第7話ー1
緑の世界が広がっていた。
人間の文明は1つとしてない草原。
清涼な空気が心地よく、美味しい。
「やあ」
寝転がっている僕に、少女が話しかけてきた。緑色の髪をした、僕と同じ、7歳ぐらいの少女だ。
「君は……」
誰だろう? 見た覚えがあるような気がするけど、どこか違う。でも、
「遊ぼ?」
「……うん」
彼女に手を取られ、走りだした。
夢中で駆け回った。どこまで行っても緑が広がっているだけ。でも、それだけで楽しかった。
* *
走り続けていると、1本の樹にたどり着いた。樹には、たくさんのリンゴが実っている。
「これは……」
見るからに美味しそうなリンゴ。
でも、その樹には奇妙な雰囲気が漂っていた。美味しそうな匂いを漂わせているが、なぜか食べてはいけないと、直感が告げている。
僕は、その直感に従って手を出さないようにしていた。だけど、彼女は食べようとした。
「ダメだよ」
「何で? こんなに美味しそうなのに」
彼女の手を取ると、彼女は振り返って不思議そうな顔をする。
「なぜか分からないけど、何となく、それは食べちゃいけない」
「……分かったよ」
彼女は樹から手を放した。
「行こう」
「うん」
踵を返し、先へ行こうとする。
「この先には、何が――」
彼女の方を見る。すると、
「あーん」
彼女は、リンゴをもぎ取っていた。
「ダメ!」
止めようとする。でも、間に合わなかった。
「……」
1口、2口……。
「ああ……」
僕はその場で立ち尽くし、動けなくなった。
「美味しい、美味しいよ! 君も食べなよ!」
彼女は一気にリンゴを食べきった。すると、
「……ああ、そういうことね」
彼女は、見る見るうちに大きくなっていった。子供から大人に成長した。
「行かなきゃ」
彼女は背中に翼を生やした。翼を羽ばたかせ、宙に舞う。
「どこに行くの?」
「……」
彼女は僕の問いかけに答えなかった。ただ、一言――。
「さようなら」
別れを告げ、どこかへと飛び去って行った。
「待って……」
追いかけようとするが、彼女は凄い速さで飛んでいく。追い付けそうにない。
「待って……」
瞬く間に、彼女の姿が見えなくなった。そして、彼女が飛んで行った方にあった緑は、すべて消えた。大地は枯れ、荒地になった。
やがて、僕の周りの緑も消え、世界の全部が枯れ果てた。
「待って……」
僕の声は、彼女に届かない。
「君は、どうしたい?」
後ろから声が聞こえてきた。
「あなたは?」
後ろにいたのは、長身の青年。彼女と同じ緑色の長髪をした、神々しい衣を纏う青年。
「君には、道がある。1つは、何もせずに彼女の破壊のままにする。もう1つは――」
僕の問いかけに答えず、彼はある方向を指す。そこには、
「――彼女と同じ力で、彼女を止めるか」
緑がなくなった世界で、ただ1つ樹があった。それは、1個だけ実を結んでいる。
「さあ、どうする?」
青年は、リンゴをもぎ取ってきた。それを僕に差し出してきた。リンゴを受け取り、僕はじっとそれを見つめる。
「僕は……」




