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第5話ー7

「だいたい、こんなところかな?」


「……」


 やけに、荒唐無稽な昔話だった。子供の口から語られる話だからそれほど期待はしてなかったけど、まあ期待外れだろう。


「で、どう思った? 感想は?」


「正直言って、訳が分からない。それが、僕にとって良い情報なの? 美奈陽とは、まったく関係ないと思うけど」


「ちゃんと関係あるよ。君が抱えている問題に関して、ほとんどネタバレしちゃってるよ」


「問題?」


「そう。お兄さんの悩みは、美奈陽おねえちゃんが怒ったこと。それに、急に見た目が変わったこと。違う?」


「な、なんでそれを!?」


「それは、神様的機密だよ。でも、おねえちゃんの近況は教えてあげるよ」


 少年が語る近況は、次の通りだった。




 美奈陽が怒った理由は、大事にしていたペンダントを奪われたから。僕が『間に合った』と言ったことに、『間に合ってない』と激怒したことから、それは事実だと思う。


 で、美奈陽がイメチェンしたのは、単に動きやすいからだそうな。服装は分かるけど、あのロングヘアは動きにくいと思うのでは? それに、何で染めたのだろう。


 その疑問を、少年にぶつけてみた。


「それは、彼女が生命の力を多用してるからだよ。青緑色は生命の力を表すから、それが身体にでたんだよ。それに、身体の代謝が活発になったから、髪も凄く伸びた」


「……はい?」


 話が、少年の語った『昔話』に戻っていないか?


「あのー、君。その生命の力とかっていうのは、作り話じゃないの?」


「失礼な。ボクは、真実しか話さないよ! ちゃんとボクの話を聞いてたの?」


「うーん、聞いてはいたんだけどね」


「どうやら、信じていないようだね。えーっと……じゃあ、これを見てよ」


 そう言って、少年は近くにある枯れた樹に触れる。




「では、ちちんぷいぷい」




 適当な言霊を呟いて、少年は何かをし始める。彼の銀髪が青緑色に染まり、手から同じ色の光が、葉のない樹木に流れていく。


「……え?」


 それは、一瞬の出来事だった。冬だというのに、少年が触れた樹は、その枝に多くの葉をつけている。


「な、な、な……!?」


「どう? 信じる気になった?」


「い、一体……君は何をしたの?」


「何って、単にこの樹に生命エネルギーを与えて、元気にしただけだよ。おねえちゃんの怪我も、同じようにして治したし」


「……そうなんだ」


 何なんだ、この少年は?


 今見せられたのは、確かに、超常現象としか思えない。僕の眼が一瞬たりとも樹木から離れてない以上、別の物と換えることはできない。それに、美奈陽の怪我は、搬入された時に看護師から聞いたところによれば、本来なら完治まで数週間から2、3か月かかるものだったらしい。それが、不思議なことに、3日後にはほぼ完治してた。


 つまり、これは現実で、少年はその言葉通り、真実を語っているのだ。


「そうそう。おねえちゃんの髪の色が変わったけど、実は他のところにも変化があるんだよ。お兄さんも気になってたと思うけど、上のブレザーのボタンを開けてたでしょ? 色々大きくなって、困ってるみたいだよ」


 クフフと笑いながら、中高生みたいな話題を振ってくる。


 それは置いとくとして、少年の話が真実なら、さらなる疑問が浮かんでくる。


「それじゃあ、彼女が生徒会を休んだのはなぜ? 君は、彼女とどう関わってるの?」


「おねえちゃんは今、2つの目的のために動いている。

 1つは、奪われたペンダントを取り戻すこと。そのついでに、悪人も懲らしめてる。

 もう1つが、世界の存在意義について判断すること。生徒会を休んだのは、その目的の方が優先されるから。それと、メイとアンに任せておけば、問題はないから。ちなみに、ボクとおねえちゃんの関係は、単なる同居人だよ。一人ぼっちのボクを、優しいおねえちゃんが拾ってくれたのさ」


「つまり、神の依頼を果たそうとしてるわけ?」


「そういうこと。やっと呑み込めたようだね。ただのヘタレな人じゃなくて良かったよ」


「ぐ……」


 不知火さんにも言われたけど、僕はそんなにヘタレなのか? いや、それはいい。問題は、美奈陽だ。


「それで、美奈陽は今、どこにいるの? 君の口ぶりからして、知ってると思うけど」


「それはねえ」


「ミナハ」「おにいちゃーん!」


 肝心なところを聞こうとしたところで、公園の入り口に水無月さんと不知火さんが現れた。


「そろそろ行きますよ」


「そうだね、行こうか。ごめんね、守人お兄さん。もう時間だから、行かないと」


 ミナハと呼ばれた少年は、ベンチから降りて、二人に向かっていく。


「待ってくれ! まだ話が」


「話なら、もう一度会う機会があると思うから、その時に聞いて。じゃあね」


 少年は後ろ手に手を振りながら、歩いていく。


「待って!」


 追いかけるが、やけに少年の足は速かった。公園を出たところで、3人の姿はもうなかった。

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