第6話ー11
ケイオスは瞬く間に地下を抜け、空にたどり着いた。そこでは手荒い歓迎が待っていた。
「く……!」
数十発ものミサイルが飛んで来ていて、その内数発が着弾した。でも、機体に僅かな衝撃が走っただけで、機体には何らの損傷も生じていない。私にも、痛みはなかった。
続けて、高速で飛んで来る弾丸がいくつもあったが、それはどうにか回避できた。
見ると、地上には既存の火器の他に、以前見た使い魔が無数にあった。
使い魔はそれぞれが独立稼働するだけでなく、変形・合体をすることによって、レールガン等の強力な火器になる。その火力・サイズは合体する機体数によって増大していき、巨大化した使い魔を使うために、そのサイズに応じたパワードスーツを着た別の使い魔がいる。
どうやら、皇か、もしくは政府のトップあたりが、私を討伐する指示を出したようだ。生身で相手をするなら、絶対に勝てない相手だ。使い魔にはEMCが標準装備されているので、対峙したらひとたまりもない。
でも、今は違う。私には、神の機体がある。
「それじゃあ、お礼をしないと」
ケイオスの十指に光が灯る。光は、瞬く間に大きくなっていく。
「ターゲット、ロックオン」
視界にあるすべての敵機に、照準を合わせる。そして、チャージされた光を放った。
「白の裁き」
放たれたのは、数多の閃光。光を放つケイオスの姿は、私の呟いた名称の通り、裁きを下す、神に見えるだろう。
光は、一瞬にして敵機に着弾した。敵機には魔力を拡散させる電磁フィールドが装備されているが、生身で放つ数十倍以上に強化された力は、電磁フィールドの壁を軽々と貫き、敵機を廃にした。攻撃する直前に回避運動をしていた使い魔もいたが、光は即座に軌道を変え、すべての兵器を塵にした。
「……」
呆気なく、私の邪魔をする連中は消えた。拍子抜けしそうだ。
「世界は、こんなに脆かったんだ……」
現在の世界で最も私に有効な兵器が通用しない以上、私を止める術はもうない。
先ほどの兵器を殲滅した以降、抵抗が何もないので、世界は諦めたようだ。後は、太陽に行ってそのエネルギーをケイオスの力に変え、宇宙全体に放てば、終わる。
だが、私の邪魔をする者は、まだいた。
「あいつは……」
私の立つ空に、もう1機の機体が現れた。
10年前に見た、ケイオスと同じ機体。ケイオスをコピーした、もう一つのケイオス――カオス。悪魔と呼ばれた機体。
カオスは極秘裏に回収されていたのだから、修理してあっても不思議ではない。だが、私の怒りは限界だと思っていたのに、それ以上になった。
「お前さえ、お前さえこの世界に来なければ……!」
力を極限にまで高め、世界どころか地球――宇宙を滅ぼすつもりだった。だが、私の破壊衝動は、カオスに矛先を向けた。
「壊してやる」
ケイオスの翼を2つ引き千切る。千切られた翼は、2つの剣になった。
「壊してやる、壊してやる」
こいつさえこの世界に来なければ、私は何も失わずに済んだ。両親も死なずに済んだ。2人が生きてれば、私は普通に生きれたのに。
「壊してやる、こわしてやる、コワシテヤル」
何より、こいつが生まれなければ、ミナハは何も失わずに済んだ。あの人からすべてを奪ったこいつが、憎い。そのせいで、ミナハが悲しんで、そして守人まで死んだ。
「コワシテヤル、コワシテヤル、コワシテヤル、コワシテヤル、コワシテヤル、コワシテヤル」
2つの剣を携え、翼のバーニアを噴かせて、カオスに突撃する。
「コワシテヤル!」
最後の敵を破壊して、そしてすべてを破壊する。それで、彼の望みは果たされる。
もはや、悪魔を破壊することしか考えられなかった。怒り、熱くなりながらも冷めていた私の思考は、完全に怒りに燃えている。もう、余分なことは考えられない……。




