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第7話ー5

「守人君。これは何?」


 涼姫さんは受け取ったリンゴを僕に見せて、尋ねてきた。


「さて、何だろう? ……いや、そういうことか」


 ミナハが言ったこと。それは、僕が死んでいる間に見ていたイメージのこと。その中で彼は、少女と同じ力を手にするか否かを問うてきた。つまり、このリンゴは――、


「勿体付けた演出だけど、美奈陽と同じ力を渡す、ということだね」


 ――戦いへのチケット、ということだ。


 僕は迷わず、リンゴを食べる。一口。この世の物とは思えない、芳醇な香りと、至高の甘さが口の中に広がる。同時に、身体が熱くなる。


「わ!?」


 熱くなるだけではなかった、空いている手の平から、炎が出ている。


「守人君、大丈夫!?」


「あ、ああ、大丈夫」


 数百度の熱を手にしているのだから、本来ならば火傷では済まない傷を負うはずだ。でも、ただ暖かいだけで、痛みは感じない。


「これは、多分、シミュレーションのようなものだと思う。力を使うための知識を頭に叩き込むのと同時に、身体に使い方を覚えさせる。特に問題ないから、涼姫さんも食べてみて」


「涼姫さん?」


 あ、しまった。つい、心の内での呼び方をしてしまった。でも、彼女はえらく喜んだ。


「ようやく、名前で呼んでくれたね。でも、さんはいらないわよ」


 僕の頭を軽く指で弾き、涼姫さんもリンゴを食べ始めた。


 僕も、続ける。2口目。今度は身体が寒くなり、手からは冷気がでていた。三口目、四口目……身体に異変は起きるけど、やはりリンゴが美味しくて、次々と食が進む。


 すべてを食べ終えた時、僕の手には、美奈陽がつけていたイヤリングの宝石に似た、8つの指輪があった。また、身体には8つの属性の知識と、その使い方が刻み込まれていた。


 使い方は、使う属性の色をイメージして、次に具現化する事象をイメージする。すると、指輪――魔術媒介がそれに反応して、イメージした事象――魔術が発動される。また、指輪は魔術を使用するのに使うだけでなく、あらゆる物体に変化する武器でもある。


 涼姫さんも食べ終え、光悦とした表情を浮かべている。


「こんなものを手にしたら、あの女じゃなくても、調子に乗りたくなるね」


 涼姫さんは手始めに、全身に生命の力を発動させた。それから駆け出した。


「おー、すごいねー」


 本人としては、軽く走ってみただけなのだろう。でも、彼女は僕の横を、残像を残して通り過ぎて行った。


「ちょっと、涼姫さん。危ないよ!」


「平気、平気。先に行ってるから、守人君も早く来なよ。後、さんはいらないってば」


 笑いながら、彼女は穴に落ちて行った。


「はあ。まあ、時間もなさそうだし、そろそろ行こうか」


 空では、相変わらずケイオスが光をまき散らしているけど、徐々にその軌跡が減ってきている。地上の妨害部隊も、そろそろ全滅しそうだ。急がなくては。

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