そう。体格差の上に、彼は推進力を生み出している翼を、半分も使った。一方で、こちらは2つ。本命の激突に、多大な影響が出てきている。


「ぐ、あああああああ!」


 ミナハの篭手に走る亀裂は、その全面にまで伸びていた。


「それに、翼だって、私の方が多く出している。あんたに、これを防ぐ術はない!」


 ミナハが1翼に対して、こちらが2翼。一方の翼が対処できても、もう一方は対処できない。これで、ミナハは完全に詰んでいた。


「はあ、はあ……さすがに、ここまでが限界か」


 敗北宣言。それが出されるのと同時に、ミナハの篭手が砕けた。さらに、無防備になった生身の身体を、ケイオスの両拳が襲う。


「が、はあ!」


 全身を覆うほどの拳が、ミナハを砕く。これで、終わり……終わってしまった。彼が無残な姿になるのを見たくない私は、瞳を閉じた。

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